十勝岳〜オプタテシケ山〜トムラウシ山縦走

−3日連続快晴のもと、憧れの縦走路を疾走!−

   

山行概要

日 程
2013年7月12日(金)〜14日(日)
山 域
十勝連峰・大雪連峰
メンバー
単独
コースタイム
7/12
吹上温泉白銀荘=1:10=十勝岳避難小屋=1:50=十勝岳=1:55=美瑛岳分岐(美瑛岳往復20分)=0:25=美瑛富士分岐(美瑛富士往復40分)=0:25=美瑛富士避難小屋C.S.【6:45】
7/13
美瑛富士避難小屋C.S.=2:15=オプタテシケ山=1:30=双子池C.S.=1:30=コスマヌプリ肩=1:45=ツリガネ山肩=1:15=三川台=1:50=トムラウシ南沼C.S.(トムラウシ山往復40分)【10:45】
7/14
トムラウシ南沼C.S.=1:00=トムラウシ公園=0:15=前トム平=0:35=コマドリ沢分岐=1:10=カムイ天上=0:30=短縮コース分岐=1:05=トムラウシ温泉【4:35】

記録文(写真はクリックで拡大)

 7/11 曇り後晴れ

 18年前にトムラウシ山からの縦走を断念してから、十勝岳〜トムラウシ山の縦走をやる機会は仕事の関係と体力的にももうないと思っていた。
 しかしこの数年、子育てがひと段落したのを機にコンスタントに山に向かえるようになり、体力が復活してきたのと、業務的にも奇跡的に6日の休みを確保できる目途が立った。
 気が付けばネットで飛行機の早割予約をクリックしており、もう後には引けない。テント山行の準備を着々と進めた。
 しかし、無謀にも今山行の一週間前に甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根からの日帰り登頂を強行し、ひどい筋肉痛になってしまった。しかも、旅立ち3日前までの旭川周辺の週間予報は壊滅的なもので、縦走の成功は半ば諦めかけていた。

 そして山旅の初日を迎える。京都市役所前6時24分発のバスで伊丹空港まで向かう。
 8時半のフライトで新千歳空港へ。2年振りの北海道は薄曇り。
 事前のネット情報どおり、到着ロビーにあるスノーショップでガスボンベを調達(特に予約はしなかったが、普通に買えた)し、11時19分発の快速エアポートに乗車。この列車は札幌でそのまま特急スーパーカムイに変わり、旭川へ直行。
 旭川には13時20分の到着。駅舎や駅前は前回来た8年前とは大きく変貌しており、びっくり。
 不要な荷物をコインロッカーに預け、しばし駅前をぶらついた後、14時26分発の美瑛行きに乗り込む。しだいに空は晴れ渡り、旭岳からトムラ、十勝岳までの連峰が車窓に展開、期待に胸が高鳴る。
 美瑛駅で接続している富良野行きの「ノロッコ号」に乗り換える。

ノロッコ号 15:02

 なぜか車内の日本人は私一人で、台湾系の中国人で一杯だった(後で上富良野駅の駅員さんに聞いたら、奴らの間で北海道観光が大ブームらしい)。
 マナーの悪さは相変わらずで、一人で苦虫を噛み潰す私であった。

吹上温泉白銀荘 17:18

 上富良野に15時37分着。駅前のスーパーで買い物をしてから、16時31分発のバスで吹上温泉に向かう。
 17時過ぎにようやく今日の目的地に到着。10時間以上かかったアプローチに少々お疲れ気味である。
 しかし、この白銀荘は素泊まりのみだが、2600円で源泉掛け流しのお湯が満喫できる、コスパ抜群のお宿である。

白銀荘前からの十勝連峰 17:18

 空はすっかり晴れ渡った。宿のテレビで天気予報を確認。何とあれだけ悪かったこの先3日間の予報がオセロのように裏返り、全て晴れに変わっていた。
 露天風呂でにんまりと十勝連峰を眺めながら、明日からの激闘に備えたのであった。

 
   

