−熊野古道随一のアップダウンを誇る小辺路をテント泊3日でスルー−
山行概要
2018年4月28日(土)〜30日(祝) | |||
熊野古道小辺路 | |||
単独 | |||
高野山金剛峰寺=0:20=轆轤峠=0:10=真別処分岐=0:25=薄峠=0:30=御殿川橋=0:15=大滝集落=0:30=高野龍神スカイライン合流点=0:10=野迫川村分岐=0:15=水ヶ峰分岐=1:05=平辻=0:40=大股集落=0:45=萱小屋跡=0:45=桧峠=0:20=夏虫山=0:15=桧峠=0:25=伯母子岳分岐=0:10=伯母子岳C.S.=0:15=伯母子岳=0:10=伯母子岳C.S.【7:25】 | 伯母子峠C.S.=0:20=伯母子岳=0:10=伯母子峠C.S.=0:40=上西家跡=0:30=弘法大師坐像=0:35=待平屋敷跡=0:20=伯母子岳登山口=0:05=五百瀬集落=0:10=船渡橋(三浦口バス停)=0:25=吉村家跡=0:35=三十丁の水=0:35=三浦峠=0:35=今西集落展望台=0:30=矢倉観音堂=0:30=西中バス停=0:25=川合神社=0:30=重富(年輪)=1:00=昴の郷=0:50=果無集落(世界遺産石碑)=0:25=天水田跡=0:35=観音堂C.S.【9:45】 | 観音堂C.S.=0:30=果無峠=0:15=六字名号碑=0:50=七色分岐=0:45=八木尾バス停=0:20=道の駅「奥熊野古道ほんぐう」=0:10=平岩口バス停=0:10=三軒茶屋跡=0:40=熊野本宮大社【3:40】 |
記録文(写真はクリックで拡大)
4/28 快晴
熊野古道を散々歩いてきたが、最後に残ったまとまった区間が小辺路である。しかし大峯の奥駈道を別格とすると、この小辺路はほとんど登山と言えるルートで、ずっと山奥を行くため、途中のエスケイプに多大な労力もいることから、スルーハイクで一撃で落とすのが一番効率的だが、最低でも2泊はかかる。
通常コースは3泊のようで、ネットで調べると2泊は相当しんどそうだ。民宿も使えるが、GW真っ最中で既に確保は困難であり、また、避難小屋を使ってテントを省略することもできたが、鼠が跋扈しているとのことで、やはりテントを担いで臨むことにした。
そして、アプローチをどうするか… 入下山口が相当離れるので、公共交通機関を使うのがセオリーだが、京都からの始発だと、高野山上着がどうやっても9時を過ぎてしまう。
そこで、車で一気に高野山上に入り、帰路は熊野本宮大社から五條、橋本経由で高野山に戻ってくることにした。五條まで出れば、1時間半ほどで高野山に戻れるようだ。
天気予報ではしばらく好天が続くとのこと。絶好のチャンスがやって来た。
そして当日を迎える。4時起床、4時半には京都を出発。ずっと下道で進むが、京奈和道が橿原から高野山の麓まで繋がったので、スムーズに2時間ほどで高野山上へ。
この連休中、常に満車になるであろう、金剛峰寺正面の駐車場は、今はガラガラ…
爽やかな快晴にテンションが上がる。私はこのGW、ここにあと2回も訪れることになる(笑)
山上のメインストリートを少し東に進み、金剛三昧院への標識があるところを右折、金剛三昧院の境内入口のところに小辺路の道標が立っており、右手の林道へ。
薄暗い植林帯の中の林道をゆるやかに登って行く。ウォーミングアップには最適で、久しぶりのテント装備の負荷がかかるが、スムーズに山行に入ることができた。
視界が開けると轆轤(ろくろ)峠で、高野山上を環状する女人道に合流。これから進んでいく南側の展望が良いが、果てしなく広がる山並みにため息…
