皇海山

− 残雪により鋸山コースを断念 六林班峠からの往復ロングコースにへとへと −

   

山行概要

日 程
1989年4月30日(日)〜5月2日(火)
山 域
足尾山塊
メンバー
M、私
コースタイム
4/30
わたらせ渓谷鉄道通洞駅=TAXI=銀山平(かじか荘)=0:50=天狗の投石=0:15=一ノ鳥居=0:25=鏡岩=0:10=蛙の夫婦岩=0:30=庚申山荘【2:10】
5/ 1
庚申山荘=1:55=六林班峠=0:10=女山=1:20=鋸山=1:35=皇海山=1:40=鋸山=1:05=六林班峠=1:40=庚申山荘【9:25】
5/ 2
庚申山荘=0:50=一ノ鳥居=0:50=銀山平(かじか荘)【1:40】

記録文

 4/30 晴れ
 一ノ烏居までは林道を行く。単調な道も鮮やかな新緑で紛れる。

庚申七滝にて

 林道終点となる一ノ鳥居から庚申川に沿って少し寄り道すると、庚申七滝が現れる。

 いよいよ水ノ面沢に沿った登山道となるが、緩やかな登りなので夜行明けの体でも楽勝。ジグザグ道の途中には鏡岩、カエル石などの奇岩が散在し、庚申山荘直前には太刀の立つ神社跡もあり、退屈しない道である。山荘は庚申山岩壁直下の疎林帯中にぽつんと建っていた。

庚申山荘

 新装なった山荘は2階建てで寝具もあり快適である。

 山荘には先客が7人ばかり。今の百名山ブームからすれば当時は信じられない静けさである。この人たちに話を聞くといずれも皇海山を目指したらしいが、みんな鋸山で撤退していた。しかも庚申山途中の鎖場が崩壊しているらしい。僕らはこの時点でほとんど皇海山を諦めたが、それでも登頂の可能性を少しでも残すため、当初往路に予定していた庚申山経由のコースをとりやめて往復とも六林班峠経由のコースに変更した。
 その夜は2人とも緊張してあまり寝られなかった。

 5/1 曇り後雨
 4時起床。空はどんよりと曇っている。いかにも無気味だ。そそくさと朝食の準備を済ませ、5時前には出発する。
 登山道は六林班峠まで延々とトラヴァースを続ける。登りは殆どないが谷を1つ1つ巻いて行くので、意外と長く感じる。道のあちこちに鹿の糞をみかけ、昨夜トイレに行ったときに鹿を見たのを思い出す。この地がいかに山深いか再認識する。残雪は峠の少し手前から現れ始め、峠では30pはある。峠からは両毛国境主稜を北に向かう。道は急に踏跡程度になり、地形図と見比べながら慎重に前進。左手には赤城山武尊山などが見渡せるが、目指す皇海山は鋸山に隠れて全く見えない。笹の生い茂る斜面を登りきると三角点のある女山。むろん標識などない、静かなピークだ。このころより小雪が舞いだす。鹿の悲しげな鳴き声が響きわたる。登頂意欲が急速に減退し、どっと疲れを感じる。
 女山からは1度コルに下ってから鋸山へ登り返す。かなりの急登でしかも残雪のため非常に登りにくい。笹をつかみながら必死に登る。もう2人の間には『鋸山で撤退』という暗黙の了解が出来上がっていた。しかし、その企ても鋸山頂に着いたと同時に崩壊する。

鋸山から皇海山を望む

 今まで巧妙にその姿を隠し続けていた皇海の膨大な山体が忽然と我々の眼前に現れたのだ。この瞬間、我々の胸中に皇海山への攻撃心がメラメラと再び燃え上がったのである。

鋸山にて

 鋸山で軽食をとり、皇海山へ向かう。皇海山へは一度急斜面を最低鞍部まで200m急降下し、そこから400m登り返さねばならない。
 僕らは覚悟を決め、アイゼン、スパッツを装着した。

 鋸山からの下りはスッパリと切れ落ち、1回スリップしたら止まりそうにない。慎重に下降する。下りきった所から鋸山を見上げると灰色の空をバックにした岩峰が無気味に聳え立っている。ここから小ピークを1つ越える。途中『ガサッ』という音と共に今度はカモシカが1頭、目の前の斜面を駆け上がって行った。もうこの辺りまで来ると人間の匂いはほとんどない。途中の1901ピークを最後に今まで雪面上に細々と続いていた踏跡も完全になくなり、ここからは地形図だけが頼りだ。尾根をはずさないように周囲を見渡しながら、雪面を進む。
 しだいに登りが急になり、皇海山への直登部分にさしかかったことを知る。倒木が目立って多くなり、ほとんど発狂しながらまたぐ。見通しがきかないので、現在地をつかみにくいが、そこは自分の読図能力を最大限に生かしきる。どうやらピークへは至近距離のようだ。気力をふりしぼり、最後の急登へ。簡単な岩場を1つ越えると、疎林に囲まれた皇海山の清麗な頂が待っていた。

皇海山にて

皇海山頂の庚申講青銅剣を前に

 まるで約束されていた行為のように握手をどちらからともなく交わす。2人共、ただ、ただ感無量であった。特に個人的には宿願の山であり、ピークに立ってこれほど感激したのは久し振りであった。

皇海山からの鋸山、背後に袈裟丸山

 帰りのことを思うと、登頂の余韻に漫ってばかりもいられない。鋸山の鋭くそそり立つ様にもうげんなりである。
 軽食を軽くとっただけで、先程苦労して登って来た道を下降する。

 次第に高くなる鋸山を恨めしく思いながらも、黙々と下る。最低鞍部でまた鹿を3頭見る。もう感覚が麻痺して何の感動も覚えない。最後の鋸山への直登をほとんど泣きながら登りきり、ピークで2人してへたりこむ。我々の疲労度と歩調を合わせるように、天候も小雪から雨に変った。追われるようにピークを後にし、アップダウンの多い尾根を六林班峠へ向かう。横殴りの雨にずぷ濡れになりながら、足を惰性で動かし、進む。
 一度歩いているのに、風景がほとんど変わらないので、何度かニセの峠に騙されながらもようやく六林班峠にたどり着く。ここで大休止。きゅうりを1本づつかじる。結局、今日は昼食をとる暇がなかった。雨が小雨に変わり、今日初めてホッとする。最後は気力だけで庚申山荘を目指し、トボトボと歩を進める。山荘に戻った時には既に16時になっていた。我々2人は夕食も食わずに、シュラフの中に潜り込んでしまった。

 5/2 晴れ
 6時に自然起床。小屋のテラスに出てみると、昨日の荒天が嘘のように爽やかに晴れ渡っている。

庚申山荘テラスにて

 そして我々も爽やかに?テラスで朝食をとる。
 腹を満たし、2人とも満ち足りた表情で、もときた道を戻る。

帰路の一ノ鳥居

 来たころより若葉の緑が増したようだ。快調なペースで歩き、銀山平のかじか荘には正午前に到着。
 充実した山行後の温泉入浴、そしてビールは格別であった。

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諸国名山探訪

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