 7/12 晴れ

 いよいよ山行初日。白銀荘の玄関は4時にならないと開錠されないため、3時に起床し、朝食、準備体操等、用意万端整えてその時を待つ。窓の外にはくっきりと十勝連峰の姿が。気が逸る。
 開錠と同時にスタート。望岳台からの登山道に接続する連絡道に入る。最初は樹林帯のトラヴァースだが、久しぶりの重荷に足が前に進まない。やはりビールのロング缶×3本と焼酎500mlは余計だったか…
 しだいに木々が疎らになり、岩ゴロゴロの沢を数本横切る。大汗をかきながら、何とか望岳台からのルートに合流。下からグングン近づいてきたトレラン風情の兄ちゃんにあっという間に置き去りにされる。

十勝連峰 4:53

 20年前にも登ったルートだが、その時は日帰りだったので、全くしんどさを感じなかったのだが、今回は…
 喘ぎ喘ぎ前へ、ただひたすら前へ…

十勝岳避難小屋 5:17

 倒れこむように何とか小屋へ。いきなり標準コースタイム近くかかってしまった。先が思いやられる。
 小屋から、いよいよ本格的な急登が始まる。溶岩の裸尾根にジグザグ道が伸びる。

ガレ尾根の登りを振り返る 6:05

 何とか、最適ペースを掴んだようだ。スローながらも立ち止まることなく、着実に高度を上げる。日が当たらず、暑さを全く感じない(むしろ寒い位)のも大きい。

十勝岳が眼前に 6:34

 顕著な支尾根に登りつけば、目指す十勝岳が目の前だ。しばし、平坦な砂の台地を進む。
 平坦な台地が終わり、十勝岳直下の壁に突き当たる。いよいよ最後の登りだ。

美瑛岳 7:00

 だいぶ体が楽になってきた。目の前の山頂目がけて快調に進む。
 美瑛岳と肩を並べる高みまで到達。目を凝らせば、右奥にはトムラの勇姿が…

十勝岳山頂からの富良野岳 7:11

 結果的にはコースタイムを1時間余りも短縮して十勝岳に到着。20年振りの登頂である。
 薄雲がかかってはいるが、展望は最高。道内中央部の山々をはじめ、道東の雄阿寒雌阿寒岳まで見渡せた。
 写真の富良野岳の背後には夕張岳(左)と芦別岳の姿も…

十勝岳を背に 7:53

 のんびり休憩してから、いよいよ美瑛岳への縦走にかかる。ここからは全くの未踏ルートである。
 火星のような砂と岩のみの世界を進む。余りにだだっ広く、目印も少ないため、ガスに巻かれたらなかなか怖そうなところである。

美瑛岳へ 7:55

 平ヶ岳付近を通過中。手前の鋸岳の東斜面を巻きながら、美瑛岳へ近づいていく。

十勝岳、鋸岳 8:33

 鋸岳の直下を巻いた後、大きく下る。西側は爆裂火口壁に沿っているので、足元は切れ落ち、凄い迫力である。
 写真は十勝岳、鋸岳を振り返ったところ。しだいに植生が見られるようになってきた。

美瑛岳 8:37

 爆裂火口が正面に迫ってきた。火口の縁に沿ってなおも進む。

地上の楽園 9:01

 火口の縁を半分ほど回り込んだ辺りから、イワウメやツガザクラなどの咲き乱れるお花畑が出現。目の前にはオプタテシケ山とトムラウシ山も広がり、思わずしたり顔で佇む私。

美瑛岳分岐 9:27

 大岩が目立ってくると美瑛岳分岐に到着。ここでザックをデポして美瑛岳へ向かう。
 美瑛富士(左)とオプタテシケ山が正面に。

美瑛岳からの十勝岳 9:40

 すっかり十勝岳は遥か後方へ。2日目のコースタイム15時間にばかり注意が行ってしまっているが、初日も9時間半というなかなかの行程なのである。

美瑛富士分岐 10:30

 美瑛岳分岐から岩ガラガラの急斜面を転がり落ち、美瑛富士分岐へ。
 さっきは余裕で見下ろしていた美瑛富士が一転目の前に聳え立つ。だいぶ疲れてきたが、ピークハンターとしてはパスする訳に行かず、山頂ピストンへ。
 ルートは地図では点線のとおり、あまり踏まれてはいないが、迷うほどでもない。空身なので快調に駆け上がる。