アップダウンのほとんどないゆるやかな林道を進む。女人道の分岐を左に分け、さらに半分車道、半分登山道といった感じのゆるやかな道がしばらく続く。
あっけなく薄峠に到着。あまりに順調なオープニングに拍子抜け(標高800mを超える高野山上からのスタートなので、キツい登りが無いのは当たり前なのだが…)。これはこの先も余裕だなと、勝手な慢心が芽生えだす。
薄峠からは登山道となり、下り道となる。目の前にはこれから越えねばならない奥高野の山並みが高く、遠い…
非情の下りが続く。だいぶ下った頃、対斜面のかなりの高みに集落が見え、嫌な予感がしたが、見て見ぬふりをして下り続ける。
やっと下り切り、橋を渡って急な登り返しをこなすと、車道に合流。しかし、さらに急な登り道を頑張ると、先ほど山上に見えた大滝の集落に到着。
集落内にあずま屋ときれいなトイレが整備されている。
ここでソロの方が追いついてきた。私と同じく今日中に伯母子岳まで行くとのこと。小屋泊まりとのことなので、抜かれても納得…
集落最奥の民家の横から再び山道となり、ゆるやかに高度を上げていく。
植林がほとんどだったが、それなりに気持ちの良い林の中のトレイルを楽しみながら進んでいくと、スカイラインに合流。
味気ない車道歩きが始まる… 連休中なので交通量がそれなりにあり、歩道がないので怖い…
振り返ると高野山上が…
スタートから2時間半ほどだが、けっこう歩いて来ました。
水ヶ峰分岐に到着。ここで肩身の狭すぎる車道歩きとおさらば。
短いが急登をこなすと、水ヶ峰集落跡に到着。ところどころに屋敷があったと思われる平地や石垣が点在。
ここは小辺路の旅籠として栄えた集落で、明治32、3年頃には8戸の宿が軒を並べていたという。その後交通の発達に伴い通行者が減少、集落は衰退し昭和27年5月に無人になった。
いくら昔の街道筋とはいえ、1000mを優に超えるところに集落があったとは…
集落跡からすぐに林道(タイノ原線)に合流し、また車道歩きとなるが、ここは車の交通量がほとんどなく、展望も良いので、快調に進む。
そして、この林道は展望良好。水ヶ峰のすぐ東に位置する荒神岳が目の前に見える。
中央やや左奥に伯母子岳が… 今日中にあそこまで行かねばならない… しかも、いったん600mほどの大股集落まで下る必要があるのだ…
平辻でまた山道となり、大股集落へ一気に下っていく。
一度林道を横切るが、そこからさらに急坂となり、大股に着陸した時には膝が笑い始めていた。この先大丈夫か…
大股には12時ジャストの到着。3泊ならここで泊まるのが順当だが、2泊の私は伯母子峠まで行かないと明日が厳しい。まぁ伯母子峠まであと2時間半ほどなので、何とか先は見えた感じ。
バス停の自販機が稼働していたので、ジュースを一気飲みして生き返る。ネットの事前情報通り、大股橋のたもとに蛇口があったので、ここで水を2リットル補給する。伯母子峠には水場がなく、事前情報では歩いて7分程のところに水場があるらしいのだが、万が一のことを考えて、ここで汲んでいくことにしたが、結果として大失敗だった…
伯母子峠へはコンクリ道のいきなりの急登。2キロ増のザックが肩に食い込む。九十九折れの急登に一気に疲れてきた。あ〜しんど…
急登と緩登を何度か繰り返しながら、何とか萱小屋跡に到着。昔はここにも数戸の集落があったようだ。
立派な小屋が建てられている。ネットでは「水場はない」とのことだったが、小屋の裏に水汲み場があった… 大股集落で2リットル補給したのは無駄だった…(涙)
コースタイムきっちりかかってしまう。今までの行程も確認してみると、ほとんどコースタイム通りか、それ以上かかってしまっている… 今回、和歌山県のHPから街道マップを印刷したのだが、どうもこのマップのコースタイムはかなりの辛口である。この先の行程を考えると、急にげんなりしてきた…
