九州の山旅2006

−山は二の次。美食に明け暮れた4日間−

   

旅の概要

日 程2006年5月12日(金)〜15日(月)
メンバー単独
旅 程
5/12
京都(前夜発)〜熊本〜垂水〜高隈山登山〜垂水〜桜島〜鹿児島
5/13
鹿児島〜金峰山・野間岳登山〜枕崎〜知覧〜鹿児島
5/14
鹿児島〜熊本〜俵山・烏帽子岳登山〜熊本
5/15
熊本〜次郎丸嶽・倉岳登山〜天草松島〜本渡〜熊本〜京都(翌日)

旅行記

 5/12 晴れ時々曇り
 昨年に引き続き、九州遠征を敢行。前回は祖母〜傾縦走という充実コースだったが、今年は年明けから休みなしの激務の影響が大きく、とてもじゃないが、縦走できる体力も自信もなく、いつものように安直日帰りピストンに堕ちてしまう。
 夜行バスで熊本へ。これも去年と同じアプローチである。天気が良ければ遥か大隈半島の高隈山に登る予定をしていたので、非効率的なアプローチだが、バスの往復割引とレンタカーの乗捨料金を考慮し、こういう行動になってしまった。
 8時半の始業と同時にデミオを借り、熊本を発進。御船ICから九州自動車道へ。この車には注文もしてないのにETCが付いていた。念のためカードを持ってきておいて良かった。あっという間に人吉を通過。大昔に市房山を登った後に肥薩線でのんびり鹿児島へ向かった時とは隔世の感。
 加治木で隼人道路に入り、国分ICからR220で錦江湾沿いをせっせと南下。途中通過した福山町は黒酢の一大産地らしく、沿道には無数の壺が立ち並んでいて壮観。そして常に右手には桜島がドーンと聳え、慌しく、長いアプローチだったが、はるばる鹿児島にやって来たとしみじみ実感。
 垂水市役所前の交差点を左折し、県道で山手へ。本来ならスマン峠直下まで林道を入り、最高峰の大箆柄岳から御岳や妻岳等、名のある山を全て登ってやろうと勢い込んでいたが、直前に役所に聞いてみると、林道は通行不能になっているということだったので、やむなく、北側の大野原林道からの大箆柄岳往復コースとしたのである。
 高峠で右折し県道を離れる。垂桜集落を過ぎ、ダートの林道へ進入。この間、何度か分岐が現れるが、全て標識がある。結構林道は荒れており、雨裂の激しい所で何度か底を打つ。それと思ったより距離があり、どんどん山奥に入っていくので、「間違ったのでは」とかなり不安になる。正直、もう戻ろうかと思ったところで、工事現場に出くわし、話を聞くと「このすぐ先」とのことだったので、ホッとする。果たしてすぐに登山口が現れた。

林道登山口 11:47

 やっと登山口に到着。4〜5台は停められるスペースがあるが、さすがに平日なので、車は1台も停まっていなかった。

 高隈山(大篦柄岳)山行記へ

 長いダートを慎重に戻る。垂水から直接フェリーで鹿児島に渡ってもよかったが、まだ時間も早かったので、桜島経由で向かうことに。

溶岩展望台付近からの桜島 14:57

 有村溶岩展望台は修学旅行生であふれかえっていたので、接近は断念。続いて現れた古里温泉も余りの立派さに何か場違いのような感じがしたので、さらに直進。

 桜島港の近くに「さくらじま荘」を発見。なかなか寂れていい感じ(失礼)だったので、入浴料400円を支払う。果たして、リアル100%の掛け流し温泉の茶褐色の大浴場を独り占め! 幸せな一時を過ごす。

錦江湾をフェリーで横断 16:05

 「さくらじま荘」のすぐ目の前から、フェリーが出ており、湯上りの体をデッキで冷やしながら、夕暮れの錦江湾をぼんやり眺める。わずか10分ではあったが、これまた幸せな船旅だった。

