西表島横断

−果てしなく続くジャングル。ここは本当に日本なのか−

   

山行概要

日 程
2003年3月22日(土)
山 域
西表島
天 気
曇り時々晴れ
メンバー
男3人(うちガイド2人)
コースタイム
浦内橋=観光船=軍艦岩=0:35=マリユドゥの滝展望台=0:25=カンビレーの滝=1:05=第二山小屋跡=0:20=イタジキ川出合=1:15=仲間広場=0:30=第一山小屋跡=1:35=横断道大富口=1:00=仲間川展望台=0:30=大富取水場【7:15】

記録文

 約束どおり、8時過ぎに宿を出発。まずは浦内川の河口へ向かい、8時半に予約していた船で浦内川を遡る。(定期便の始発は9時半で遅いので、チャーターした。ガイド付といい、今回は何と言う贅沢か)
 横断するには、森林事務所と警察にそれぞれ届け出が必要で、この乗船場で提出することになっている。私の場合は手続き全てバナナハウスでやってもらったが、個人で行く場合は注意が必要。

浦内川を遡る

 浦内川は島にある川とは思えないゆったりとした川幅を誇っている。さすがに沖縄県最長の川だけのことはある。川の両岸には鬱蒼としたマングローブ林が続き、探検ムードは嫌でも高まる。

軍艦岩

 徐々に川幅が狭まってきた。これ以上船は上がれない軍艦岩と呼ばれる船着き場で船を下り、いよいよ横断開始である。
 今回、ガイドの練習と言うことで、河合さんの他にもう一方茂木さんという方も来られていた。お2人とも動植物に詳しく、この2人に挟まれて歩くと言う何とも豪華な道中となる。
 この日の私のいでたちは、いつものTシャツ&ジャージに加え、ヒル除けのため、ロングスパッツを装着。おまけに京都の山道具屋で買ったヒル除けスプレーもふりかける。(経験者みんなヒルにやられたと聞いていたので…)

目を引く木々が次々と現れる

 のんびりとスタート。しばらくは立派な遊歩道が続く。いつもの私のペースからすると半分くらいじゃないかと思うような遅いペース。珍しい動植物が現れる度に立ち止まってレクチャーしてくれるので、自然とゆったりした歩みになる。こんなペースで今日中に着くのかと一瞬不安になるが、河合さんは既に何十回と横断の経験があるので、安心してこのゆったりとしたペースに身を任せる。いつものペースと比べ、目に入ってくる情報量が違う。今までいかに急ぎすぎて、何にも見ていなかったかを痛感する。
 とにかく次々と現れる亜熱帯特有の巨大な植物に圧倒される。特にシダ類の豊富さは、マニアの人にはたまらないんでしょうな。

マリユドゥの滝

 軽く1ピッチでマリユドゥの滝を見下ろす展望台に到着。100m先の谷間に写真では何度も見た豪快な瀑布が轟音を上げていた。さらに遊歩道は続く。マリユドゥの滝の落ち口に降りる分岐は通過し、カンピレーの滝へ。

カンピレーの滝

 傾斜のほとんどない大岩盤の上を勢いのある水流が迸る。

ポットホール

 岩盤のあちこちにはポットホールと呼ばれる丸い穴が見られる。中にはオタマジャクシがいっぱい。
 このカンピレーの滝で遊歩道は終了。浦内川の右岸に沿って山道が延びている。川沿いと言ってもヘつって歩くと言う感じではなく、川と一定の距離を空けながらルート取りがされているので、森歩きの印象の方が強い。

これがヤマンギ。握ったら激痛が…

 サキシマハブはもとより、心配していたヒルも未だ1匹も姿を見せていない。ガイドさんらによると、ヒルがいかなる時に出現するか、さっぱり分からないという。「晴でも雨でも出るときは山ほど出ますよ」という言葉が現実にならなかったことを幸せに思うべき。その代わりといっては何だが、ヤマンギと島で呼ばれるクヌギカレハの幼虫の毛虫は頻繁に目の前に現れてくれた。これをうっかり掴むと猛烈な痛みが襲ってくるらしい。島ではハブより怖いと言う人も多い。怖くて木は掴めない。

こんな景色がずっと続く

 数え切れない位の枝沢を巻いていく。同じような景色が延々続くが、河合・茂木さんのガイドで飽きることはない。事前の印象ではルートは踏跡程度かなと思っていたが、ルートはしっかりしているし、道標も付けられており、その点は拍子抜け。やはり横断する人が年々増えて、しだいに一般コースに近づいているのか…

ヤエヤママルヤスデ

 毒はないですが、かぶれる体液を出します…

アマビコヤスデ

 触ると丸まります。

しめ殺しの木(アコウ)