今日は時間の余裕もあるし、のんびり登ろうと開き直って、牛歩戦術で登って行く。桧峠へは、萱小屋跡までの登りと同様、急登と緩登の繰り返しとなる。急登部分は、とりあえず止まらないことだけを考えて、ノロノロ進む。
それでも新緑が目に染みる…
峠手前の急登を何とか登り切り、桧峠に到着。やっぱりコースタイム通りかかってしまった… 情けない…
それでもここまで来れば、もう伯母子峠までほとんどトラヴァース道で、完全に射程内である。峠に座り込んで、地図を見ていたら、ここから夏虫山というピークまで道があるらしい。しかも良く見ると、二百名山に選定され、奥高野を代表する伯母子岳より高いではないか! ピークハンターを自称する私としては、これを見過ごすわけにはいかない(笑)
ザックをデポして、踏み跡をたどることに。
体が軽い〜 ルートは踏み跡程度だったが、迷うような箇所はなく、一気に山頂へ。
しかし、展望は0… 地味な山だった… そら伯母子岳の方が目立ちますな…
ここから伯母子峠へは、桧滝谷源頭を巻きながら進む、高低差のほとんどないルートとなるので。楽勝。
しかし、小沢の源頭部を何度か巻いていくのだが、余裕で水汲めるじゃん! 最悪〜 かくして私の水ボッカ2リットルは完全に単なるトレーニングとなってしまったのであった…
ゆるやかな散策路をのんびり進み、余裕で伯母子岳分岐へ。4方向へルートが延びる。
直接、伯母子岳へ行く手もあったが、ここは小辺路を伯母子峠まできっちり繋げたかったので、そのまま進む。
最後は余裕をもって伯母子峠に到着。避難小屋の裏手に5張ほどは余裕で張れるテントスペースあり、本日は4張と小屋に3人ほど泊まったようだ。
テントを設営してから、伯母子岳のピストンに向かう。
空荷で一気に高度を上げ、遮るもの一つない伯母子岳山頂へ。20年振りの登頂。前回は西側の遊歩道入口から安直に登ってしまったので、やっと長年感じていた後ろめたさを解消できた。
山頂からは、大峰が勢揃い。あのスカイラインを全て辿ったと思うと、非常に感慨深い。
南側は熊野三千六百峰が… 遥かに山並みが続く。鉾尖岳(右)と、果無山脈(中央奥)も見えるが、あの山脈を越えないと熊野本宮大社にはたどり着けない… 行けるかな…
峠に戻り、17時過ぎから一人宴開始。初日なのにビール500ml1本と、ペットボトルのボトルワインも1本開けてしまった…(笑) すっかりへべれけになって沈没… 明日は大丈夫か…
4/29 快晴
いつも泥酔のあげく爆睡するので、単独行は朝起きられるか非常に不安なのだが、無事3時半起床! この日も快晴のようだ。スムーズに朝食&撤収を終え、4時過ぎには準備完了。
下山口の熊野本宮大社からのバス便が少なく、余裕をもって入浴や食事を取るには、朝のうちに到着したかったので、本日は果無峠手前の観音堂まで行きたい。そうなると本日はコースタイム10時間超えの長丁場。しかもタイム設定が辛いのは昨日の歩みで分かっているので、ホンマなら一刻も早く先に向かいたいところだが、満天の星がまたたく空を見ると、私はザックを静かに降ろし、昨日に引き続き伯母子岳に向かうのであった。
護摩壇山の頭上に、煌々と月が輝く。
そして日の出を待つ…
計算では5時一桁台には日の出となるはずだったが、東に聳える大峰山脈に遮られ、なかなか日が昇らずヤキモキするが、ついに八経ヶ岳と釈迦ヶ岳の間から日が昇った! ピークに集まった面々から歓声が上がる!
夏虫山(左)と、中央奥には高野山上。僅か1日でよく歩いて来ました。本日はそれ以上の激闘が待つ… さあ、峠へ戻ろう!