 勢いよくフェリーを飛び出す。鹿児島市内はかれこれ14年振りとなる。あの時も相当仕事が煮詰まっていて半ば逃避的な旅だったなと考えながらナビに盲従し、今日の宿泊先である東急インに無事到着。
 今回は、いつも宿代をケチって車で寝る私の山旅では珍しく3泊とも全てビジネスホテルを確保した。久しぶりの山旅だし、まあこれ位のプチ贅沢は許されるかな。
 部屋でくつろぐことなく、すぐに街中へ飛び出す。ブラブラと大通りを天文館までのんびり歩く。ジュンク堂書店で郷土本を漁ってから、「るるぶ」で狙いをつけておいた「創作天喰」に開店と同時に突入。(30分後には満席となる人気店だった)

「首折れサバ」に悶絶! 18:30

 そして待望の「首折れサバ」へ。脂がノリノリなのにさっぱり&プリプリの身に悶絶!! 薩摩地鶏焼も注文し、伊差美、富乃宝山に溺れる。返す刀で近所の鹿児島ラーメン(不覚にも屋号を忘れてしまった)で締め、意気揚々とホテルに戻り、大満足で遠征1日目が終わった。

 5/13 雨後曇り
 2日目。雨なのは分かっていた。分かってましたよ。だから目覚ましもセットしないで寝たんですよ。でも、そういう時に限って、7時に目が覚めてしまう。当然外は雨。分かってはいたが、やはり悲しい。この日は観光モードで枕崎でカツオをシバこうと決めたが、どうにも腹に落ちない。寝ぼけ眼で「九州百名山」をパラパラめくっていたら、南薩で選ばれている山は車でほとんど登ることができるじゃないですか。雨の日ならこれも「アリ」かと金峰山と野間岳に向かうこととし、土砂降りの中、ホテルを発進!
 とにかく南へ走る。ナビのおかげで、さほどの苦労もなく金峰神社手前の駐車場へ到着。車外はまるで洗車機に突っ込んだような状況… しかし、数々の名山を落としてきた私がここまで来て登らぬ訳にもいかぬ。全く因果な商売だと溜息をつきながら、雨具の上と傘を持って車外へ… 傘の骨が一気にリバース状態(笑)。慌てて再度車に逃げ込む。急速にやる気が失せていくが、やはりここで止める訳にいかぬ(再)。更に装甲を強化(雨具の下)し、意を決して、再び車外へ。

 金峰山・野間岳山行記へ

 内容はともかく、午前中で2山登頂という快挙?を成し遂げた。心はすでに「いい旅夢気分」。昼飯は枕崎でカツオをしばくと決めていたので、時間調整も兼ねて野間半島をドライブ。

野間半島 11:04

 写真では分かりませんが、半島の先には風車が林立している。いつしか雨は止んだ…

 半島先端に近い野間池で九州電力の風力発電に関する展示館があったので、ここでにわか勉強。展示館前の防波堤に立って、さらに海に伸びる半島の最先端部と茫洋と広がる東シナ海を呆然として眺める。遥か薩摩半島のそのまた西の端に立っている自分が信じられない。京都からでは、はっきり言ってそこらの外国より遥かに遠い。しばらくボーッとしてたら、近くのおばあから何故か大福をもらった。ほおばりながら車に戻る。
 枕崎までは、内陸のルートをたどった方が合理的だが、こんな素晴らしい景観を素通りすることはできない。海岸線をていねいにトレースするR226をのんびり南下する。

OO7の撮影碑 11:45

 南さつま市坊津の鑑真上陸地の近くにある。「007は二度死ぬ」の撮影が行われたらしい。ショーン・コネリーと並んで丹波哲郎のサインもありました。劇中では、何故か「神戸と上海の間にある島」として登場したらしい。(意味不明)

枕崎市街を見下ろす 12:36

 坊津の歴史資料館や安藤広重の題材にもなった双剣石など、見所が尽きず、なかなか先に進まなかったが、ようやく「カツオの帝国」枕崎のまちが近づいてきた。写真右は開聞岳の裾野。残念ながら全容は見えず。

