−長年の夢だった大峰南奥駈をついに踏破! しかし、とんでもないドSコースだった…−
山行概要
2015年5月2日(土)〜5日(火) | ||
大峰山脈 | ||
MM(♀)、私 | ||
前鬼口バス停=1:30=大滝前=0:35=車止めゲート=0:35=前鬼=1:35=両童子岩=0:50=太古ノ辻=0:10=蘇莫岳=0:55=天狗山=0:25=奥守岳=0:35=嫁越峠=0:25=地蔵岳=0:20=般若岳=1:40=涅槃岳=0:30=証誠無漏岳=0:45=阿須迦利岳=0:35=持経ノ宿=0:10=水場横C.S.【11:35】 | 水場横C.S.=0:45=中又尾根分岐=0:25=平治ノ宿=0:15=転法輪岳=0:40=倶利迦羅岳=1:10=怒田宿跡=0:20=行仙岳=0:25=行仙宿山小屋=1:40=笠捨山=0:30=葛川辻=0:55=地蔵岳=0:50=香精山=0:50=塔ノ谷峠=0:55=古屋ノ辻=0:15=21世紀の森C.S.【9:55】 | 21世紀の森C.S.=0:30=古屋ノ辻=0:45=蜘蛛ノ口=0:15=横峰金剛=0:45=花折塚=0:20=玉置山展望台=0:30=玉置山=0:10=玉置神社=0:20=本宮辻=1:20=大平多山分岐=0:35=大森山=0:10=大水ノ森=1:00=切畑辻=0:45=五大尊岳=2:00=六道ノ辻C.S.【9:25】 | 六道ノ辻C.S.=0:15=大黒天神岳=1:10=山在峠=0:20=吹越山=0:05=吹越宿跡=0:35=吹越峠=0:15=展望台=0:20=七越峰=1:15=熊野本宮大社【4:15】 |
記録文
遥か24年前、就職した年の5月に山上ヶ岳から釈迦ヶ岳をやってから、南奥駈は常に僕の頭にあった。
しかし、最低でも4日ほどは必要なのと、いぶし銀のような渋い山並みなので、他の派手な山に向かってしまっていたのだ…
そして、カレンダーで5連休となった2015年のゴールデンウイーク。絶好のチャンスがやってきた。問題はやはり体力面である。46歳になってしまったうえに(笑)、今の職場の繁忙期が年末から年度始めまで延々続くので、この時期は体力が相当落ちてしまうのだ。
このため、何とか4月から毎朝の京都御苑ランを始めるとともに、重荷になることが見込まれたため、極上の背負い心地を求めて、グレゴリーのバルトロ85リットル、2015モデルを思い切って購入し、万全を期した。
このコース完走の鍵は、何と言っても水の確保である。ネットで調べまくったが、何とかアテになりそうなのは、長年、奥駈道の整備に尽力されてきた「新宮山彦ぐるーぷ」さんが管理されている小屋周辺と玉置神社ぐらいか。それと、玉置山の手前に、奥駈道からはいったん15分ほど下るが、十津川村が建設した「21世紀の森 森林植物公園」というのがあり、立派な休憩舎とトイレもあるようだ。当然、キャンプ指定地ではないが、ネットを見ていると、かなりの奥駈縦走者が利用しているようだ。
もう一つの課題はアプローチである。今年から、近鉄大和上市駅から前鬼口までの午前のバスの便が廃止され、16時25分発の1日1本のみとなってしまったのである。(タクシーで前鬼林道の車止めまで入ってもらうと、3万円弱ほどするらしい…)
マイカーは回収が大変だし… という訳で、この16時台のバスを利用するしか計画は成り立たなくなった。バスは18時28分に到着するので、そこから日没後の林道を3時間ほど歩いて一気に前鬼まで入ることも考えたが、連休前の5月1日に後半休が取れそうだったので、そこまで無理することもないと思い、入山日はおとなしくバス停付近に泊まり、そこから3泊4日分の食糧を持って、突撃することにした。好調なら2泊でも行けそうな気がするが、久しぶりのテント泊装備だし、どうなるか…
そして、ソロで行くつもりで、準備を進めていたが、直前になって、同じ職場のMMが興味を示し、同行することになった。テントは軽量化を重視し、MMのエアライズ2人用ひと張で行くことにした。
5/1 快晴
ついに決行の日がやってきた。二人とも後半休を取得し、近鉄大和上市駅へ。私は駅前の酒店で、缶ビールロング缶を4本購入し、いきなりMMを呆れさせる。