美瑛富士 10:58

 美瑛岳の迫力が凄い。だだっ広いピークでしばし休憩。

オプタテシケ山 11:10

 秀麗なオプタテシケ山もだいぶ近づいてきた。明日の激闘を前に武者震い。
 分岐まで小走りで戻る。やっぱり荷物が無いと体が飛ぶように軽い。

雪田のトラヴァース 11:38

 本日のラスト区間である、美瑛富士避難小屋までの巻き道を行く。
 途中、大きな雪田のトラヴァースがあり、悪天時は対岸のルートファインディングに要注意である。

美瑛富士避難小屋 11:58

 とりあえず本日の作戦終了、と思いきや、水の確保に右往左往することに。

 今年は残雪豊富かつ、まだ7月中旬なので、余裕で確保できると高を括っていたが、小屋前には水たまりしかなく、ボウフラが浮きまくっているなど、今回持参した浄水器を使っても躊躇するほどの汚さであった。
 仕方がないので、美瑛富士山頂から見下ろした時に見えていた天然庭園からのルート沿いにある大きな雪渓まで行ってみることに。
 10分ほど下ると大きな雪渓に出くわすが、雪が残りすぎていて流れが全然ない… それでも水がないと話にならないので、標高的に100m以上下り、やっとの思いで水の流れる音を発見し、雪渓が崩れる恐怖に慄きながら、何とか4リットルを確保し、疲れ果てた体に鞭打って泣きながら小屋に戻ったのであった。あ〜しんど。
 この日は、私に他にはテント3張り、小屋に2名の宿泊があったようだが、トムラまで行く物好きは2組だけで、しかも1日で抜けようと考えている身の程知らずはやっぱり私だけだった…
 小屋横にテントを張り、簡単な夕食をとってから、明日の激闘に備え、15時過ぎには寝ていた。目覚ましは狂気の1時半セットである…

 
   

 7/13 霧後晴れ

 予定通り目覚ましが1時半に鳴動する。いよいよ決戦の日である。外を覗いてみると、何と辺りは濃密なガスに覆われている。しかも稜線は暴風が吹き荒れているようだ…
 とりあえず行けるところまで行こうとこれまた予定通り3時に出発。この時期の北海道なら3時にはぼんやり明るくなっているはずだが、濃密なガスのせいで、ヘッドランプが必要である。小屋前の道を拾い、すぐに稜線に出るが、体がよろめくほどの暴風が吹き荒れており、慌てて自慢の新素材ネオシェルを採用したジャケットを羽織る。
 常に濃密なガスが西から東側へ吹き荒れ、体の左半分がぐっしょりと濡れる。本当はザックカバーも付けたかったが、風で飛んでいきそうだったので、断念した。
 石垣山の東側を巻いてベベツ岳に向かうが、現在地点は全く把握できないまま闇雲に進んでいる。ベベツ岳付近と思しき辺りからハイマツのブッシュが濃くなってきたので、今度はネオシェルパンツを装着。余談だが、このパンツイギリスの「Rab」というブランドのものだが、しなやかでとても歩きやすい。
 いつしかヘッドランプは不要になっていた。時折、頭上には太陽の輪郭が浮かび上がるので、恐らくガスはこの稜線すれすれの所を覆っているのだなと分かるが、晴れる気配は全くなし。
 ベベツ岳と思しきポイントからゆるやかに下り、登り返しが始まる。現在地把握が正しければ、オプタテシケ山まで標高差300mの急登である。尾根もしだいに痩せてきた。時折暴風で体が吹き飛びそうになるので、気を遣う。
 そして、その時がついにやって来た。辺りが急に明るくなる。

