熊野古道伊勢路その8(尾鷲〜賀田)

−西国一の難所と言われた八鬼山越えにチャレンジ!−

   

山行概要

日 程
2016年5月4日(祝)
山 域
熊野古道伊勢路
天 気
快晴
メンバー
単独
コースタイム
JR尾鷲駅=1:05=八鬼山越え登り口=0:25=駕籠立場=0:50=九木峠=0:20=八鬼山=1:05=三木里海岸=0:45=三木峠=0:45=羽後峠=0:25=JR賀田駅【5:40】
熊野市役所=0:20=木本神社=0:30=鬼ヶ城城跡=0:15=松本峠=0:25=熊野市役所【1:30】

記録文(写真はクリックで拡大)

 昨日に続き、2016GW熊野古道伊勢路シリーズ後半戦の2日目。通算5日目である。前夜は尾鷲市役所の駐車場で豪雨となる中、熟睡…
 本日は、いよいよ西国一の難所と言われた八鬼山越えである。熊野古道伊勢路では、昨年に先行して歩いた区間(相賀〜尾鷲)の続きとなる。途中で行き倒れた巡礼者は数知れず。行程のハードさでは、文句なく熊野古道伊勢路bPであろう。
 今日は、コースタイム約8時間の長丁場となる、JR賀田駅まで足を延ばす予定で、まずは、賀田駅に向かい、駅近くの駐車場に車を止める。

尾鷲の町並みを歩く 6:23

 5時23分発の始発で、尾鷲に5時45分に戻ってきた。昨年に歩いた馬越峠越えの続きを歩む。昨晩は土砂降りの豪雨だったが、すっかり回復した快晴の下、6時に駅をスタート。尾鷲の渋い街並みを抜けていく。
 JRの線路を越えると、矢浜街道の標識に従い、民家の間の細道を辿る。火力発電所の敷地の横を通過し、矢ノ川を渡って、しばらく川沿いに河口方面へ進むと、尾鷲節の歌碑が建っている。

尾鷲節の歌碑 6:56

 三重県を代表する民謡、尾鷲節の「八鬼山道 ままになるならあの八鬼山を鍬でならして通わせる」と歌詞が刻まれている。江戸時代後期、八鬼山を隔てた三木里浦の庄屋の娘・お柳と、矢浜村の宮大工の弟子・喜久八の悲恋を唄ったものである。
 歌碑の所から、巨大な石油タンク群を横目に見ながら、八鬼山目指して登っていく。しばらくで八鬼山越えの登り口が現れ、他の熊野古道伊勢路の登り口と同様、立派なトイレと駐車場が整備されている。ここから世界遺産登録ゾーンとなり、古道が始まる。

石畳が続く 7:24

 しばらくはゆるやかな道であるが、やがて石畳が続き、傾斜も増してくる。
 すぐに巡礼供養塔が建つ。この先も2基ほど確認できるが、この1基目は、茨城からの巡礼者がここで行き倒れたのを地元民が弔ったものという。 次は、「駕籠立場」が現れる。紀州藩主が街道を通行するときに乗っている駕籠を止めて休憩したところである。私も一息入れた後、さらに石畳を登る。
 しかし、この石畳の世界遺産登録ゾーンは総延長7.5キロに及ぶ。よくこれだけ石畳を整備したものだ。いったん林道を横切ると、さらに傾斜が増す。
 いよいよ最大の難所である、「七曲」の急登ゾーンに入った。名の通り、九十九折れの石畳が約280mも続く。登り自体も当然しんどいが、昨日の雨で濡れた石畳が滑ることこの上ない。私は登りなのに、滑って転んで、手に裂傷を負ってしまった…

九木峠の直下の登り 8:23

 何とか「七曲」を突破すると、いったんゆるやかになるが、再び急登となり、これをこなせば、九木峠。
 信長方の水軍として、毛利水軍を撃破するなど、近畿圏の海を制した、九鬼水軍の本拠地である、九鬼集落への道を分ける。峠から九鬼の港町と熊野灘が見下ろせる

