−北アルプス屈指のマイナーコース(笑)をテント縦走! 船窪新道の非情な急降下に太腿大破…−
山行概要
2019年8月10日(土)〜11日(日) | ||
北アルプス | ||
♂4名(AM君、ドレイのKN、Wヒロシ) | ||
扇沢=1:20=大沢小屋=0:35=針ノ木大雪渓末端=0:55=雪渓歩行終了ポイント=0:30=水場=0:20=針ノ木小屋C.S.=0:55=針ノ木岳=0:35=針ノ木小屋C.S.【4:00】 | 針ノ木小屋C.S.=1:10=蓮華岳=1:40=北葛乗越=1:05=北葛岳=0:30=七倉乗越=1:05=七倉岳=0:05=船窪小屋=0:30=天狗の庭=4:00=七倉山荘【10:05】 |
記録文(写真はクリックで拡大)
山の日の3連休は,アルプス縦走を職場の連れらと予定していたが,問題は行き先である。ババ混み必至の状況で,いろいろと思案したが,まだ未踏で,地味なせいか人気のない針ノ木岳〜七倉岳の縦走をやることにした。
しかし,初日の針ノ木小屋のテン場は,3大雪渓の針ノ木大雪渓が登路で,かなりの混雑が予想され,スペースも30張ほどしかないので,良い場所を確保するためには,早朝出発が必須である。
このため,下山口となる七倉山荘から5時発でタクシーを予約し,6時前には扇沢を出発することにした。
睡眠時間を確保するため,前日の金曜日は,皆あらかじめ装備を用意して出勤し,18時過ぎには職場を出発。23時過ぎには信濃大町に到着することができた。
コンビニで食料を調達してから,七倉山荘前の駐車場には0時頃に到着。すぐに寝たら良いものの,車内で宴会を始めてしまい,寝たのは1時過ぎ(笑)…
8/10 晴れ
4時半にアラームが鳴動。昨晩,ハイペースで呑み続けた私は完全に二日酔いのバッドコンディション(笑) 周囲から酒臭いと何度も指摘される始末…
予定通り5時にタクシーが迎えに来てくれ,扇沢へ。30分ほどで到着する(6500円也)。
扇沢バスターミナル手前の無料駐車場は,当然ながら満杯であり,バスターミナルの有料駐車場もかなり埋まっていた。さすが山の日三連休である。
黒部ダムに向かう電気バス待ちで並ぶ,大勢の登山者を横目に我々は扇沢を出発する。
しばらくは林道と交差しつつ,やがて谷沿いに進むようになる。
二日酔いのせいで,なかなかペースが上がらない(笑)…。
ほとんどコースタイムと変わらないタイムで,大沢小屋到着…
調子の上がらない私は,やけくそで缶ビール350mlを注入(笑) 迎い酒で事態の打開を図る。
まさか,迎い酒のせいで,ホンマに状況が改善(笑),私のペースが上がってきた(笑)
雪渓は相当遠くに見えていたが,どんどん近づいてきた。
雪渓の末端部に到達! いよいよ雪渓歩き開始!
周囲の登山者は,皆ここでアイゼンを装着していたが,我々4人はAM君以外,アイゼン無しでの突撃である。
下部はご覧のとおりで,傾斜も緩く,楽勝!
何と言っても,冷風が吹き抜けるので,快調に登っていく。
僅か数分なのに,けっこう高度を稼ぐことができる。
雪渓はさらに上部に続くが,この少し左先で雪渓を離れ,夏道を登ることになる。
雪渓を離れ,一気に暑さが増す中,急登にしごかれながら頑張ると,水場に到着。
針ノ木小屋のテン場は水場がなく,小屋で1リットル200円で買わなければならないので,ここで1人4リットルを補給する。
ずっしり重さが増したザックを背に,さらに急になった登山道をジグザグに登っていく。
水場から針ノ木峠までの区間が本日一番きつかった。
雪渓は遥か下方に沈んだ… 汗だくになりながら,最後のスパート!
なぜかこの日は調子が良く,最後は独走して針ノ木峠に到着。
10時前に到着できたので,小屋に近い2張分のグッドスペースを確保し,すばやくテントを設営。
テントさえ張ってしまえば,当然のように,KN隊員が冷やした状態でボッカしてきた缶ビールで乾杯! 最高!