2時間余りバスに揺られ、最後は我々の貸切となった状態で前鬼口のバス停に到着。5連休の前日の便でこの状況だから、減便されるのも宜なるかなである。
バス停横の売店(時間的に当然閉まっていたが、かなり寂れていたので、廃業しているのかもしれない)の裏側辺りにテントを張り、そそくさと食事をし、明日からの激闘に備えて、この日は早々に(20時頃)寝た。バス停には自販機とトイレがあるが、周辺の蛇口はハンドル部分が全て抜かれており、使用不可能。これを見越して我々は京都から水を2リットルずつ担いできたので、事なきを得た。
夜中に入山する車は1台も無かったようで、連休前夜とは思えない静けさだった。
5/2 快晴
予定どおり、2時に起床。朝食のラーメンを無理やり腹に詰め込み、3時ジャストに出発。いよいよ遥か熊野本宮に向けての侵攻開始である。
最低でも持経ノ宿まで行かないと、まとまった水の確保が難しいが、前鬼口からのコースタイムは約10時間の長丁場である。大量に水を担いで歩くのも嫌なので、歩き切るしかない。
満月が皓々と照らす中、林道を黙々と進む。自慢のバルトロ85リットルは3泊4日の装備で満載状態だが、絶妙なバランスで腰への荷重感が秀逸であり、それほど重さは感じない。
林の中へヘドランを照射すると、時折、鹿の目が妖しく光る。大峰も他の例にもれず、相当、鹿が増えていそうだ。快調に不動七重滝の展望台を通過し、車止めの辺りで、すっかり明るくなった。ここから登山道が前鬼まで伸びているが、道が荒れているとの情報だったので、そのまま車道を進む。途中、車が2台、通り越して行った。関係者は前鬼まで直接入れるようだ…
24年振りの再訪となる前鬼は、朝の斜光線を浴びて、穏やかな雰囲気に包まれていた。ここで各自、水を2リットルずつ補給し、さらに重量アップ…
さあ、登山道へ。主稜線上の太古ノ辻を目指し、登り始める。
最初は沢筋を行き、ゆるやかだったが、しだいに傾斜が増してくる。
沢筋を離れると、両童子岩手前まで階段が連なる厳しい登りとなる。階段はけっこう新しめで、最近整備されたようだ。ちょっとやり過ぎでは? 世界遺産効果か?
両童子岩からは、傾斜はやや緩むが、それでも太古の辻まで、沢の源頭を絡みながら、延々と登りが続く。
MMがしだいに遅れ出す。申し訳ないが、同じペースで登っていると重荷でこちらも潰れてしまいそうなので、私がある程度先行しては、ザックを降ろしてMMを待つという状態で、登り続ける。
最後は笹原となり、待望の太古ノ辻に到達。快晴の空へ突き刺すような鋭峰の大日岳がすぐ目の前である。
笹原にのんびりと腰を下ろし、のんびり休憩&カロリー補給に努める。40分も大休止してしまった。
いよいよ未踏地帯の南奥駈へ突入である。山深い印象とは全く逆の、明るい疎林と笹原の稜線が続く。全体的なトーンは、新緑のライトグリーンが優勢な中で、バイケイソウの濃いグリーンが印象的だ。
気持ちの良い稜線歩き。やっぱり縦走はいいなあ〜
蘇莫岳、石楠花岳、天狗山と、同じような高さと山容のピークを繰り返し越えていく。
石楠花岳から釈迦ヶ岳を振り返る。さすがに奥駆全体の主峰格の山である。他からは一頭地を抜いている。尖った山容も素晴らしい。
天狗山を越えた辺りから、笠捨山をはじめ、南奥駈の山並みが果てしなく続く。本当に完走できるだろうか…
ひと登りで奥守岳を越えて、少し下ると嫁越峠。この辺りは特に穏やかな山稜で、テント泊適地である。
次は地蔵岳を越える。登っても登っても、すぐに次のピークが現れる。
この辺りはまだ私も余裕があり、唯一奥駈道がピーク直下を巻いていた般若岳も、ピークハンターの矜持が素通りを許さず、きっちりピークをピストンした。
奥駈道は基本的には、ほぼピークを踏んでいくので、名もないコブも入れると、アップダウンの繰り返しが果てしなく続く。13時を過ぎ、行動時間が10時間を超え、徐々に疲労が蓄積されてきた。
特に、涅槃岳は、これまでのピークと比べ、登り返しがキツく、ここで一気に足を使ってしまった感じで、ドッと疲れが出た。