前方にオプタテの姿が… 4:53

 キター! 嬉々としてペースを上げようとするが、オプタテの最後の登りは超急登。息が続かず、すぐにペースダウン…

十勝、美瑛岳方面 5:25

 あっという間にガスは飛ばされ、快晴の空が出現。
 ここまでコースタイムを1時間以上も短縮し、先ほどの陰鬱な気分はどこやら、気分上々である。

そしてトムラへ向かう 5:33

 ここから先はエスケイプ不可能。トムラまで歩きとおすほかない。しかもヒグマの楽園である。若干の躊躇はあるが、この最高のコンディションを前に足を止めることはできない。
 意を決して、オプタテシケ山を後にする。

オプタテシケ山を振り返る 5:40

 少し進んだところの小ピークから振り返る。もう戻れない。
 この小ピークから眼下の双子池まで標高差600mの激下りが始まる。ストックをフル活用しながら慎重に下っていく。

激下りを前に 5:58

 遥か眼下に双子池辺りの平坦地が見える。
 それにしてもトムラ(右奥)は遠いな…

雪渓上部に到着 6:20

 崖のような下りを20分ほどで雪渓の最上部にたどり着く。写真では高度感が良く分からないが、標高差は300m以上はあろうか。ネット情報でその急傾斜は想定していたが、予想範囲の最悪レベルで、さすがに足がすくむようだ。
 最上部はアイゼンがいるかどうか微妙な感じだったが、せっかく持ってきたので、ここで軽アイゼンを装着。
 一度スリップしたらとてもじゃないが止まりそうにないので、一歩、一歩慎重に下る。
 中段ほどで傾斜は弱まり、以降、雪渓末端まで鼻歌まじりで下る。

雪渓下りを終える 6:46

 いや〜 よく下ってきました。しかし、完全にもう戻れない…

双子池C.S.付近からのオプタテシケ山 7:05

 雪渓からぬかるみの道をしばらく進むと、テントスペースが数箇所現れる。この辺りが双子池C.S.かと思うが、ヒグマがいつ飛び出してきてもおかしくない雰囲気で、とてもじゃないが一人でここに泊まる気にはなれなかった。
 振り返るオプタテの聳え具合が凄い。逆コースもとてもやる気になれず。

 ここからがこのコースの本領発揮である。とにかく細かいアップダウンが多く、体力の消耗が激しい。ルートははっきりしているが、微妙な背丈のハイマツ&笹が覆い、ヒグマの恐怖に怯えながらの行軍となる。
 双子池からハイマツの海を漕ぎ、ゆるやかに登る。傾斜はゆるやかなはずだが、すでにだいぶ消耗しており、ペースが上がらない。この快晴で気温も上がっており、標高も1600前後をウロウロとするため、さすがに北海道とは言え、暑くなってきた。

カブト岩を越えて 7:44

 いったん平坦な台地を進む。途中、カブト岩と呼ばれる巨石があり、岩の中をくぐって突破。
 1668ピークへ再びゆるやかに登っていくが、息が続かず、立ち止まってしまうこともしばしば。水の消費も一気に進む。

1668ピークにて 8:25

 ここで500mlに小分けしていたスポーツドリンクが一本空いた。
 トムラはなかなか近づいてこない。あ゛〜とんでもないコースに入ってしまった。
 ここからコスマヌプリ肩との鞍部で、初めて2人組とすれ違う。トムラ南沼からのスタートということなので、ほぼ中間地点でのすれ違いである。かなりの健脚と見た。

コスマヌプリ肩にて 8:49

 鞍部から少しの登り返しでコスマヌプリの肩。ピークまでの踏み跡があれば行こうかとも思ったが、ハイマツのブッシュがひどくて断念。
 この先も細かなアップダウンが多そうだ。

縦走は果てしなく続く 9:03

 コスマヌプリから次の無名峰を目指す。ルートは手前の小ピークの東側直下を巻いていく。
 背後には兜岩(さっき潜り抜けて来たカタカナのカブト岩とは別物)や三川台周辺の平坦な台地も見えている。遠い…

1591ピーク直下の雪渓 9:15

 あまりの暑さにチョロチョロ流れる雪解け水でタオルを濡らし、頭に装着。生き返りました。
 ネットでは6月下旬にこの雪渓で滑落した方がおられたみたいで、確かにスリップしたら遥か下方まで滑落必至で、多少は緊張したが、この暑さで雪がぐちゃぐちゃになっており、ズボズボとステップを深めに取りながら、特に問題なく通過した。