気合を入れてリスタート! 早朝の斜光線を浴びながら、芽吹き始めた爽やかな森をゆるやかに下っていく。
ところどころ、小沢の源頭を巻く辺りは、水が取れるが、崩れて崖になっている箇所もあるので要注意。
広い平地に出た。駒札があり、上西家跡とのこと。写真に指がかかってしまった…
上西家は、江戸の初期には街道上の旅籠として存在していたそうで、昭和9年まで人が住んでいたらしい。牛を飼い、家の周りには広い畑もあり、ジャガイモや南瓜は北海道よりもうまいと評判だったと駒札に書いてあった。
上西家跡からいったん登りとなり、尾根に乗ってから、再び下り始めるが、穏やかな下りがほとんどで、足の負担が少ないのは良いが、なかなか高度が下がらないので、ヤキモキする。
ひとしきり下ると弘法大師の坐像が座る小平地に降り立つ。すぐ下には水ヶ元茶屋跡がある。「うえにしより水が本へ半里、家有、弘法の封じ水有、故に水が本と云」との由来が駒札に記されていた。
やっと本格的に下り始める。待平屋敷跡の前後には、今回初めて石畳が現れる。
登山口まで最後はかなりの急降下で、一気に神納川の畔へ。
標高350mまで下ってしまった…
谷が深く、まだ日が当たらない五百瀬集落を進む。
集落の中程に売店を発見。ぱっと見には営業しているように見えなかったが、店の中を覗いていると爺さんが現れ、「やってるよ」との嬉しい一言。
我慢できず、ビール注入! 旨すぎる。しかし、これから三浦峠越えが待っているのに大丈夫か…
爺さんは「人がどんどん減って、鹿や猪の獣害がひどい。我が物顔で集落を闊歩しやがる」とボヤいていた。
三浦口バス停横の船渡橋へ。橋の手前にはコンコンと水が湧いており、ここで三浦峠越えに備えて水を1l補給(軽量化のため、スタート時は500mlしか持ってなかった)。
神納川を渡り、ここから山道となる。
最奥の民家の横を抜け、林の中へ。峠までは標高差約700m以上、100分の登りである。ここまで予定通り来ているので、じっくり牛歩戦術で行くと決め、のんびり登って行く。
最初は石畳も現れる古道を登って行くと、前方に杉の巨木群が…
ここには旅籠を営んでいた吉村家の屋敷があり、昭和23年(1948年)頃まで居住していたという。そして、樹齢500年前後と推定される幹回り4〜8mの杉の巨木が立ち並んでおり、防風林だったと思われている。
それにしても存在感は圧倒的だ。
ここから古道は傾斜を強める。伯母子峠からの下り道は新緑が爽やかな自然林だったが、三浦峠の登り道は基本的に杉の植林帯を行くので、単調だ… 故に疲れる。
しかも、また事前の下調べが不十分なせいか、水場を発見、さっきの補給がまた無駄に…
峠の手前は、これから植林をする予定地なのか、木が植えられておらず、辿って来た北側の展望が雄大。それにしても、今朝あの稜線の上にいて、4時間でこれだけ離れたかと思うと、人間の足もなかなかやります(笑)
見通しが利くようになり、峠まであと少しなのかと感じたが、なかなか着かない… 特に峠の直下は大きくジグザグを切りながら登って行くので、イライラ…
何とか林道に合流すると、三浦峠。展望は引き続き雄大。標高1060mまで登り返した。
峠にはあずま屋と綺麗なトイレが整備されている。
さあ、今度は標高差800mの下りだ。自然林が優勢な深い森の中を下っていく。
小辺路全体を通して言えることだが、ルートの整備状況は良好。
画像のように歩きやすく平坦な尾根状に整備した「段築」のような箇所も…
しかし、やや飛ばし過ぎたのか、単なるトレ不足か、この頃から、左膝裏の古傷がザワつき出す…
下りの途中、東側の尾根上の標高500m近い場所に位置する天上の集落、今西集落が望めるポイントがある。
さらに下ると、参詣道は尾根を外れ、尾根の西側を巻くように進むと、平坦地に観音堂が建つ。
昭和30年(1955年)に建て替えられた比較的新しいお堂で、堂内の中央に如意輪観音菩薩坐像、左に地蔵菩薩立像、右には観音菩薩らしき三体の石仏像が安置されている。