カツオにきびなご 12:36

 さあ、カツオ!カツオ! 枕崎お魚センターに車を滑り込ませ、2階のレストランへ直行。刺身、たたき等ですっかりご満悦。そしてシメは当然カツオラーメン。

カツオラーメン 13:20

 街中には何軒もあるが、「らーめん香月」をチョイス。大きな鰹節が乗ってます。味はまさに「わさび茶漬け」といった感じでシメにはピッタリ。ああ、京都に出店してほしい…
 そして近くの「枕崎なぎさ温泉」へ今日も勝利のリレーが完成。大海原を一望できる露天風呂で沈没。

特攻平和会館の三角兵舎 15:19

 鹿児島へは知覧経由で戻る。就職したての年に一度武家屋敷は訪れたことがあるので、今回は、特攻平和会館のみ。自然と涙が出るのは日本人なら当たり前か。シリアスな気分で鹿児島へ。

にらラーメン 21:07

 今まで何にも苦労せず、のほほんと生きてきた私でも、こうして旨いもんを喰えることに感謝しながら、この日も市内で美食に酔った… さつま地鶏の焼鳥を堪能した後は、鹿児島中央駅近くの「福家らーめん」のにらラーメンでシメ。

 5/14 曇り後晴れ
 4時に東急インをチェックアウト。ホテルマンは「何で」という顔をしていた。こっちは大真面目だ。何といっても今日は今山旅のメインと言っていい、九州中央山地の最高峰、国見岳を目指すのだから。
 単にピークをピストンするのは趣味に合わないので、烏帽子岳まで縦走するつもりで、登山口は平家の落人伝説が残る秘境、五家荘。人吉から北上するほうが合理的な経路のような気がしたが、ナビの出した結論は松橋ICから三和、二本杉峠を経てというもの。睡眠不足の頭であれこれ考えるのも面倒くさいので、ナビに盲従。
 いやはや、二本杉峠越えは、とんでもないルートでした。峠まで舗装はされてるものの、1.5車線未満のクネクネ道が延々と続く。おまけに丸太を満載した大型トレーラーが次々と対向から姿を現す。ダメ押しとして峠の頂上付近はガスガスで視界は5mあるかないか(涙)。生きた心地の全くしないドライブ。
 やっと峠を越えると、今までは何やったんやと言う位、2車線の快適な道路が出現。まあ、峠で自治体が変わると道路状況が一変するのは良くあることだが、ここまで露骨に変わるのもなあ… その快適な道路も谷内川に降り立つころには、再び崖に沿った緊張ルートに。トレーラーの来襲も相変わらずで、「何でこんな早朝から」(まだ7時くらいだった)とすれ違いのたびにマジギレになる私。
 左折し、川辺川を遡る。今更ながらものすごい山奥に来てしまった。こんなところで車が故障したらどうしたらいいんでしょうか? この道をまた戻らねばならないのがかなりストレス。
 そして悲劇が… 樅木集落の奥で「国見岳登山口」の標識を見つけ、ホッとしたのも束の間、さらに細くなった車道の真ん中をふさぐ様に、大型の重機が1台、止められていた。車を降りて近づくと、「この先通行不能」の非情な文字が… 怒りを通り越して思わず笑ってしまった。ここまで4時間近くをドライブしてきたのに… ショックで次の行動に移るまで、しばらく動けない。しかし、しかし、ここまで来て国見岳を諦めるわけにもいかぬ。一般的なルートである、内大臣林道奥の広河原から登ることに決断。時間もまだ8時前だ。覚悟を決めて地獄の二本杉峠越アゲイン。
 峠はまだガスガスだった。泣きながら峠を再び越え、三和から今度は東へ、内大臣橋を目指す。完成当時は東洋一のアーチ橋と言われ、有料橋として運営されていた橋にスムーズに到着。が、橋を渡り、いざ林道を国見岳の登山口へと思ったら、すぐに「林道工事中で通行不能」の看板が… 完全に打ちのめされた私。今日はこれで終了かと思われたが、名山巡りの執念はこんなことでは収まらない。今度は阿蘇への転戦を唐突に決める。(他に何も思い浮かばなかった)