かなり疲れました。明日大丈夫かな…
次の証誠無漏(しょうじょうむろう)岳は何とか超えたが、続く阿須迦利岳への下りは急峻で、鎖場も現れるなど、さらにダメージが蓄積…
この日の前半戦はほぼコースタイムどおり歩けていたが、ここに来て、グダグダとなり、コースタイムとの乖離が徐々に開いていく(言い訳だが、けっこうこの山域の「山と高原地図」のタイムは辛目だと思う)。
何とか、持経ノ宿には16時過ぎに到着。明日以降のことを考えると、できればあと1時間弱先の平治ノ宿まで足を延ばしたかったが、この日はここで限界だった…
小屋には先客が1名いた。今年から宿泊料が倍になり、2000円になったとこぼしていた。小屋内には、汲み置きのタンクがあり、自由に水を分けてもらえるみたいだった。
小屋周辺にはテントスペースはない。小屋のすぐ前を走る林道が通行不能になっており、路面上に無理やり張ることは可能だが、けっこう傾斜があり(翌日、テントが一張、張ってあった。)、あまり積極的に張りたいとは思えない。
結局、小屋から林道を400mほど北へ戻り気味に進んだところにある水場が生きているということだったので、その辺りの路面にテントを張ることにした。水場は、テントの右奥辺り。
水場は、ここ何日も好天が続いていたので、心配していたが、林道が沢筋を横切る所にホースが引いてあり、2リットルの水筒が3分ほどで満杯になる程の水量で、全く問題なく使用できた。林道もこの辺りの路面はあまり傾斜が無く、普通に張れた(ただし、ペグが刺さり難いので、完全自立式のテントでないと無理)。雨は確実に降らなさそうだったので、フライは張らなかった。
景色は全く得られないが、水場の真横なので、非常に快適なテント地だった。大事に2本担いできた虎の子の缶ビールを1本空け、続いて500mlのペットボトルに詰め替えて持ってきた40度の焼酎水割りへの黄金リレーで、すっかり気分も良くなり、疲れも相まって、この日も19時頃には寝てしまった。
5/3 霧時々雨
3時起床。良く寝た。できれば玉置山まで行きたかったが、ここ持経ノ宿からだと、コースタイムは13時間を超えるので、昨日の様子も踏まえると、無理だろう。そうとなれば、玉置山手前で水が確実に確保できそうなのは、「21世紀の森 森林植物公園」しかない。ここなら、持経ノ宿からのコースタイム、9時間ちょっとと、まあ現実的な所である、本日の予定と昨日の消費量を踏まえ、水は各自500mlと私が2リットルのプラティパスのみとし、MMの軽量化に努めた。
今日もヘッドライトで4時前に出発。ミズナラの巨木が何度か現れる稜線を南へ。昨日に比べるとまだ穏やかな稜線で、さほどのアップダウンなく、快調に進み、周囲が明るくなる頃に、平治ノ宿に到着。
小屋には5名ほどが泊まっていたらしいが、みな玉置山を目指して、既に出発したとのことで、出発準備中のオッサン一人だけが残っていた。このオッサンも今日中に玉置山まで目指すそうだ。このコースはさすがに健脚者揃いである。
縦走を再開。しだいにアップダウンが激しくなる。転法輪岳、倶利迦羅岳と名のある山を越えていく。
今日はまずまずの天気予報だったはずだが、気が付けば、霧に包まれてしまい、小雨も降ってくる始末。あれ〜
倶利迦羅岳からダラダラ下ったところの平坦地が怒田宿跡。ここも露営適地か。
次の行仙岳へは、激登りは無いものの、ダラダラ登りが続く。頂上には電波塔があり、その補修をしているのか、我々がピークの一帯に登り着いてみると、ショベルカーがピーク付近を占拠していた…
雨が強くなってきたので、早々に下山し、行仙宿山小屋へ急ぐ。
小屋には、この辺りの小屋の整備や、ルート管理をされている「新宮やまびこグループ」会員の小屋番さんがおり、色々と話を伺う。
折からの雨もあり、「もう、今日は泊まっていったら? 今晩は、熊肉鍋やけど…」という、誠に魅力的なお誘いに心が激しくよろめくが、まだ8時過ぎだしな〜 泣く泣く先へ出発する。ちなみにこの小屋には缶ビール400円で売ってました。この立地でビールを売っているとは… 神です!