コスマヌプリを振り返る 9:22

 雪渓を越えてから一息入れる。この辺り稜線の北西側は切り立っているが、南西側はゆるやかな高原が広がっている。どっぷりと山に囲まれ、幸せすぎる。

縦走路をチェック@ 9:25

 前景が1558ピーク、中景がツリガネ山、そして最奥がトムラウシ山。
 しかもトムラへはツリガネ山から左に急旋回し、三川台を経て迂回するように向かうので、距離は見た以上にある…

縦走路をチェックA 9:25

 前の写真から左手に連なる景色。三川台が正面に。あそこまで行けば楽そうだが、三川台は標高1750mなのに対し、ツリガネ山からいったん1500mの鞍部まで下る必要があるのだ。

刈払われている縦走路 9:25

 1558ピークまでは割と緩やかなルート。この辺りの縦走路は綺麗に刈払われており、ノーストレス。
 前トムラウシ山(左)、ニペソツ山を眺めながら進む。

1558ピークにて 10:03

 ツリガネ山が正面に大きく立ちはだかる。トムラは見えなくなった。
 ツリガネ山もピークは踏まないが、代わりに左側のとんがりピークをガッツリ登っていくので、巻く意味が全くない。

オプタテを振り返る 10:34

 ツリガネ山手前の小ピークでしばし休憩。すっかりオプタテは遥か遠くへ。人間の足は偉大だ。
 ツリガネ山へもそんなに急登ではないのだが、いかんせん、行動時間が7時間を超え、当方がかなり疲れてきた。数分ごとに立ち休憩を入れないと歩き続けられないという体たらく。
 しかも灼熱地獄。さっき濡らしたばかりのタオルも速攻乾いてしまった。スポドリの消費量が半端ない。水は2.5リットルほど担いできているが、既に1リットル消費してしまった。

ツリガネ山が迫る 10:34

 右がピークだが、これには登らず、左側の尖峰を越えていく。この登りがキツかった。
 左奥にはトムラの一部が見える。

ツリガネ山の西肩にて 11:00

 急登に泣きながら到着。体力と水の消耗が激し過ぎる。が、これでトムラを阻んでいた全ての前景を撃破した。
 とは言っても、これから三川台へ大きく迂回するのだが…
 ルートは手前のコブの左下を巻いた後、一気に下っていく。

三川台へ 11:05

 行く手の平坦な台地にたどり着くにはいったん大きく下って、250mの登り返しが必要だ。鎖場も現れる急坂を下っていく。
 脚への負担を減らすため、ストックをフル活用する。今山行で腕の筋肉はパンパンになったが、脚は無傷だった。ストックの効果絶大なり。

ツリガネ山を振り返る 11:09

 最低鞍部付近にある小平地からツリガネ山を振り返る。

兜岩 11:10

 そしてここからは、兜岩が格好いい。
 いよいよ、消耗しきった体には酷すぎる登り返しが始まる。
 登りもきついが、ハイマツの背が高く風が通らないのに閉口。この辺りの体感気温が一番高かったこともあり、大汗をかかされる。何度も立ち止まってしまう。

ツリガネ山(左)とオプタテシケ山 11:47

 ある程度登るとハイマツの背が低くなり、風が通るようになってきた。ルートもゆるやかになり、目指す三川台が一歩一歩近づいてくる。

三川台下の雪渓とトムラ 12:03

 何とか三川台まで一気に登り切るつもりだったが、途中のサイト場近くの雪渓に吸い寄せられるように休憩。
 ここで雪を突っ込んだスポドリ500mlを一気飲み! エキノコックスが怖かったが、もうそんなことを言っている状況ではなかった。とにかく咽喉が渇いた、暑かったのだ!
 再び意を決して歩き出す。僅かだが急な壁を一気に登り、ついに平坦な台地へ到達。

