市房山

市房山


 大台ヶ原で足の筋を痛めて以来、山らしい山には登っていなかったが、ポンポン山での試運転で行けると判断、九州へ飛ぶことにする。
 勢い込んで伊丹に向かったのはいいが、熊本行の飛行機が取れず、なぜか福岡に着陸。150%乗車の「有明」に憮然としながら揺られ、八代で肥薩線に乗り換え、どしゃ降りの人吉へ。あこがれの人吉城は水煙の中だったが、旅情あふれる町並みに感激する。明日の天候回復を祈ってこの日は早々に寝た。
 くま川鉄道の始発で出発。天気は前日のメチャ降りからまだすっきりとは回復していないようで、時折小雨も降り出す始末。結局湯山に着いても状況はこのまま。様子を見ることも考えたが、回復傾向にあることだけは確かなので、傘をさして出発する。

【日 程】1992年3月21日(土)
【メンバー】単独
【天 気】曇り後晴れ
【コースタイム】くま川鉄道湯前駅=バス=湯山=0:30=市房キャンプ場=0:30=市房神社=0:30=六合目=0:55=市房山=1:10=市房神社=0:50=湯山【4:25】

【記録文】
 湯山から何の変哲も無い車道を一人黙々と歩く。「何故にこんなことをしているのか?」もう何百回も自分に問い掛けたはずの問答をまたも繰り返している。いつものように答えは見つからないまま、気が付けばキャンプ場の標識が目の前にあった。


市房神社 市房神社
 鳥居をくぐって石段の続く参道に入る。薄く靄のかかった幻想的な雰囲気の中を進む。いつもの私なら恐怖心を感じるような光景であるが、今日は不思議と怖さは感じない。周囲の景色と一体になったような感じがし、漂うように進む。車道からの道が合流すると神社は近い。参拝しただけで、先を急ぐ。ジグザグの本格的な急登が始まる。霧がどんどん上方に流れていく。霧とともに高度を上げる。奇岩が現れると六合目。薄日がさすようになってきた。ペースがどんどん上がる。周りの木々の背がしだいに低くなる。素晴らしい末脚を発揮し、陽光あふれる山頂へ。
市房山山頂 市房山山頂
見事な雲海の上に霧島連峰が浮かぶ。周りは山ばかり。さすがに九州の秘境と言われるだけのことはある。小1時間ほど至福のひとときを過ごす。帰路も快調に飛ばし、あっと言う間にキャンプ場へ帰還。湯山までの車道からはのんびりとした山村風景が展開し、雨に濡れながら歩いたことがずっと昔のように感じられる。初春の山里のなんと素晴らしいことか。かかる状況では、ばかげた問答などする由もない。

 帰りは人吉までの直通バスに乗り、その日のうちに鹿児島まで南下した。途中肥薩線のループ線の車窓から市房が他に抜きんでた高さで聳えているのが見て取れた。
 明日は開聞岳の3年越しの復讐戦だ。


      

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