調子よくなってきたところで,針ノ木岳のピストンに向かうことに。
峠から標高差約300m。雄大に聳える針ノ木岳に向かっていく。
かなりの急登。酒が入っていることもあって,空荷だが,けっこうしんどい。
頂上へ最後の登り。振り返ると蓮華岳が大きい。
昼過ぎの登頂だったが,山頂では素晴らしい展望が広がる。
ピーク西端に行くと,劔・立山をバックに,黒部湖が一望できる。
左端の槍から,水晶,赤牛,右端の薬師岳と,北アルプス中枢の名山が一望である。 ピーク西端に行くと,劔・立山をバックに,黒部湖が一望できる。
頂上標識で定番ショット。
1時間弱帯頂。夕立の心配もなさそうだし,のんびりと帰路につく。
13時半にテントに帰ってきた。もうやることもないので,14時過ぎから小屋前のテーブルで宴会開始(笑)
しこたま飲んで,意識不明でテントに撃沈… 17時くらいには既に爆睡していたと思われる。
8/11 晴れ
予定では,この日は船窪小屋のテン場に泊まる予定であったのだが,初日にそこそこ動けたのと,船窪小屋までのコースタイムが5時間40分と短く,また,テン場の標高が低く,灼熱地獄との記録がネットで確認していたので,ここは一気に七倉山荘まで降りて,温泉&ビールを堪能しようということで,皆の意見が一致していた。それでもコースタイムは9時間40分ということで,「楽勝」と私は完全に舐めていた…
そういった事情と,御来光を蓮華岳で迎えるため,2時半に起床。テント撤収,朝食を取り,4時前には出撃する。
蓮華岳へは,まずは一気に2754ピークまで一気に登り,その後,ゆるやかな台地をしばらく進んで,最後にピークへの登りが待ち受けている。
画像は,2754ピークから,爺ヶ岳や鹿島槍方面を捉えたもの。今日も好天確実で気分が高揚する。
昨日の針ノ木岳からは,若干ガスに覆われていた劔・立山も,ご覧のとおり全開である。
狙い通り,蓮華岳頂上到達と同時に日が昇った。東方は果てしなく雲海が広がっている。
東西に長い蓮華岳頂上の西端には,若一王子神社奥宮が建っている。
今年の5月連休に塩の道を歩いた際に,信濃大町の里宮を参拝してたのを思い出した。
展望は思いのまま。後立山連峰が爺ヶ岳から白馬まで一線に並ぶ。。
存分に展望を堪能してから,ピーク東端の三角点を表敬訪問してから,いよいよ七倉岳に向けての縦走開始。北アルプス屈指のマイナールート(笑)に分け入る。
岩ガラガラの「蓮華の大下り」で一気に高度を下げていく。北葛乗越(七倉岳への中間点となる北葛岳と蓮華岳の間にある鞍部。一応,北アルプスの主稜線なのだが,標高僅か2275m(笑)…)までの標高差なんと520m余り。
蓮華の山頂直下からは,標高差がありすぎて北葛乗越が見えない(笑)…
蓮華岳の頂上周辺の礫地は,コマクサが多い。とりわけ人の踏み込みが少ないピーク南側一帯は,咲きまくっていた。
槍・穂高や,水晶岳を正面に見ながら,どんどん下っていく。まだこの辺りは歩きやすかったが,しだいに岩稜帯となり,傾斜もさらに強まる。
さらに岩々してきた。だいぶ下ってきたのだが,まだ底が見えない(笑)
正面は北葛岳。まだこちらの方が高い(笑)
下れば下るほど,険しくなってくる。こんな厳しいコースとは… 聞いてない!(笑)
やっと北葛乗越がはるか下方に見える絶壁の最上部まで来た。
鎖が延々と続いており,下にポツンと難渋しながら降りていく登山者が見える。
脆い足場の絶壁下りに,へとへとになってようやく北葛乗越に到着。我々のすぐ後に降りてきた登山者2名とも「酷いコースだ!」と嘆いていた。
振り返る蓮華岳側の絶壁がエグい。よく降りてこれました。
鞍部で休憩後,北葛岳への登り返しにとりかかる。標高差300mほどの登りだが,精神的にキツい。また,標高が下がり,日も照ってきたので,暑くなってきたのもダメージ蓄積に拍車をかける(それでも,この日は割と乾いた涼風が吹いてくれたので,まだマシだった)。
