野崎島・小値賀島散策

−世界遺産の無人島を探索−

   
  

山行概要

日 程
2019年3月16日(土)
山 域
野崎島・小値賀島
天 気
曇り後快晴
メンバー
単独
コースタイム
野崎港=0:15=野崎島自然学塾村=0:15=二半岳登山口=0:30=二半岳=0:30=二半岳登山口=0:10=野崎集落跡=0:15=野崎火山火口跡=0:25=野崎島ビジターセンター=0:30=野崎火山火口跡=0:15=野崎港
旧野首協会=0:05=野崎ダム=0:15=野首海岸=0:20=野崎港【3:30】
愛宕山園地駐車場=0:05=愛宕山=0:05=愛宕山園地駐車場【0:10】

記録文(写真はクリックで拡大)

 前田さんから言われたとおり、野崎港から西へ自然学術村へ向かう。

島の南部を望む 8:11

 細い車道が断崖沿いに続いている。けっこうな高台を進むので、島の南部が一望できる。
 ゆるやかに下って、旧野首集落跡の廃校になった小学校を改修した自然学塾村へ。ここで再び前田さんと話をする。前田さんは自然学塾村の塾長だった…
 しかし話は平行線のまま…「これまで数多の名山を攻略してきた俺様を誰やと思ってんねん!」とムカついたが、何とか「行けるとこまで…」で勘弁してもらう。

旧野首協会 8:21

 自然学塾村の隣には、世界遺産構成資産内教会の旧野首協会が建つ。これを見にこの島に来たのだが、また後でゆっくりガイドしてもらえるので、ここは遠目から眺めるのみ。
 来た道を戻り、林道の最上部近くにある、二半岳の登山口へ。

二半岳登山口 8:35

 立派な標識が立っている。
 ここから階段状に整備された遊歩道が尾根通しに伸びている。

急登が続く 8:41

 道はきっちり整備されているが、なかなかの急登が続く。振り返ると、一気にドローンから見たような光景が広がる。

進入禁止ポイント 8:49

 尾根は中間部でいったんゆるやかになり、一息つける。
 事前情報通り、ビニールロープで進入禁止の箇所が現れる。当然ながらスルー(笑)
 このポイントから再び急登が始まり、確かに道も不明瞭になる。

頂上直下のお宮 9:04

 とは言え、ルートをロストするほどのことはなく、急登をしばし頑張れば、頂上台地の一角へ。
 ピークの手前にはお宮が建っていた。

頂上の展望 9:07

 西方向の眺望。小値賀島が見える。隣の島だが、平べったくこちらとは全く地形が違う。

頂上北側の地形 9:10

 ピーク北側は風が強いのか、風衡地形っぽい光景が広がっている。
 奥の山は、野崎島最高峰の平岳350m。行きたかった…

頂上北側の地形 9:28

 来た道を戻る。急傾斜かつ荒れ荒れの道なので、慎重に下る。
 途中には、野首集落跡が一望。旧野首協会も見える。

二半岳登山口に降りる 9:40

 無事林道に着陸。
 だいぶ日が射すようになり、海の青が俄然輝きを増してきた。

野崎集落の段々畑跡 9:44

 野崎港方面へ戻る。野崎集落には大規模な段々畑の跡が残る。野崎火山から吐き出された赤土の畑で、かなり良質の土だったらしい。
 石垣で整地されていたが、野生のイノシシに掘り返されて、各所で崩れてしまっている。

野崎集落跡@ 9:50

 野崎集落は、野崎島で3つあった集落のうち、最初に人が住み着き、最後まで人が残った集落で、跡残置物が生々しい住居跡が点在する。
 ここはカトリックの集落ではなく、神道を崇拝する集落であり、島の北端にある沖ノ神島神社の氏子である。

「サバンナ」を行く@ 9:57

 野崎集落跡の東の丘陵を登ると、「サバンナ」のような草原が広がる。日本とは思えないが、草原の至る所にキュウシュウジカが(笑)…

野崎火山火口跡 10:05

 草原を北に進むと、断崖に突き当たる。ここが野崎火山火口跡で、この海の底が火口だったらしい。

「サバンナ」を行くA 10:17

 再び「サバンナ」を散策しながら、ガイドの集合場所であるビジターセンターへ戻る。
 本当に日本離れした景色だ… 遠方には平戸島が見える。

野崎集落跡A 10:25

 細い路地を抜けて、ビジターセンターへ戻る。
 中通島から海上タクシーでやってきた老人5人組と合流し、ガイドの開始。
 野崎島自然学塾村の前田塾長の先導で、再び野崎集落跡に踏み入る。

野崎集落跡B 10:53

 廃屋の石垣の上の植物は綺麗に揃えられている。これは鹿の口が届く範囲の高さの植物が全て食べられてしまったもので、ディアーライン(鹿摂食線)と言うらしい。

沖ノ神島神社の神官の家 10:58

 廃屋ばかりの野崎集落の中で、1軒だけ整備された家が残っている。
 島北端の沖ノ神島神社の神官が住んでいた家で、この人が平成13年(2001年)に島を出て、野崎島は無人島になったのである。
 毎日片道2時間以上かけて、沖ノ神島神社に通っていたらしい。

野崎火山火口跡 11:23

 野崎集落から沖ノ神島神社へ続く遊歩道をたどり、また再び野崎火山火口跡へ。案内板とあずま屋が建っている。
 先ほどはサバンナから回り込んで行ったために、ここに行けてなかった。なるほどさすがにこちらの方が火口を丸ごと一望できる。