 他の樹木に着生し、つるを伸ばして樹木をしめ殺してしまいます。

イタジキ川出合付近の浦内川本流

 第二山小屋跡小屋跡を過ぎるとすぐに、イタジキ川の出合が現れる。だいぶ遡ってきたが、まだまだ浦内川本流の川幅は狭まらない。

イタジキ川を渡渉する

 上流に「猫の城」と言う意味のマヤグスク滝があるイタジキ川を渡渉する。今日の水量は大したことなく、飛び石伝いに渡ることができたが、増水時は結構大変らしい。

 イタジキ川の出合では「まぼろしの花」と呼ばれるセイシカが鮮やかなピンクの花を開いていた。渡渉したポイントから道はいったん急ながけ状のところを登る。ロープが付けられているので問題ないが、一人ずつ慎重に進む。
 ペース設定が良いのでほとんど疲れを感じないが、さすがにお腹は減ってきた。登りきったところにある小平地で昼食をとる。古代米のおにぎりとお茶もバナナハウスで用意してもらった。

第一山小屋跡

 キャンプは基本的には禁止だが、非常時には適地であろう。

第一山小屋跡付近のよどみ

 第一小屋跡付近で浦内川にグッと近づく。この辺り川はよどみ、池と見紛えるくらいに流れがない。ボーッと水面を見ていたら、スーッと2m位のなが〜い物体がこちらに泳いできた。オオウナギである。ガイドの2人も初めて見たと言っていたので、非常にラッキーだった。

古見への分岐にて

 要所には道標がちゃんと付けられている。
 古見への道は荒れ気味で結構厳しいらしい。最近も遭難騒ぎがあったようだ。

無人カメラ

 この辺りからイリオモテヤマネコの生態調査のための無人カメラが何機か現れる。ヤマネコが目の前を通過するとセンサーが反応して、自動的に撮影できるらしい。人が興味本位で近づいて、よく写ってしまうようだ。

浦内川。だいぶ細くなってきた

 雄大な川幅を誇っていた浦内川もしだいに渓流といった感じになってきた。これだけ山の中、川を遡りながら、未だに標高的には200mも登っていないのもここならではか。

浦内川の源流部

 最後の本格的な渡渉を終えると、川幅は一気に狭まってきた。植生も変わってきて、これまでのシダ類から潅木の類が多く見られるようになってきた。
 最後、川の源流は岩の伏流の中に消えた。少しの登りで尾根状の地形に出る。どうやらこの尾根が浦内川と仲間川とを穿つ分水嶺になっているらしい。それぞれ雄大な流れを誇る川の分水嶺としては、何ともささやかな尾根である。少しの下降ですぐに仲間川の源流が現れた。しばらくはこの小沢に沿って下る。

横断道大富口

 不意に目の前が明るくなり、大富集落から上がってくる車道に飛び出した。ここが横断道大富口で。以後はダートの車道歩きとなる。

ナンヨウリュウビンタイ

 常緑の大型シダ類

クワズイモ

 食べたら大変なことになるようです。

ヒカゲヘゴ。10mを超える超大型のシダ類

 タルい車道歩きを覚悟したが、次々と現れるシダの巨木をはじめとする珍しい植物のおかげで、楽しい下山となった。

ウブンドルのヤエヤマヤシ群落を遠望

 途中、車道横の崖をロープ頼りに登るとヤエヤマヤシ群落の展望台がある。石垣島と西表島だけに生える一属一種のヤシ科の植物で、天然記念物でもある。

仲間川展望台にて

 ヤエヤマヤシ群落の展望台から少し下ると、今度はコンクリート造の立派な展望台が現れた。ここからは蛇行する仲間川と日本最大規模のマングローブ林を見下すことができる。暮れなずむ雄大な景色にしばし言葉を失う。

 さらに下った大富取水場の少し下でバナナハウスの大将の森本さんが車で迎えに来てくれていた。ここで横断は終了。心地よい疲労感。最高のトレイルだった。
 カンピラ荘まで、色々と案内してもらいながらの平均時速30キロののんびりドライブで戻った。

 そもそもはルートファインディングの不安からガイドをお願いした訳ですが、その点だけで言えば、横断ルートの踏み跡と道標は割としっかりしているので、ガイドは不要だったかもしれません。(その代わり、いったんルートを外せば、非常に厳しい状況に追い込まれます。鬱蒼としたジャングルに小沢が錯綜し、地形図や磁石で何とかなるレベルのところではないです。実際、遭難も多いです。知り合いの話では、トイレのためにパーティから少し離れただけで道に迷い、遭難騒ぎになったらしいです)
 それよりも、ガイドをお願いして一番良かったのは、西表の貴重な動植物の説明を聞きながら歩くことができたことです。自分の今までの歩き方がいかに空しいものであったか、改めて思い知りました。これからはできるだけゆっくりと自然を五感で感じながら歩きたいと思います。

参考タイム

3/22軍艦岩 08:4509:20 マリユドゥの滝展望台 09:2509:50 カンビレーの滝 10:1011:05 第二山小屋跡 11:1511:35 イタジキ川出合 11:4012:30 昼食 13:0013:25 仲間広場 13:3014:00 第一山小屋跡 14:0515:45 横断道大富口 15:5016:45 ヤエヤマヤシ遠望所 16:5016:55 仲間川展望台 17:0017:30 大富取水場

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