三川台から表大雪 12:30

 ついに到着。フラフラの頭の中で、なぜか「宇宙戦艦ヤマト」の序曲が鳴り響く。
 広大な台地の彼方に旭岳の姿が… 感無量である。

三川台から崖下を見下ろす 12:41

 三川台から南下のユウトムラウシ川源流部を見下ろす。残雪と池沼が点在する楽園が広がる。ヒグマにとっても楽園でしょうね。
 ここまで来たら、後は絶景の中をのんびりと進むだけだ。今までは迂回したりとすんなりと近づいてこなかったトムラウシが、今は一歩一歩確実に近づいてくる。

トムラウシへ 12:45

 三川台の崖に沿ってトムラウシへ向かう。周囲の景色の素晴らしさは今更ながら夢の中にいるようだ。
 しだいに花の姿も目立ってくる。

お花畑 13:04

 チングルマの大群落が登場。踏跡の細い所では、足の踏み場に困るほど。

三川台を振り返る 13:36

 写真を撮りまくっているので、ノロノロ進んでいるつもりだが、ルートが平坦なので距離はあっと言う間に稼げる。
 振り返れば、三川台がかなり遠ざかっていた。

トムラへ最後の登り 13:49

 しだいに傾斜が強まり、周囲はロックガーデンのようになってきた。なかなかの急登だが、心の余裕に加え、標高が再び上がり涼しくなってきたこともあり、しんどさはあまり感じない。

南沼を越えて 14:24

 雪がべったりと残る南沼から、キャンプサイトまでかなりの急登となるが、勢いで突破。
 南沼の背後には越えてきた山々が勢揃いで、感慨深い。

ついに到着 14:28

 予定では16時頃の到着かなと思っていたので、なかなか順調にたどり着くことができた。また、もっと体がボロボロの状態になるかとも思っていたが、案外、普通であり、残りスペースが僅かとなったサイト地で手際よくスペースを確保し、テントを設営することもできた。

 サイト地は雪解け水が豊富に流れる。この2日間ヒーヒー言いながら、何とかここまで運んできたとっておきの缶ビールロング缶2本を流水に投入する。
 十数分後、目の前のトムラを凝視しながら、キンキンに冷えたビールで乾杯!!! あ〜よくここまで来たなあ〜 ホンマに涙が出ました。
 すっかり酔っ払い、満腹だったが、相変わらず好天なので、今日中にトムラに登ることに。千鳥足でリスタート。

キャンプ場を俯瞰 17:01

 この時間になっても、次から次へと下から上がってくる。スペースが足りず、雪渓上にテントを張った人もいた。

オプタテシケ山 17:06

 辿って来た山並みの遥かさよ。酔っぱらっているせいもあって、ハイテンションで進む。

トムラウシ山 17:42

 時間のせいもあり、頂上は私の独占。18年振りの登頂である。あの時は遥か彼方のオプタテシケ山を呆然と眺めていたが、今回も同様である。違うのは今回はオプタテシケ山からやって来たことだ。前回、漠然と縦走を考えたが、まさか実現できるとは。感無量である。
 だいぶ肌寒くなってきたが、岩陰に身を寄せながら、周囲の展望を満喫。

私の寝ぐら 18:04

 今回初めて実戦投入した、ビッグアグネスのフライクリーク2。二人用としてはやや手狭だが、単独行では十分。
 この時期の北海道は20時近くまで暗くならないが、疲労から明るいうちに寝た。
 明日は白雲まで行こうかとも思ったが、残雪でキャンプサイトが雪上との情報を得ていたのと、過去に歩いていることもあり、あっさりトムラウシ温泉へ下山することにした。
 念願のオプタテシケ山〜トムラウシ山縦走をやり遂げたので、達成感が褪せることは少しもなかった。

 
   

 7/14 霧後晴れ

 4時過ぎから周囲が騒がしくなり、うつらうつらとしていたが、4時半頃に起き出し、朝食のラーメンを食べてから、テントを撤収。強風で一人での格納にやや苦労する。
 6時過ぎにスタート。トムラウシ温泉からJR新得駅までのバスが16時発しかないのは知っていたが、温泉でのんびりしたかったので、早めのスタートとなった。