この先のルートや水場他の情報(特に、香精山と五大尊岳の下りは、「激下り」とビビらされたが…)も教えてもらい、南奥駈の主峰格である笠捨山へリスタート。相変わらずガスは晴れぬが、雨はほぼ止んだ。
老杉の建つ八大金剛童子を過ぎると登りが本格化する。小屋番さんからの情報通り、本峰までに4つの前衛峰を越えていく。事前情報のおかげで、我々は騙されることはなかったが、今日のようなガスなら、相当惑わされるのではないか。
笠捨山もガスで展望無し。笠捨山は双耳峰の山容と言い、標高と言い、南奥駈の主峰格であるだけに、展望なしは残念…
仕方がないので葛川辻へ下る。ここ笠捨山で、奥駈道は90度西へ向きを変える。
この辺りから、標高も下がり、より人里に近づいてきた証左か、周囲の林相が自然林から植林に変わり、少々味気なくなってきた。
葛川辻からは、いよいよ南奥駈で最大の難所と言われる、槍ヶ岳・地蔵岳の岩稜歩きとなる。鎖や木の根を掴みながらの急激な登りが続く。大した難所ではないが、重荷を背負っているので神経を使う。MMにホールド・スタンスの指示出しをしながら、慎重に進む。
標石だけが立つ槍ヶ岳を超え、さらに鎖場を越えて行くと、ルートの激しさには似つかわしくない可愛い金色のお地蔵さんが佇む、地蔵岳のピークである。
地蔵岳を越えてからも油断できない。鎖場が連続する。
先ほどの小屋番さんからは、地蔵岳の下りの6〜7mの垂直の岩場が最難関と聞いており、「その岩場には2本の鎖があり、細い方の鎖にザックをくくりつけ、先にザックだけ降ろした後、太い鎖を使って空身で下降すべき」と教えてもらっていた。
しかし、この写真の岩場がその最難関の鎖場だったが、下り終わってから「ああ、ここだったのか」と気づくようなレベルのもので、別に重荷を背負っていても、何の問題もなかった。そして、MMも余裕で突破したのであった(雨が止んでおり、岩場が乾いていたのもラッキーだった)。
一転してゆるやかになった尾根のアップダウンを繰り返し、東屋岳の肩にある四阿宿跡を過ぎ、さらに香精山へ。ここから塔ノ谷峠までの下りは、確かに小屋番さんが言う「激下り」で、急傾斜に階段が延々と続き、疲れた足にこの下りはキツかった。
MMも足の踏ん張りが利かず、苦しそうだ。塔ノ谷峠は「山と高原地図」にはテント適地の表示があるが、かなり狭く、張るのは厳しそうだった。
塔ノ谷峠からも、ゆるやかな下りが続くが、もはやMMの足は限界に来ており、スピードが全く上がらない。それでも何とか「21世紀の森 森林植物公園」への分岐となる古屋ノ辻まで、ようやくたどり着き、私はテントスペース確保のため、先に降りることに。「山と高原地図」では下り15分と書いてあったが、かなり飛ばしてきっちり15分かかったので、20分以上は普通にかかると思っといた方が良いと思う。
なかなかトイレが現れず、「通り過ごしてしまったのか?」と大いに不安になるころ、ようやく、休憩舎とトイレが立つ平地に降り立った。しかも、すぐ近くに名水「古屋宿の水」がコンコンと湧いており、絶好のテントサイトである。
体を拭いて、MMを待つが、なかなか現れないので、迎えに行こうと思ったところで、ようやく姿が見えたのでホッとした。よく頑張りました。
今日の状況や、明日の天気予報(雨)から、明日中に熊野本宮まで一気に下りるのは無理(コースタイム10時間半余り)と判断し、ここから7時間ほどの六道ノ辻(金剛多和ノ宿跡)までのんびり進むことにした(実際は、全く「のんびり」とはならなかったが…)。
ペグがしっかり利くサイト場で、この日はフライもしっかり張る。そして、早くも17時過ぎからこの日も宴会へ。「古屋宿の水」で冷やしておいた、最後の缶ビールを消費し、今日もイイ感じでほろ酔いに… 疲れもあり、20時前には寝てしまった。そして、予報通り、夜半前から雨が降り出した…
5/4 雨後曇り
予定コースタイムが7時間ほどということもあり、この日は4時起床。小雨だったが撤収に手間取り、6時前の出発となってしまった。