お堂の先で、西中集落の最上部に降り立ち、林道に出る。林道を少し下るとまた細道に入ったりと分岐が続くが、道標に従えば迷うことはない。
再び車道に合流し、西中バス停へ。
何と「田岡商店」という店があり、店自体は開いてなかったものの、酒の自販機が…
ここでも我慢できず、350ml2本を注入! 既に本日3本目! 何やってるのか…
ほろ酔い加減で歩行を再開。ここから昴の郷という十津川村の温泉施設までR425の8キロ余りの車道歩きが続く。タル過ぎるが、登り道よりはマシだと淡々と進んでいく。
綺麗なトイレのある川合神社を過ぎ、永井という集落に入ると売店があり、ここでワインを1本購入(笑) 店主曰く「昴の郷まで唯一の売店」らしい。
重里集落まで進むと、何と「年輪」さんという食堂が… こんなん聞いてなかった… さっき缶ビールとつまみを喰ったばかりなのに、フラフラと店に吸い込まれてしまう私…
おかみさんに勧められるまま、豚生姜焼き定食を注文… しかも当然生ビール(笑) いったい本日なんぼ飲んでるのか… ホンマにふざけた巡礼者である。
余裕で完食し、さらに酔っぱらって歩行を再開。何か適度に酔ってるせいか、車道歩きのタルさをあまり感じることなく進んでいく。
8キロの車道歩き終了! 広大な敷地に快適な芝生の広場が広がっており、日帰り入浴もできるので、完璧なサイト場だと思うのだが、当然ながらキャンプは認められていない…
せめて風呂に入りたかったが、この後も果無への登り返しがあるので、諦めた。
懲りずにホテルの自販機で缶ビールのロング缶を1本補給し(笑)し、大賑わいの昴の郷を後に…
辿って来た国道のトンネルではなく、敷地の奥から伸びる車道のトンネルの方をくぐると、すぐ右手に吊り橋が…
これが柳本の吊橋で、これで対岸に渡る。めっちゃ揺れて怖い…
さあ、いよいよ本日ラストの果無越に取り掛かる。既に標高150m程度まで下ってきたので、サイト場に予定している観音堂まで標高差600m以上… しかもここまで8時間歩いて来てからのラストである。何と自虐的なコースか…
ここから先は、果無山脈を縦走した時に下っているが、何と28年前の話であり、記憶は全くない。
少しの登りで車道に合流。忌まわしきクラブツーリズムの観光バスが排気ガスをまき散らしながら、果無集落へ上がって行った…
車道をまたぎ、古道へ。石畳が現れ、九十九折れの急登が続く。呑み過ぎたせいもあって、足が前に進まない…
東方の展望が開けた場所に出た。玉置山山頂は残念ながら前山に遮られて見えない。下の大規模な施設は特別養護老人ホームだった…
急登が最後まで続いたが、獣害対策用の鉄扉を開けて侵入すると、ついに「天空の郷」果無集落に到着。
天空にあるのに広々とした水田が広がる。
あまりに有名な世界遺産の碑にて。奈良県の観光振興的には鉄板の画である。
しかし、ここには当然のようにクラブツーリズムの一団が… 雰囲気ぶち壊し… お願いですから静けさが求められるところに大勢で蹂躙するのやめてもらえませんかね〜
長かった本日の行程もあと1時間の登りが残るのみ。さあ、ラスト1本のスタート。
果無峠越えの古道には、西国三十三カ所観音像が立ち並ぶ。果無集落を抜けると、すぐに現れるのが28番。本日のゴール地点である観音堂の近くには20番が立つので、以降、観音様が現れるのを楽しみに歩を進める。
25番の観音像のすぐ先で視界が開け、こんな山中には不似合いな広場が現れる。
ここが天水田の跡で、この先の「山口茶屋」の住人が雨水だけを頼りに稲作をしたといわれている。
ここもテント適地だが、残念ながら水がない… 先へ進む。
疲れ果てたが、何とか21番観音様まで上がってきた… しかし、4時すぎから動き始めて、17時まで行動し続けなければならないとは… あーしんど…
それでも、左膝が破壊寸前の中、後半戦に下り道がなかったのは幸いだった。
やっと観音堂へ。先客は1名。同じ行程なのに抜かれた記憶がないのだが、多分、食堂にいる間に抜かれたんだろう。