下山開始 6:26

 霧が辺りを覆っていたが、昨日と同様、いずれ晴れそうな状況。岩と雪とハイマツのどこを見ても日本庭園のような光景の中をのんびり下っていく。

こちらも残雪豊富 6:46

 下ってきた所を振り返る。さすがにトムラウシ山へのメインルートで日帰り可能なルートだけあって、この時間でもう登ってくる人がいる。この後三ケタ以上の登山者とすれ違う。さすがに百名山である。

トムラウシ山 7:07

 トムラウシ公園付近から振り返る。ガスが切れトムラの全貌を仰ぎ見る。雪渓の左端を降りてきた。
 威風堂々としたトムラを間近で眺められるのはここら辺りで最後なので、十分に目に焼き付ける。

前トム平 7:28

 さらに緩やかに下って、前トム平へ。下から次々と登山者が登ってくる。
 ここから右下方のコマドリ沢目がけて、一気に下っていく。

コマドリ沢の下り 7:53

 500m近く雪渓の下りが続く。私はステップを崩さないよう、トレースのない部分でずっと滑りながら下ったので、楽ちんでコマドリ沢を一気に下った。
 分岐から以前の沢沿いの旧道と分かれ、短区間だが急登で山腹まで一気に登る。確かに前回雨の中下った時は、増水したコマドリ沢に随分とシゴかれたものだ。

水平道からのトムラ 8:52

 水平道まで上がってしまえば単調な下り気味のトレールが続く。気温も上がってきてだんだんしんどくなってきた。
 トムラは完全にここで見納めだ。

十勝連峰 9:03

 右端、ギリギリ見えるオプタテシケ山から十勝連峰が一直線に連なる。十勝の山々もここで見納めだ。

石狩岳 9:12

 カムイ天上分岐の手前辺り。標高1300mを切ったのにまだ豊富に残る残雪の背後には石狩岳が。
 カムイ天上辺りで完全に樹林帯に入り、爽やかなライトグリーンの新緑?の中をどんどん下っていく。
 短縮コース分岐を羨望の目で見つめながら、さらに下る。

トムラウシ温泉登山口 11:00

 ルートを遮る倒木に何度か悩まされながらも、ついにトムラウシ温泉に到着。最後の最後、登山口に羆の巨大な糞を発見。これが逆コースだったら、一気に行く気が無くなっていたところだった…

 一軒宿の食堂で、一人で縦走成功の祝杯を上げ、カツ丼で至極のひとときを過ごす。その後はゆっくりと源泉掛け流しの温泉を満喫しする。
 16時発のバスまでテントや寝袋を干したり、ドロドロになった登山靴を洗ったりして、のんびり過ごす。
 新得駅では旭川行きの高速バスに接続しており、21時前には旭川に到着することができた。駅前のカプセルホテルを確保し、海鮮料理を満喫。翌日も札幌市内で1日中、海鮮物を喰いまくって、発散しまくったのでありました。

参考タイム

7/12吹上温泉白銀荘 4:054:30 九条武子歌碑 4:304:40 白銀荘分岐 4:405:15 十勝岳避難小屋 5:206:15 支尾根 6:157:10 十勝岳 7:309:25 美瑛岳分岐 9:309:40 美瑛岳 9:5010:00 美瑛岳分岐 10:0510:30 美瑛富士分岐 10:3010:55 美瑛富士 11:0511:20 美瑛富士分岐 11:3011:55 美瑛富士避難小屋C.S.
7/13美瑛富士避難小屋C.S. 3:005:15 オプタテシケ山 5:256:15 雪渓上部 6:257:05 双子池C.S. 7:058:15 1668ピーク 8:258:45 コスマヌプリ肩 8:559:15 1591ピーク直下の雪渓 9:1510:00 1558ピーク 10:1010:50 ツリガネ山肩 11:0012:00 三川台下C.S. 12:1512:30 三川台 12:4014:30 トムラウシ南沼C.S. 16:5517:20 トムラウシ山 17:5018:05 トムラウシ南沼C.S.
7/14トムラウシ南沼C.S. 6:107:10 トムラウシ公園 7:157:30 前トム平 7:308:05 コマドリ沢分岐 8:109:20 カムイ天上 9:259:55 短縮コース分岐 9:5511:00 トムラウシ温泉

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