MMは上下レインジャケットのフル装備だが、暑がりで蒸れを極度に嫌う私はと言うと、傘を差しただけという、何とも舐めた格好である。
この日は、ここから3時間ほどの玉置神社で水が汲めるので、2人とも500mlのみの携行。酒や食料もだいぶ減ってきたので、軽量化を実感。奥駈道に復帰するまではウザかったが、合流してからは、これまでのアップダウンの激しいルートとは異なり、結構平穏なルートであったこともあり、雨の中ではあったが、快調に進む。
玉置山まで、ほぼ車道が並行して走っているので、「車道をそのまま歩いた方が早い」と記すガイドブックもあったが、我々は奥駈道にこだわり、愚直に登山道を進む。
花折塚は、元弘2年(1332年)、熊野別当定遍の軍勢と戦い討死した、大塔宮護良親王の忠臣片岡八郎の墓所。
後年、道行く人々が、花を折って供えたところから折華塚(おりはなづか)、後に花折塚と称せられるようになったと言う。
最後、玉置山展望台の直前で、完全に登山道が消滅したため、やむなく車道を進む。玉置山展望台は休憩舎とトイレがあり、水が得られれば良いテント場になったと思うが、悲しいかな天水タンクしかなかった。浄水器持参なら、ここに張っても良いかも。
さらに車道を進むと、「世界遺産」指定を祝う大きな石碑が現れ、玉置山頂に向かう「かつえ坂」の入口が現れる。
名のある坂道だけに、かなりの急登を覚悟していたが、特に普通の登りで、あっけなく、南奥駈で一番名高い、玉置山の山頂に到達した。
別名「汐見岳」と呼ばれるだけに展望は良さそうだったが、本日は展望0。諦めて、玉置神社への急降下へ。
すぐに境内の一角となる。霧に包まれている状況が、より厳かな雰囲気を強調しているようで、境内は何とも言えない荘厳さが漂っている。
まず、玉石社が現れる。
この社は、社殿がなくご神体の玉石に礼拝する古代の信仰様式を残している。
玉置神社の基となったのが、この玉石社と伝えられ、玉石に宝珠や神宝を 鎮めて祈願したと伝わっている。大峯修験道では、玉石社を聖地と崇め、本殿に先んじて礼拝するのが習わしとなっていおり、我々もそのようにした。
玉石社から、さらに下ると社務所に出た。しっかりした水場は、ここがラストになるので、水を汲もうとしたら、「漏水により水出ません」との看板が立っており、衝撃が走るが、社務所の方が別の水道を教えてくれて、事なきを得た。私が4リットル、MMが2リットルを補給し、ザックの重量が一気に増加…
そして、本殿に参拝。紀元前三十七年第十代崇神天皇の御宇に王城火防鎮護と悪魔退散のため早玉神を奉祀したことに始まると伝えられる、名社中の名社であり、はるばるやって来たこともあって、涙ぐんでしまいそうだった…
感動はひとまず抑え、奥駈を再開。肩に食い込むザックに顔をしかめながら、進む。幸いにも、玉置神社からしばらくはゆるやかな下り気味の杣道が続く。
本宮辻で車道と出会うが、右斜めに伸びる別の荒れ気味林道を進む。しだいに林道は細くなり、いつしか登山道に変わっていた。
実はすっかり油断していたのだが、これから登る大森山は玉置山より若干高いのだ。これまでだいぶ下ってしまっただけに、大森山の前衛峰的な、大平多山へのジャンクションピークである1008mのコブまで、かなりの激登りを強いられる。予想してなかったので、滅茶苦茶疲れた。
1008m峰まで登ってしまえば、後は大森本峰、峰続きの三角点峰(大水ノ森)ともに、大した苦労なく越える。
それでも、今日も12時を回り、雨に降られ続けているので、消耗は激しい…
そして、切畑辻への下りが、「激下り」と言っても良いような急降下で、今日もハードな下りになると、MMのスピードが… コースタイムの倍近くかかってしまう。
次の五大尊岳は、急峻過ぎる余り、植林の山として利用されなかったという曰くつきの山であり、疲労はピークで発狂寸前である。