茶屋跡に建つ八鬼山日輪寺へ 8:33

 ここまで来ると八鬼山越えは近い。九木峠からゆるやかに登っていく。この辺り稜線近くを行くので、「登山」そのものだ。途中、荒神堂茶屋跡に到着。すぐ隣には1300年の歴史を誇る八鬼山日輪寺が建っており、お堂(荒神堂)の中には「三宝荒神立像」がある。
 この荒神堂は、西国三十三カ所第一番札所の「前札所」として、八鬼山越えの巡礼者が道中の安全を願って参拝したほか、太平洋戦争中は武運長久を祈願して賑わった場所らしい。

八鬼山 8:45

 そして、ついに標高627mの八鬼山に到着。最高点は、古道から少し離れた巨石のところ。樹林に覆われ、展望は得られないが、何か、いつもやってる登山以上に山に登った気がした、充実の登行だった。
 八鬼山越えを下る。すぐに、江戸道と明治道に分かれるが、新しいはずの明治道はほとんど歩かれず、荒れているらしい。世界遺産登録も江戸道の方なので、迷わずこちらへ。

「さくらの森エリア」からの眺望 8:51

 江戸道を少し下ると、「さくらの森エリア」と呼ばれる園地に飛び出す。芝生の広場が整備され、東屋も立つ。前方に熊野灘が全開だ。少し休憩。 園地から、登り程ではないが、石畳が現れる旧道をどんどん下って行く。
 平坦地である十五郎茶屋跡で一息つくが、ここから「槍かたげ」と呼ばれる急降下が始まる。この由来は急坂なため、お供の行列は槍も担いで登ってよいことになっていたことから来ている。
 ここでも石畳が滑りやすく物凄くやっかいだ。慎重に下り切り、沢筋に出ると、明治道と合流。やれやれだ。

名柄側も石畳は続く 9:38

 さらに石畳が続くが、先ほどと比べ、傾斜が緩いので滑る心配はあまりない。
 それよりも、この辺りの山主が、世界遺産登録に反対なのか、植林の木々に、白ペンキで反対する趣旨の言葉が、至る所に書き連ねられており、雰囲気ぶち壊しで残念…

八鬼山を振り返る 9:57

 猪垣が残る箇所を過ぎると、名柄の集落に降り立つ。目の前には三木里海岸が広がる。

三木里海岸 10:14

 海岸の青さがあまりに美しかったので、ここで大休止。日差しが強烈だ。
 何にしても八鬼山越え達成! 行き倒れることなく良かった。
 さあ、続いて、三木峠越えだ。と言ってもこちらは標高120m程なので、楽勝と思っていたら、この辺りから、右足のくるぶしが痛くなってきた。それにこの日は気温も急上昇。熱中症になりそう…

ヨコネ道を行く 10:57

 よろよろとR311を進む。三木里海岸を半周ほどした辺りで、「ヨコネ道」と呼ばれる道の分岐が現れる。この「ヨコネ道」もそうだが、三木峠・羽後峠越えの熊野古道は、完全に廃れていたのを、近年、地元の人たちが発掘し、再整備してくれたらしい。
 「ヨコネ道」は、ほぼ国道と並行してトラヴァースする森林浴コース。涼しくて気持ちが良い。
 いったん国道に合流するが、すぐに三木峠登り口で。ここから再び世界遺産登録ゾーンになる。

三木峠からの展望 11:25

 少しだけ残る石畳がを辿ると、すぐに三木峠に登り着く。近くに展望台があり、三木里海岸が一望できる。 三木峠からしばらく下るとR311に出て、次の羽後峠の登り口までしばらく辿る。登り口からまた世界遺産登録ゾーン。何度か農道と交差しながら、羽後峠へ。

羽後峠 12:15

 羽後峠からの下り道は、脇に延々と猪垣が続く。この辺りで最長らしい。
 どんどん下ると、賀田五輪塔に出る。

賀田五輪塔 12:35

 この五輪塔は、尾鷲市内では最古の記銘のある江戸初期の中型五輪塔で、地輪に「寛永十八辛巳年十月八日、地、慈長道喜禅定門、淡州…」と刻まれており、淡州以下は風化のため判読しがたいが、おそらく淡路出身という意であると言われている。
 この五輪塔の北方に秋葉山がある。秋葉山は静岡県大居村の秋葉神社が本社で、防火の神として崇敬され、室町時代から江戸期にかけて、盛んに地方に浸透し、その分社が作られた。賀田の秋葉山もその一つで、小高い丘に鎮座し、賀田を火災から守ったという。
 地輪の戒名(かいみょう)位の「禅定門」からみて、賀田秋葉山を開山か中興(ちゅうこう)した修験者と思われる。

