千国街道(塩の道:南小谷〜信濃森上)

千国街道(塩の道:南小谷〜信濃森上)


【日 程】1993年5月4日(火)
【人 数】単独
【天 気】快晴
【コース】JR南小谷駅=0:15=坪山=0:40=源長寺=0:45=牛方宿=0:20=前山百体観音=0:15=松沢薬師堂=0:15=落倉水芭蕉園=0:05=風切地蔵=0:15=おかるの穴=0:15=切久保=0:35=JR信濃森上駅【3:40】

【記録文】
 松本から早朝の大糸線で一路北に向かう。ようやく天候も回復し、白銀に輝く北アの峰々を常時仰ぎながらの快適アプローチ。蓼科山を2日前に終えてから松本で燻っていただけに、嬉しさもひとしおである。早く歩きだしたいと気は焦るが、それを嘲笑うかのように、列車はのんびりと進む。それでも今日の出発地、南小谷駅には9時過ぎに到着。パンと紅茶だけを購入し、準備体操もろくにせぬまま、出発。
 塩の道へは一旦国道148号線を北に200mほど向かい、そこで西側から合流してくる細い車道に入る。少し直進すると塩の道の標柱が現れ、それに従い左の山道に進めば、いよいよ街道歩きの始まりである。坪山の集落まではジクザクの急坂。雨上がりのせいかぬかるみがひどく、ジョグシュでの歩行に苦労する。一気に坪山まで登りきると、いかにも鄙びた山村が展開し、『来て良かった』と、しみじみと思う。
坪山付近にて坪山付近にて
 坪山集落の庚申塔に寄り道をした後、先へ進む。ここからは山裾のトラヴァースとなり、塩の道の雰囲気がグッと強まる。街道は山桜や雑木林の新緑に彩られ、また視線を上げれば白銀の山々、下げれば静かに佇む石仏群といった具合で、最高の舞台設定を見せる。小土山、大別当と山間の集落を快調に通過し、雪解け水で奔流が迸る黒川沢のほとりで大休止。大きく深呼吸をし、今この場所に自分がいる幸せに浸る。ここから少しの登りで源長寺。寺の前には三十三観音が並ぶ。それぞれ微妙に表情が違い、思わず見入る。
 次の千国諏訪神社からは暫く車道を進む。車道と言っても交通量は少なく、両側の町並も古いので、旧街道の情緒はたっぷりで退屈することはない。車道が右に直角にカーブすると、千国番所跡。そのまま真っ直ぐ親沢に沿って直進し、庚申塔のすぐ先で親沢を渡ると、馬頭観世音の石仏群が現れる。ここから再び山道となるが、親坂と呼ばれる石畳の急登である。牛つなぎ石、錦岩などのポイントに目を配りつつも、あえぎながら登る。途中弘法清水で一息つくも、今度は清水坂が待ち構えている。ようやく着いた牛方宿からは東北の彼方に雨飾山が顔を覗かせてくれた。ここから街道は前山の山裾をたどるようになるが、ぬかるみがひどく、難渋する。
前山百体観音前山百体観音
 ぬかるみをなんとか突破すると、ようやく親の原の一角に到着。前方には白馬をはじめとする後立山連峰の大観が屏風のごとく広がってくる。特に不帰〜五竜岳のスカイラインが素晴らしい。おもわず見とれてしまう。完全に右手に気をとられながら進むといつのまにか前山百体観音が目の前にある。名の通り百体の観音さまがズラリと並ぶ様は壮観。民宿、テニスコートが乱立する親の原をゆるやかに下り、松沢のバス停へ。ここから車道歩きとなり、薬師堂から落倉へゆるやかに登る。落倉の水芭蕉園でじっくり水芭蕉を観賞してから、なおも車道を南進する。風切地蔵から再び山道となり、またしてもぬかるみのひどい道を急降下し、楠川を渡ると、おかるの穴。案内板にはおかるにまつわる悲しげな伝説が記載されていた。ここからまたもや車道に戻り、切久保まで坦々と続く。それでも後立山の峰々を常に前方に仰ぎながらの歩行であり、全く飽きない。切久保の諏訪神社に参拝の後、森上駅まで車道を緩やかに下る。途中、何度も後立山連峰を振り返ったのは言うまでもない。


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