剱岳(早月尾根日帰り)

−「試練と憧れ」の山,剱岳を日帰りで攻略! 登りは快調も,下りで失速…−

   

山行概要

日 程
2014年9月14日(日)
山 域
北アルプス
天 気
晴れ後曇り
メンバー
OT君,Wヒロシ(I.ヒロシ、F.ヒロシ)
コースタイム
馬場島=1:45=標高1400m地点=0:45=標高1800m地点=1:15=早月小屋=1:05=標高2600m地点=1:20=剱岳=1:30=標高2600m地点=0:50=早月小屋=1:00=標高1800m地点=1:05=標高1200m地点=0:55=馬場島【11:30】

記録文(写真はクリックで拡大)

 昨年7月に標高差2200m、「山と高原地図」で標準コースタイム15時間10分を誇る黒戸尾根からの甲斐駒ケ岳をボロボロになりながらも、日帰りで陥落させたことから、その時の同行者であるI.ヒロシ氏とは「当然、次は早月尾根を日帰りで」という暗黙の了解が出来上がっていた。ちなみに、こちらも標高差2200m以上、コースタイムは15時間半!である。
 ようやく、二人の予定が合致し、また、フルマラソン完走者のOT君も参加してくれることになった。

 前日は、石川県加賀市の富士写ヶ岳で軽く足慣らしをし、富山市内で、きときとの魚に舌鼓を打った後、馬場島には20時頃に到着した。
 既に馬場島荘前の駐車場は満杯になっており、やむなく徒歩で5分ほど戻った辺りの駐車スペースを確保し、男3人の寝苦しい車内泊(富山で泥酔した私は、馬場島に到着した記憶が全くありません。運転のI.ヒロシさん、ごめんなさい)。
 二人によると、20時を過ぎて下山して来るグループがいたとのこと。

 目覚ましが3時に鳴動、いよいよ大一番を迎える(OT君は私の鼾のせいで1時過ぎから寝られなかったらしい。ごめんなさい)。

いよいよ出発 3:45

 寝ぼけ眼で準備を整え、3時45分に出発。危惧していた天候は満天の星空から大丈夫そうだ。
 5分ほどで馬場島荘の横を通過し、道標に従い、立山川に沿って伸びる林道と別れ、登山道に入る。さあ、標高差2200m超、標準コースタイム15時間半の闘いが始まる(暗闇のせいで、この時は有名な「試練と憧れ」の石碑は確認できなかった)。

 予想どおり、初っ端から、階段状の急登が続く。驚くのは、日帰りを狙う登山者の多いこと。我々と同じ時間帯に出発した人だけで、10人弱はいたし、抜かれた人も数えたら、30人くらいはいたと思われる。皆、酔狂ですなあ。
 1000m辺りまで一気に登ると、松尾平と呼ばれる平坦地に出る。この平坦な地形は相当長く続き、急登で名高い早月尾根にこのような箇所があるのが信じがたく、暗闇も相まって、ルートを外したかと思ったほどだった。
 それも束の間、再び急登が始まり、右手に富山市内の夜景を愛でながら、杉の大木の間を縫うように登って行く。ルートは、土嚢が階段状に積まれていたり、梯子が付けられたりとか、きっちりと整備されている。また、標高200mごとに、道標が付けられており、1400、1600、1800、2000mと汗だくになりながらも、順調に高度を上げていく(1600mの位置が低過ぎる気がしたが…)。

1600m地点からの猫又山 5:53

 標高1600m付近で、だいぶ明るくなってきたので、ヘッドランプを外す。今回、長丁場故、暗くなるまでに下山できるよう、未明に出発したが、涼しい時間帯にこの樹林帯の急登をこなせたのも良かった。