お堂の前には3張りは余裕で張れそうな平坦地が。汚いが(笑)トイレもある。何と言っても冷たい水場が完備。果無峠越えの古道で唯一の水場で、古道整備の一環として造られたらしい。早速、昴の郷で買ったビールのロング缶を冷やす私…
この日もビールロング缶1本とワインボトル1本でへべれけに…
しかし、今日の頑張りで最終目的地の熊野本宮大社まで4時間弱のところまで来て、完全に射程内に収めた。
4/30 曇り後晴れ
この日も3時半起床。1時間で食事とテント撤収を終え、4時半に出発。暗闇の古道を登って行く。
19番観音像の辺りで背後の視界が開け、見事な雲海が… 頭上もほとんど雲に覆われている。湿度も高い感じでジメジメしている。
果無峠まで急登が続く。
ついに標高1060mの果無峠に到達。28年前は西から縦走してやって来たのだ。
伯母子峠、三浦峠、そしてこの果無峠と、1000mを越える峠を3つ越えてきた。これで熊野本宮大社まで大きな登りはない。
さあ、熊野川までの長い下りが待っている。左膝が壊れているので、登りより嫌な区間だ。果たして、下り始めてすぐにストックに頼らないと降りられない状況になってしまう… こんな状況で標高差1000mを下り切れるのか…
膝裏の痛みに顔をしかめながら急坂を下っていくと、六字名号碑。この辺りで日の出となった。
名号とは、仏・菩薩の称号のことで、六字名号のほかに、九字名号、十字名号などがあり、六字名号の六字は、「南無阿弥陀仏」を指す。
果無峠の下りは、たまにゆるやかな箇所もあるものの、さすがに1000mを下るだけあって、急な箇所はホンマに急で、ストックがなければ膝の痛みでとても下れなかっただろう。
高度をさらに落としていくと、雲海に突入し、霧の中を下るようになる。
東の七色集落に下る道への分岐を分けると、いよいよ熊野川への最終段階に入り、急降下はさらに傾斜を増す。ときどき声を上げてしまう程、膝裏が痛い… しかし、もう先が見えたのと、最終日なので、悲壮感はあまりない。
激痛に脂汗を流しながら下り、何とか林道に出た。画像は下ってきた方向を振り返ったもので、左奥から果無峠への山道が始まっている。
目の前の民家の横を抜け、熊野川まで最後の下り。
最後、階段を下り切り、ついに熊野川に着陸〜 あ〜しんどかった。コースタイム以上かかってしまった…
しかし、完全に先が見えた。安堵しながら熊野川沿いの平坦路を進む。
三里橋のところで熊野川を離れるとすぐに道の駅。
早朝なのに駐車場は大盛況。GW真っ最中なので車中泊の車がほとんどだ。
道の駅から引き続き旧R168を進んでいくと、平岩口バス停に到着。
ここから旧国道を離れ、細い車道を右斜め上に登って行く。
10分程で、車道の上を吊橋で熊野古道が交差する三軒茶屋跡に到着。道標が示すとおり、ここで紀伊田辺からやって来る中辺路に合流。中辺路を完歩した時以来、2年振りの再訪である。
2年前は、ぼんやりとまた小辺路をやってここに来るんだろうなと思っていたが、これだけ早く帰ってくるとは思わなかった…
2年前の記憶では、三軒茶屋跡からは下りが続くと記憶していて、左膝の痛みが気がかりだったが、実際は平坦な部分が多く、下りもゆるやかで助かった。僅か2年前の出来事なのに、記憶無さすぎ…
これまでの小辺路と比べ、一気に人影が増えた古道を、これまでの歩みを反芻しながら進むと、車道に出、祓殿王子跡を通過すると、本宮の裏鳥居が見え、ついにゴールイン!
正月と違い、人影はまばら… 余裕で参拝完了。
参拝を終え、参道の階段を膝の痛みに耐えながら鳥居まで下ると、何と職場の関係者がいてびっくり。
本宮から、十津川温泉で入浴し、五條までの行程は、3年前に大峯南奥駈をやったときと同じで、本宮発10時11分発のバスに乗る予定だ。
バスの時間まで、近所の売店でサンマ寿司やトンカツを買って、熊野川の堤防に行き、大鳥居と大斎原を眺めながら、一人で小辺路完歩の祝勝会。サイコー!