賀田に到着 12:40

 五輪塔から少し下ると、賀田の集落に到着。まだ13時前だったが、足も痛いし、車も止めておいたので、ここで本日は終了。明日のゴール目標である。JR熊野市駅へ車を走らせる。

 駅前にコインパーキングもあったが、熊野市役所の東裏に無料の駐車場があると聞いていたので、ここが、本日のねぐらになった。
 足は痛いが、まだ日は高い。時間がもったいないので、世界遺産の鬼ヶ城まで歩くことにする。
 熊野古道でもあった、熊野市の古い街並みを抜け、北端の木本町へ。木本町は、江戸時代に紀州徳川家の本藩公領地として「奥熊野代官所」が置かれ、熊野地方の中心地として栄えた町である。そして、木本神社に寄り道。

木本神社 13:56

 木本神社は、もともと「若一王子権現」といい、例大祭では、木本町の各地区から様々な山車が出されて“暴れ神輿”の異名をもつ御神体が鎮座する神輿のお供をしながら町内を練り歩くという。
 熊野古道松本峠への登り口があるが、行きは歩行者専用トンネルでスルーし、涼しいトンネルで鬼ヶ城入口へ。ここで失敗。鬼ヶ城に行かず、鬼ヶ城城跡に登るルートに入ってしまった。

鬼ヶ城城跡 14:35

 疲れた体にはキツい急登を経て、鬼ヶ城城跡に登ったのは良かったが、肝心の鬼ヶ城をすっきりと見下ろすことができず、もう足が痛いので、下るのも諦め、松本峠への遊歩道に入る。細かなアップダウンがあるが、下りでは激痛が走る状況で、顔を歪めながらの苦行である。

展望台からの七里御浜 14:45

 何とか、東屋の建つ展望台へ到着。雄大な七里御浜が見渡せた。さらに我慢しながら少し下ると、熊野古道に合流、松本峠である。建ったその日に妖怪と間違えられて鉄砲傷をつけられてしまったという、大きなお地蔵様が建っている。
 明日も歩くであろう、石畳を激痛に耐えながら何とか木本町へ下る。相当消耗して、車へ戻り、今度は町なかに2軒ある銭湯のうち、「ときわ湯」さんへ。足が痛いのに、町なかを行ったり来たり…

熊野市内の激渋銭湯「ときわ湯」 15:34

 渋い佇まいだが、350円で、下から蒸すタイプのサウナと水風呂を堪能できる。1日の汗を流し、さっぱりする。

「肴屋しんたく」さんで今宵もフィーバー!@ 17:51

 さあ、風呂上りはビールでしょう!
 予約していた「肴屋しんたく」さんに始業と同時に飛び込む。すぐに満席となった人気店で豪遊!

「肴屋しんたく」さんで今宵もフィーバー!A 18:01

 熊野牛のステーキ!

「肴屋しんたく」さんで今宵もフィーバー!B 18:49

 ぶりカマ!
 今宵もグダグダ… またもや駐車場で爆睡… こんなんで明日大丈夫か?…
 翌日の行程(熊野古道伊勢路その9(賀田〜熊野市))へ。

参考タイム

5/4JR尾鷲駅 6:007:05 八鬼山越え登り口 7:057:30 駕籠立場 7:358:25 九木峠 8:258:45 八鬼山 8:508:50 さくらの森エリア 9:0010:05 三木里海岸 10:4011:25 三木峠 11:3012:15 羽後峠 12:1512:40 JR賀田駅
熊野市役所 13:3513:55 木本神社 14:0014:30 鬼ヶ城城跡 14:3514:45 展望台 15:0515:10 松本峠 15:1015:35 熊野市役所

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