前方に小窓尾根の一部が… 6:42

 2000mが近づくと、だいぶ周囲の木々が低くなってきた。前方に壮絶な小窓尾根がチラチラと垣間見え、テンションが上がる。

池塘を通過 7:13

 いったん、ゆるやかになり、小さな池の脇を通過すると、小屋までの最後の急登となる。
 何とかこれを越えれば、丸山と呼ばれる、小屋手前の明るく開けた展望地に到着。

丸山にて 7:33

 順光を浴びた大日連峰が勢ぞろい。

ついに剱が登場! 7:34

 ここでようやく剱山頂の一部が顔を覗かせるが、まだ完全に日陰かつ、超逆光状態なので、黒い岩肌が恐ろしく不気味だ。
 早月小屋とテント場もすぐ右下に見える。

早月小屋とテント場 7:50

 ゆるやかに下って、小屋に到着。ここで標高約2200m。既に1500m弱の高度を稼いだことになるが、細かなアップダウンが少ないことと、涼しいせいで、黒戸尾根の時に比べ、遥かに楽に感じる。ここで350mlのスーパードライを600円で購入し、ザックに忍ばせる私。

早月小屋を見下ろす 8:02

 さあ、登高再開。まとまった急登を一つ越えるたびに200mごとの標識が現れる感じで、ペースを掴みやすい。目の前の急峻な岩尾根をダイナミックに登って行くので、爽快感抜群のコースである。

大日連峰 8:15

 久し振りに、再訪してみたいなあ。

標高2400地点辺りからの剱 8:27

 徐々に岩の割合が増えていく。標高2400m地点でストックを格納し、岩場に備える。現実に鎖場もちょいちょい現れるが、鎖を必要とする岩場は正直言って皆無であった。I.ヒロシなどはストックを持ったまま、何事もなく通過していく。

室堂方面と薬師岳 8:33

 こちらの殺伐とした光景に比べ、室堂は平和的だ。

さらに登る 8:36

 標高2600m地点までもう少し。

標高2600m地点 8:55

 標高2600m地点は貴重な小平地になっており、ここで少し休憩。

小窓尾根 9:03

 常に左手に厳しい表情を見せている。

更に険しく 9:30

 標高2600m地点を過ぎると、完全に岩稜歩きとなる。早月小屋泊まりで山頂ピストンした方々がちょうど下る時間に重なり、すれ違いで何度か待たされる。結構、危なっかしい人もいて、見ているこちらがヒヤリとすることも。

2614ピークを見下ろす 9:34

 標高2800m地点の手前から、登ってきた尾根を見下ろす。急登の連続で2614ピークもあっと言う間に遥か足下へ。

小窓尾根も見下ろすまでに 9:45

 だいぶ登ってきたことを実感。小窓尾根の背後には後立山連峰が見えるが、ガスが急成長…

果てしなき登行@ 9:47

 爽快な登りが続く。

果てしなき登行A 9:47

 この辺り、「クライミングハイ」の状態だったような…

カニのハサミへの登り 9:55

 いよいよ名のある岩場、カニのハサミへの登りに取り掛かる。鎖場が連続する。

鎖場をトラヴァース 10:00

 秒殺した。岩場よりも、上にいる他の登山者の落石が怖い。

カニのハサミへの登り 10:11

 カニのハサミ直下にて。

カニのハサミかな? 10:12

 だいぶ前に崩れて原形は留めていないようです。
 頭上に別山尾根ルートとの分岐の道標が近づいてきた。後方には別山尾根のカニのタテバイと思しき岩場が…

カニのタテバイかな? 10:13

 ズーミングすると、急峻な岩場で大渋滞となっている様子が見て取れる。さすがにこの登山ブームの状態で、別山尾根を登る気は起きないなあ。

早月尾根を見下ろす 10:14

 それにしても、この早月尾根は相応の体力は要するものの、岩場の難易度で言うと、「ホンマにこれが剱かいな?」と思うほどだった。

別山尾根分岐に到着 10:16

 後は、平坦な岩尾根を3分ほど進めば、祠の立つ剱山頂である。

剱山頂にて@ 10:23

 いや〜 まさか登れるとは…
 何と私は27年振りの登頂で、当時の記憶を完全に亡くしているため、予想外に広い山頂に驚く。まだ、到着しないのか、思ったより人が少なく、記念写真の順番待ちもほぼ0でラッキーだった。