十津川温泉バス停前の「庵の湯」は私の貸し切りだった。日本一長い路線バスの八木新宮特急バスの発車時刻12時14分まで、源泉掛け流しのお湯を堪能〜
バスで爆睡したらあっと言う間に五条駅へ。
市名は、「五條」なのだが、官報の告示に「五条」と誤って記載されてしまったため、駅名も「五条」と誤ってしまったらしい。市は長年要望をしているが、システム変更に莫大な費用がかかることから、そのままになっているらしい。
ここから高野山に車の回収のため、和歌山線で橋本に向かう。橋本からは南海高野線に乗り換える。昨年10月の台風21号の豪雨で普通となっていたが、めでたく3月31日に復旧したばかりなのだ。それは目出たいが、単線でノロ過ぎてイライラする。
やっと極楽橋駅に着いたら、今度はケーブルカーで高野山上へ。分かってはいたが遠い…
高野山駅から、最後はバスに乗り換え、ようやく車の置いてある金剛峰寺に帰ってきた〜
2日ぶりに戻ってきた。高野山の店じまいは早く、すっかり人影はまばらになっていた。
無事車を回収し、京都まで約2時間半のドライブ。この日は正直歩きより帰路の方が疲れた…
最後は疲れたが、ついに小辺路をコンプリートすることができた。
残りは、中辺路の大雲取・小雲取越えと、伊勢路の熊野市〜本宮間のみとなった…
参考タイム
4/28 | 金剛峰寺 7:05 ⇒ 7:25 轆轤峠 7:25 ⇒ 7:35 真別処分岐 7:35 ⇒ 8:00 薄峠 8:00 ⇒ 8:30 御殿川橋 8:35 ⇒ 8:50 大滝集落 8:55 ⇒ 9:25 高野龍神スカイライン合流点 9:25 ⇒ 9:35 野迫川村分岐 9:35 ⇒ 9:50 水ヶ峰分岐 9:50 ⇒ 10:15 水ヶ峰集落跡 10:15 ⇒ 11:20 平辻 11:20 ⇒ 12:00 大股集落 12:20 ⇒ 13:05 萱小屋跡 13:15 ⇒ 14:00 桧峠 14:10 ⇒ 14:30 夏虫山 14:30 ⇒ 14:45 桧峠 14:50 ⇒ 15:15 伯母子岳分岐 15:15 ⇒ 15:25 伯母子峠C.S. 15:50 ⇒ 16:05 伯母子岳 16:25 ⇒ 16:35 伯母子峠C.S. |
4/29 | 伯母子峠C.S. 4:20 ⇒ 4:40 伯母子岳 5:20 ⇒ 5:30 伯母子峠C.S. 5:30 ⇒ 6:10 上西家跡 6:15 ⇒ 6:45 弘法大師坐像 6:45 ⇒ 7:20 待平屋敷跡 7:20 ⇒ 7:40 伯母子岳登山口 7:40 ⇒ 7:45 五百瀬集落 7:55 ⇒ 8:05 船渡橋(三浦口バス停) 8:10 ⇒ 8:35 吉村家跡 8:35 ⇒ 9:10 三十丁の水 9:10 ⇒ 9:45 三浦峠 10:00 ⇒ 10:35 今西集落展望台 10:35 ⇒ 11:05 矢倉観音堂 11:05 ⇒ 11:35 西中バス停 11:55 ⇒ 12:20 川合神社 12:20 ⇒ 12:50 年輪 13:15 ⇒ 14:15 昴の郷 14:30 ⇒ 15:20 果無集落(世界遺産石碑) 15:35 ⇒ 16:00 天水田跡 16:05 ⇒ 16:40 観音堂C.S. |
4/30 | 観音堂C.S. 4:30 ⇒ 5:00 果無峠 5:05 ⇒ 5:20 六字名号碑 5:20 ⇒ 6:10 七色分岐 6:10 ⇒ 6:55 八木尾バス停 6:55 ⇒ 7:15 道の駅「奥熊野古道ほんぐう」 7:25 ⇒ 7:35 平岩口バス停 7:35 ⇒ 7:45 三軒茶屋跡 7:50 ⇒ 8:30 熊野本宮大社 |
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