風力発電の風車が立つ俵山峠 10:38

 熊本市付近まで大きく迂回し、ひたすら車を走らせ、俵山峠に着いたのは10時半を回っていた。恐ろしく疲れたが、天気が良いことだけが救いだ。

 俵山・烏帽子岳山行記へ

 今日はどうなるかと思ったが、短いながらも阿蘇の懸案を2つ片付けることができた。
 後はまったりと山行の余韻に浸ろう。宮地方面へ寄り道。

阿蘇神社楼門 15:53

 ここも懸案といえば懸案事項。今までこの辺りにはなんだかんだ言って5、6回来ているのに、これまで何故か行く機会に恵まれなかった肥後一ノ宮。縁結びの御利益があると評判らしく、若いカップルでいっぱいだったので、早々に退散。

 近くの一ノ宮温泉センターで今日1日のドタバタ劇に疲れた体を癒す。
 今日の宿は熊本市内。朝4時からの強行軍だったが、さすがに夕暮れが近づいてきた。外輪山の上を走るミルクロードをドライブ。阿蘇は当然として、茜色に染まった九重の山々も姿を見せてくれた。終わりよければすべてよしということで、すっかり満ち足りた気分で熊本市内へ。さすがにこの日は眠かったので、祝杯も適当に切り上げ、早々に寝た。

 5/15 晴れ時々曇り
 あっという間に最終日。今日は山というよりは、魚を喰いたかったので、天草をターゲットに。正直、山はどうでも良かったが(失礼)、次郎丸嶽、倉岳という名の通った山々があるようなので、一気の電撃戦をかけることに。(しかし、本当に山に失礼だ)
 6時に熊本を出発。天草五橋を渡り、上島へ。「九州百名山 次郎丸嶽」という大きな看板に導かれ、登山口の上天草市今泉へは容易に到着。どの地域でも百名山はまちおこしの有力なツールになっているのか? 整備された登山客用の駐車場に車を停める。

 次郎丸嶽・倉岳山行記へ

 松島港に戻り、またもや「るるぶ」で目をつけていた「いけす料理 ふくずみ」へ。

ウニ丼 11:47

 やはりウニ丼は外せない。刺身盛とセットでまさに至福の一時。一人であまりの旨さに唸って食べているので、傍から見たら非常にキモいと思われるが、そんなことには全くかまってられないほど旨すぎる。

 そしてこの日も温泉へ直行。道の駅「リップルランド」の「さざ波の湯」で島原湾の向こうに浮かぶ雲仙を眺めながらの、さらに至福の一時。

殉教公園からの本渡市内 14:39

 この後もなかなか京都からは気楽に行けるところではないので、精力的に観光。天草の乱発端の地や下島の本渡市に渡り、殉教公園内にある天草切支丹館を巡る。ここの天草四郎陣中旗には感動した。
 雲仙に登った時、わざわざ原城跡に足を伸ばしたことを思い出した。

祇園橋 14:39

 本渡市の町山口川に架かる30m弱の橋。石造桁橋では日本最大らしい。天草の乱の激戦地となった所で、両軍の戦死者により川の流れは血に染まったとのこと。

 熊本への帰路の途中には宇土城址も訪れるなど、大満足の1日だった。
 後は京都行の夜行バスに乗り込むだけだが、最後の晩餐は下通り周辺の「はや川」。

馬刺し盛合せ 18:13

 5時半頃に入店したので、客は私一人。店の大将と馬刺しと焼酎の話題で盛り上がって、かなりの痛飲。

 意識朦朧の状態でバスに乗り込み、京都までワープするのは去年と一緒だった。相変わらず進歩の感じられない鹿児島・熊本の山旅だった。

諸国名山探訪

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