剱山頂にてA 10:26

 ここで、早月小屋で購入したスーパードライで乾杯。残念なことにガスが急速に広がり、展望は八ツ峰くらいしか得られなかったが、それでも、標高差 2200mを一気に攻略した満足感・爽快感は大きかった。
 まだ、コースタイムで6時間余りの下りが待っている。膝に不安を抱える私は、下りの方が心配である。

カニのハサミの下降 11:28

 故障が心配なので、敢えてペースを落として進む。

小窓尾根 12:16

 ガスが時折晴れ、順光となり、迫力抜群の小窓尾根に歓声を上げながら、慎重に下り続ける。

剱も映える 12:25

 ずっと逆光の姿を見続けていただけに、素直に嬉しい。登頂の喜びが沸々と湧いている。
 登りと違い、2600mの所でストックを再び取り出し、足の負担をできるだけ軽減しながら慎重に下る(山行後の筋肉痛は足より腕の方が酷かったことから、いかにストックに頼って歩いていたかが分かる)。
 結局、早月小屋への実タイムはほぼコースタイム通りとなった。

またしてもビール 13:37

 早月小屋では、またしてもビールを購入し、小屋前の広場で、まだ残りは長いが、最後のまとまった休憩を取る。
 これだけのロングコースの場合、休みを長く取ると、筋肉が硬直し、一気に辛くなってしまうのを我々は経験上、知っているからだ。

1800m辺りで 14:34

 長い下りの再開である。400mごとに小休止を入れながら、決して自棄になって飛ばすことなく、スローペースを守って下る。下るにつれて虫が顔中を飛び回るようになり、また、当然ながら、暑くなってくるので、不快度が上昇。ひたすら忍耐の下りである。今回は3人だったので、たわいもない話をしながら気分を紛らわすことができたので、助かったが、単独行なら、もっとキツかっただろう。

杉の大木が多い 16:22

 標高1200m地点から、松尾平の間は、目を見張るような杉の巨木が多い。やはり明るい時に見ると全然違う。

最後のワンピッチ 16:39

 ようやく平坦な松尾平に降り立つ。夜明けより相当前に出発したはずなのに、日はだいぶ傾いてきた。しかし、現実的に「もうすぐそこだ」と思える高度差で、立山川の河床が見下ろせ、ようやくこの超ロングコースの終わりを意識する。
 最後は今日1日の歩みを確かめるように、一歩、一歩、確実に下り、スタートから13時間半も経過した17時前に登山口に戻り着いた。

「試練と憧れ」の石碑 17:02

 往路では気づかなかった「試練と憧れ」の石碑前で誇らしげに記念写真を撮り、車へ戻る。
 季節、天候が異なることから、単純比較はできないが、黒戸尾根の方が遥かに消耗した気がする。しかし、この早月尾根攻略も、正しく激闘であった。

 お約束の温泉は、上市の「アルプスの湯」をチョイス。温泉と水風呂の交代浴を10セットほどこなし、ダメージ軽減に努める。富山市内で夕食にありついてから、長距離ドライブを泣きながらこなす。京都に戻ったのは、2時前だった…

参考タイム

9/14馬場島 3:455:30 標高1400m地点 5:355:50 標高1600m地点 5:506:20 標高1800m地点 6:207:05 標高2000m地点 7:057:30 丸山(早月小屋) 7:508:20 標高2400m地点 8:208:55 標高2600m地点 9:009:40 標高2800m地点 9:4010:20 剱岳 11:0012:30 標高2600m地点 12:4013:05 標高2400m地点 13:0513:30 早月小屋 13:5014:50 標高1800m地点 14:5515:35 標高1400m地点 15:4016:05 標高1200m地点 16:0517:00 馬場島

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