少し登り返したところから,背後を振り返って見ると,さっきの絶壁が対斜面効果で,さらにエグいことに…
急登部分を終えると,しばらくゆるやかな登りが続くが,最後はまた急登が現れ,これを何とかこなし,ようやく北葛岳へ。
地味ながら展望は良好。北アルプス中央部が丸見え。
七倉岳はすぐ目の前に見え,船窪小屋も山体の左端に見える。
北葛岳と七倉岳の間も深いギャップ(七倉乗越)があり,さっきの北葛乗越への下りほどではないが,せっかく登り返したのにまた250mほど下るのだ。精神的ダメージが大きい…
七倉乗越へも急な岩稜下りが続き,降りる都度,当然だが,向かいの七倉岳がどんどん高くなっていく。向かいの超急斜面には,梯子を苦労しながら登っている登山者が見え,げんなり。
へとへとになって七倉乗越に着陸するが,目の前には,岩壁が大きく立ちはだかっていたのであった…
休憩後,意を決して七倉岳へ向かう。すぐに岩場に取り付き,ご覧の梯子が現れる。画像では分かり辛いが,梯子の最上部で右に少しトラヴァースする必要があり,その際のスタンス移動がけっこういやらしい。
画像のAM君も少しバランスを崩す場面があり,後方の私の緊張感を高めてくれた(笑)
しかもこの区間,単純な登りっぱなしではなく,小ピークを何度か越えていくので,ボディブローのようにダメージが蓄積していく…
背後の針ノ木岳(左)と蓮華岳からは,だいぶ離れてきたが…)
最後は頂上まで緩登が続くが,疲労蓄積により,楽に登らせれもらえない。気温もかなり上がってきた。
何とか七倉岳に到達。今山行初の全員集合写真。
この蓮華〜七倉岳の区間,完全に舐めてました。アップダウンの多いリアル弩Sコースだった…
そして,船窪岳から烏帽子岳に続く稜線を眺めるが,白く崩れた箇所が多く,アップダウンも激しそうだ。この区間も未踏で,いずれ歩かねばならないが,頭が痛い…
七倉岳から,緩やかに下って,船窪小屋に到着〜 小屋のおかみさんが鐘をならして,お茶をだしてくれた。こんな小屋は初めてだ。
我慢できず,ここで缶ビールを購入。何と「年越しビールだから」ということで,350ml缶が300円という,下界とほとんど変わらない値段で売っていた。私は先のことを考えず,ここで2缶飲み干してしまった…
この他,小屋でラーメンもいただくなど,1時間以上も大休止し,長丁場に備える。
出発間際に,おかみさんに,これから下る船窪新道のことを尋ねたところ,「きついで」の一言のみだった(笑) また,男性スタッフの方からは「最後の最後で,急な九十九折の下りが延々と続き,一番きつい。何度も泣かされた。ベンチがあるので,そこが九十九折のスタートの目印だ」とのネガティブ情報を被された。
しかし,私は酔いのせいもあるが,「言うても4時間程度の下りでしょ」と,ほとんど真に受けず,まだ舐めていた。
ここで股関節を痛めたI.ヒロシ氏の荷を3人で分担し,リスタート! 船窪小屋の標高が2450m,下山口の七倉山荘の標高が1060mなので,約1500mの標高差を下っていく。
しばらくは視界が開けた,穏やかな尾根を下っていく。酔っぱらいの私は「楽勝! 楽勝!」と叫びながら下っていた(笑)
優しい下りが続いた果てに,「天狗の庭」と呼ばれる小平地に到着。
ここで2300m。まだまだ序の口。
「天狗の庭」からは,高瀬ダムが眼下に一望。ロックフィル式の堰堤が超格好いい。
穏やかな部分は,ここで終わり。いよいよ急降下が始まる。
樹林帯に入る。木の根っ子が出張って歩きにくい急坂をひとしきり下ると,さらに傾斜が強まり,梯子が連続するようになった。果てしなく続く梯子地獄…
本当に梯子が必要な急な箇所は良いのだが,そうでもない箇所にも相当数設置されており,歩きにくいことこのうえない(そのまま前向きに下るのが楽なのだが,疲労で足の踏ん張りが利かず危ないので,緩い傾斜の梯子の後ろ向き下降を何度も強いられ,余計しんどい(涙)…)。