五大尊岳の山頂と思しきところに不動明王が祀られており、どうみてもここが頂上っぽいが、「山と高原地図」では、南峰が五大尊岳のピークのように記載してあり、注意が必要である。
さあ、ここからが、行仙宿山小屋の小屋番さんから「激下り」と脅かされた、急降下の始まりである。それでも傘を手放さない私は大バカ者である。皆さんはマネしないでください(笑)
ただでさえ急傾斜なのに加え、泥濘と木の根がミックスされ、どこにスタンスを取っても滑る状態。おまけにこの日はずっと雨が降っているもんだから、超スリッピィにも程がある。この私でさえ手間取る下りであるからして(傘をしまえよという話なんですが…)、MMは大苦戦となった。この間の疲労蓄積や水2リットルボッカのせいで、足の踏ん張りも利かず、中々降りてこない。「今日はこれで最後だ!」と何度も励ましながらじわりじわりと下降する。
距離的には六道ノ辻までの1/3のところで、ほぼ急降下は終わり、後はだらだらと高度を下げていく。そして最後は平坦なコルに着陸。
ここが六道ノ辻(金剛多和ノ宿跡)で都合数張分のテントスペースが広がる小平地である。やっとここまで来た! MMは、先ほどのあまりの激闘振りに、呆然と立ち尽くしている… コースタイムの倍以上かかってしまったが、無事降りられたことで良しとしよう。
この日はここで打ち止め。水を担いできた甲斐があった。折しも雨が止み、陽が指してきた! 林に囲まれた平坦なサイト地にテントを設営。ペグも良く利く、まさに野営適地である。
3日間歩き通して、ようやく熊野本宮まであと3時間半ほどに迫った。完全に射程に収めたという感じ。嬉しくて仕方がない。明日は熊野本宮をゆっくり参拝したいのと、本宮へのメインアクセスルートで大混雑が予想される紀伊田辺経由での帰洛を避け、比較的空いていると思われる、近鉄大和八木駅への日本一長い路線バスで帰る算段を立てた(温泉にも入りたかったので、十津川温泉12時14分発が最終)ため、4時には出発することとし、アルコール類で唯一残った焼酎で酔っ払い、良い気分のまま、この日も爆睡した。
5/5 曇り後晴れ
いよいよ最終日。ここまで来ると、もう少し山行が続いて欲しいとさえ思える。余裕を持って2時に起き、のんびりと4時過ぎに出発。ヘドランを装着し、まずは大黒天神岳まで、ゆるやかに高度を上げていく。今日は各自水500mlのみの携行で、食料も底をついたので、ザックが軽い〜 快調に歩を進める。
大黒天神岳の手前で明るくなってきた。ピークには三角点が埋まっているが、展望無しのため、すぐに下山開始。
この日も奥駈道は忠実に稜線を行く。相変わらずのアップダウンの繰り返しだが、もはや超えるピーク自体が300m台になっているため、体力的には楽勝。
右手下方には熊野川らしき蛇行が植林の間から垣間見えるようになってきた。
そして、七越峰手前の展望台に到着。熊野川をはじめ、旧社地跡に建つ大鳥居や、現在の社地の森等が眼下に一望だ!そして、正面に果無山脈の主稜線が広がる。
また、南西方向に目立つ山並みがあるなと思ったら、熊野の鎮山、大塔山から法師山への、いわゆる大塔山系の面々だった。正直、涙が出るかと思うほど感激してしまう。我々はついにここまでやって来たのだ! ソロも良いが、喜びを分かち合える相方がいるのも感動が増幅し、また良しである。
展望台からゆるやかに下ると、車道に合流し、良く整備された公園に出る。オートキャンプをしている方もおられた。公園を縦断し、奥の階段を登ると、今回のファイナルピーク、七越峰である。
後はハイキング気分で、ゆるやかにアップダウンを繰り返し、最後急坂を一気に下って、熊野川の畔に着陸した。川の渡渉は諦め、おとなしく備崎橋を渡って、熊野本宮大社まで30分弱ほど大きく迂回する。
人気の少ない早朝に静かに参拝する目論見だったが、9時過ぎにして境内はけっこうな賑わいとなっており、お決まりのシナ人も大量に発生していたが、何とか無事に参拝を済ますことができた。ミッションコンプリート!