野崎港 11:42

 ビジターセンターのある野崎港に戻り、軽トラの荷台に乗り込み、前田さんの運転で、一気に自然学塾村へ。
 細い林道を猛スピードで運転されるので、剥き出しの荷台から落ちそうになり、メッチャ怖い(笑)
 そして、いよいよ学塾村のすぐ隣にある世界遺産構成資産内教会の旧野首協会へ。これを目当てに野崎島に来たのだ。

旧野首協会@ 12:01

 平戸藩の領内だった野崎島は、ここ野首と島南端の舟森の2つのキリシタン集落があり、信徒はそれぞれに木造教会を建てて信仰していたが、明治末になり、両集落の信徒が食事を切りつめながら結束して働き、本格的な教会建築に乗り出す。五島をはじめ長崎県やその周辺で多くの教会建築を手がけた鉄川与助に設計・施工を依頼し、ついに明治41年(1908年)に完成した。野首教会は鉄川与助が初めて一から手がけた煉瓦造りの聖堂である。
 野崎島の島民は最盛期には約650人もいたが、高度経済成長期になると島民が減少し、昭和46年(1971年)に野首集落のカトリック信徒6世帯31人が島を去り、教会はその機能を終えた。その後、教会は荒れ果てていたが、平成元年(1989年)に長崎県指定有形文化財に指定され、そして、平成30年(2018年)6月に世界遺産登録が決定した。

旧野首協会A 12:33

 教会としては使われてないため、教会内部はガランとしていたが、漆喰仕上げの「リブ・ヴォールト天井」(アーチを平行に押し出した形状(かまぼこ型)を特徴とする天井様式で中世のキリスト教教会の建築に多用された)が壮麗だった…
 教会内で、前田さんから野首集落や教会の歴史を説明していただき、ここでガイドは終了。

旧野首集落跡 12:33

 私は一人で周囲の散策を継続。旧野首協会が建つ旧野首集落跡も、多数の鹿がのんびりと草を食んでいる。
 教会から少し西に峠状の地形を超えると、ダムが現れる。

野崎ダム 12:40

 前田さんに事前に聞いてなかったら、「何で無人島にダムが…」と疑問に思うところだが、水資源に乏しい隣の小値賀島のかんがい用水として使用するために、平成13年(2001年)に建設された。
 「承水路」と呼ばれる雨樋のような水路で自然水が集められてダムに貯水し、海底のパイプラインを通って隣の小値賀島に送水されるとのこと。

野崎ダムからの小値賀島 12:40

 西側の堰堤からは、小値賀島が間近に…
 この間の海底にパイプラインが敷設されているのだ。

旧野首協会など 13:02

 来た道を戻り、自然学塾村前の分岐を右折し、野首海岸に下っていく。
 振り返ると、旧野首協会、自然学塾村が見える。

野首海岸 13:05

 白砂の海岸と、エメラルドグリーンの海が超美麗だ…
 前日、普通に仕事をしていたのが信じられない…
 満足して野崎港へ戻る。

さらば野崎島 15:04

 15時の便で小値賀島へ戻る。もう一度来ることはあるだろうか…

舟森集落跡を望む 15:08

 復路便は往路と違い、野崎島の南端を回り込んで、小値賀島に戻る。島の南端を回り込む際には野崎島に3つあった集落の一つ、舟森集落跡が確認できる。
 しかし、よ〜こんな僻地に住んだな〜 という地である。白い十字架も確認できる。
 舟森集落は、戦後34戸が暮らしていたが、徐々に離村者が現れ、昭和41年(1966年)に最後の住民45人が小値賀島に集団離村し、無人の地になった。

小値賀島探索スタート! 15:41

 小値賀島に無事戻ってきた。予約していたレンタカー会社の人が迎えに来てくれた。
 日没までの間、急いで島内巡りに向かう。

赤浜海岸 15:42

 まずは東へ車を走らせ、島東南部の赤浜海岸へ。遠景は野崎島。その右奥には中通島も見える。
 この赤色は鉄分を多く含んだ火山礫によるもので、小値賀島が火山だったことを示している。

地ノ神島神社 15:52

 赤浜海岸から北に向かい、地ノ神島神社へ。
 地ノ神島神社(ちのこうじまじんじゃ)は、目の前の前方湾に向かって建つ。700年代初めの創建で、航路の要衝に面していることと、遣唐船の航路が五島列島経由の南東路に変更された大宝2年(702年)に創建年が近いとされることから、遣唐使船団の航海の安全を祈って創建されたとも言われている。
 慶雲元年(704年)、対岸の野崎島に沖ノ神島神社が分祀され、2社を合わせた1社として神島神社と呼ばれた。
 鳥居の先には野崎島の北端部が… 山の中腹に沖ノ神島神社が建っているはずだが、確認できなかった。行きたかったな〜

愛宕山山頂 16:15

 島の北岸に向かい、愛宕山園地へ。芝生の園地を抜け、林の中の山頂へ。静かな山頂には祠が建てられていた。

愛宕山からの展望 16:16

 山頂直下以外は園地が広がり、展望が良い。
 画像は北側の展望。宇久島方面が一望である。

参考タイム

3/16野崎港 8:008:15 野崎島自然学塾村 8:208:35 二半岳登山口 8:359:05 二半岳 9:109:40 二半岳登山口 9:409:50 野崎集落跡 9:5010:05 野崎火山火口跡 10:0510:30 野崎島ビジターセンター 10:5011:20 野崎火山火口跡 11:2511:40 野崎港
旧野首協会 12:3512:40 野崎ダム 12:5013:05 野首海岸 13:2513:45 野崎港
愛宕山園地駐車場 16:1016:15 愛宕山 16:2016:25 愛宕山園地駐車場

山行データへ

諸国名山探訪

Copyright(C) Hiroshi Fujita All right reserved

inserted by FC2 system