鼻突八丁でのダメージ蓄積で,完全に私の両太腿は崩壊し,足の踏ん張りがマジで利かなくなってしまった。ストックを突いているのに,足がカクンカクンしてしまう(涙) 何という体たらくだ… 糖質制限ダイエットで痩せたのは良いが,かなり筋肉を落としてしまったようだ… 鍛え直さなければ… この辺りから全く写真を撮る余裕がなくなってしまった。
「鼻突八丁」の看板がある所まで何とか下り切る。ようやく梯子地獄は終わり,多少傾斜は緩まったものの,非情な急降下はさらに続く。3人に着いていくのに必死だ。完全に歩き方はモビルスーツになっており,メンバーに嘲笑され,情けないことこの上なし…
1818標高点から少し下ると,2つの小ピークの登り降りは若干あるものの,比較的平坦な箇所がしばらく続き,束の間の安寧の時が訪れる。
2つの小ピークの中間にある「唐沢のぞき」と呼ばれる,秘峰唐沢岳が間近に迫る展望ポイントを過ぎると,1536.7三角点のある小ピークの緩い登りとなり,三角点を越えると,比較的急な下りとなり,何とか歯を食いしばって頑張ると,ついに,船窪小屋のスタッフが語っていた「ベンチ」に到着した。
疲労困憊。この時点で本日の吸水量2リットル(笑) こんなボロボロの状態で,九十九折の急坂を下らねばならないのだ。
まだ標高は1500mを維持しており,地図を見るとここから一気に500mを下るのだ。等高線の密度がエグい(普段ここまで地図を見ないのだが,これだけバテると精読してしまう(笑))。
ここから七倉山荘まで,ほとんど記憶がありません(笑) あっという間に3人に引き離され,一人孤独にヨロヨロと落ちていく。
最後,平坦な林道に出るが,林道すらスムーズに歩けない体たらくに自嘲しながら牛歩で進むと,高瀬ダムに続く車道に合流。左折してすぐに七倉山荘に到着! あまりのしんどさに涙が出ました。コースタイム9時間40分のところ,10時間5分(涙)…
衰えを痛感した山行だった…
私が大幅に遅れて到着した時には,テントの設営がだいぶ進んでいた…
七倉山荘の横にテントを張れ,1泊1500円で温泉も入れるのだ。10張りほどのスペースで,既にほぼ埋まっていた。
テント設営後,温泉に飛び込み(テント泊の入浴は18時までだった…),一度,大町市内に出てコンビニで酒やつまみを買い込んでから,反省会でしこたま飲んで,21時過ぎには沈没した。
8/12 曇り後晴れ
周りが騒がしく5時起床。我々以外のテンとは既に撤収され,高瀬ダムへの東京電力が管理する車道のゲートが開く5時半に出発する準備を着々と進めている。
お盆の大渋滞をさけるため,我々も6時半には七倉山荘を後にし,のんびりと南下。梓川SAでゆっくり朝食を取ってから,本格的に走行を開始する。
中央道は快調に進んだが,名神が断続的に渋滞しているとのことだったので,土岐JCTから東海環状自動車道に入り,若干迂回だが,伊勢湾岸道,新名神経由で進もうとしたら,伊勢湾岸道でまさかの事故渋滞2連発(涙)…
結局,梓川SAからノンストップで6時間運転の末,京都市営地下鉄竹田駅には14時過ぎに到着し,ここで解散となった。
疲れました…
参考タイム
8/10 | 扇沢 5:35 ⇒ 6:55 大沢小屋 7:10 ⇒ 7:45 針ノ木大雪渓末端 7:50 ⇒8:45 雪渓歩行終了ポイント 8:50 ⇒ 9:20 水場 9:30 ⇒ 9:50 針ノ木小屋C.S. 11:15 ⇒ 12:10 針ノ木岳 12:55 ⇒ 13:30 針ノ木小屋C.S. |
8/11 | 針ノ木小屋C.S. 3:55 ⇒ 5:05 蓮華岳 5:30 ⇒ 7:10 北葛乗越 7:20 ⇒ 8:25 北葛岳 8:40 ⇒ 9:10 七倉乗越 9:20 ⇒10:25 七倉岳 10:30 ⇒ 10:35 船窪小屋 11:45 ⇒ 12:15 天狗の庭 12:20 ⇒ 16:20 七倉山荘 |
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