本宮隣の道の駅で、我慢できず祝杯第一弾を上げてから、10時11分発の十津川村営バスで十津川温泉に異動(同じバス停から1分前に出た発心門王子経由紀伊田辺駅行きのバスは、熊野古道目当てのハイカーで超満員であり、臨時バスも出る盛況ぶりだったのに対し、我々の乗ったバスは、我々の貸切だった(笑))し、源泉掛け流しの公衆浴場「庵の湯」で5日間の汗を流す。サイコー! ちなみに連休まっただ中にもかかわらず温泉は私の独占でした…
そして、予定どおり、12時14分発の「日本一長い」路線バスで大和八木へ。余裕で座れ、4時間半後の17時前に到着という、信じられない長さの路線バスだが、けっこう寝ていたので、結果的には快適に移動でき、紀伊田辺経由より圧倒的にコスパ、体力的にも有利な移動となった。
最後は、大和八木駅前の居酒屋で反省会。大いに痛飲し、大満足で帰洛した。
参考タイム
5/2 | 前鬼口バス停 3:00 ⇒ 4:30 大滝前 4:35 ⇒ 5:10 車止めゲート 5:10 ⇒ 5:45 前鬼 6:05 ⇒ 7:40 両童子岩 7:40 ⇒ 8:30 太古ノ辻 9:10 ⇒ 9:20 蘇莫岳 9:20 ⇒ 10:15 天狗山 10:25 ⇒ 10:50 奥守岳 10:50 ⇒ 11:25 嫁越峠 11:25 ⇒ 11:50 地蔵岳 11:50 ⇒ 12:10 般若岳 12:20 ⇒ 14:00 涅槃岳 14:15 ⇒ 14:45 証誠無漏岳 14:45 ⇒ 15:30 阿須迦利岳 15:30 ⇒ 16:05 持経ノ宿 16:15 ⇒ 16:25 水場横C.S. |
5/3 | 水場横C.S. 3:50 ⇒ 4:35 中又尾根分岐 4:35 ⇒ 5:00 平治ノ宿 5:10 ⇒ 5:25 転法輪岳 5:25 ⇒ 6:05 倶利迦羅岳 6:05 ⇒ 7:15 怒田宿跡 7:15 ⇒ 7:35 行仙岳 7:35 ⇒ 7:40 白谷トンネル東口分岐 7:40 ⇒ 8:00 行仙宿山小屋 8:25 ⇒ 10:05 笠捨山 10:15 ⇒ 10:45 葛川辻 10:45 ⇒ 11:40 地蔵岳 11:45 ⇒ 13:35 香精山 13:35 ⇒ 14:25 塔ノ谷峠 14:30 ⇒ 15:25 古屋ノ辻 15:30 ⇒ 15:45 21世紀の森C.S. |
5/4 | 21世紀の森C.S. 5:45 ⇒ 6:15 古屋ノ辻 6:15 ⇒ 7:00 蜘蛛ノ口 7:00 ⇒ 7:15 横峰金剛 7:15 ⇒ 8:00 花折塚 8:00 ⇒ 8:20 玉置山展望台 8:35 ⇒ 9:05 玉置山 9:05 ⇒ 9:15 玉置神社 9:40 ⇒ 10:00 本宮辻 10:00 ⇒ 11:20 大平多山分岐 11:25 ⇒ 12:00 大森山 12:00 ⇒ 12:10 大水ノ森 12:15 ⇒ 13:15 切畑辻 13:15 ⇒ 14:00 五大尊岳 14:00 ⇒ 16:00 六道ノ辻C.S. |
5/5 | 六道ノ辻C.S. 4:15 ⇒ 4:30 大黒天神岳 4:30 ⇒ 05:40 山在峠 05:40 ⇒ 6:00 吹越山 6:00 ⇒ 6:05 吹越宿跡 6:05 ⇒ 6:40 吹越峠 6:40 ⇒ 6:55 展望台 7:00 ⇒ 7:15 七越峰広場 7:25 ⇒ 7:30 七越峰 7:30 ⇒ 8:45 熊野本宮大社 |
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