八ヶ岳縦走(麦草峠〜阿弥陀岳)

−谷川岳に比べ、なんと涼しいことか! やっぱ、夏は高山ですな−

   
赤岳からの阿弥陀岳 赤岳からの阿弥陀岳

山行概要

日 程
2002年8月9日(金)〜10日(土)
山 域
八ヶ岳連峰
メンバー
単独
コースタイム
8/ 9
JR茅野駅=BUS=麦草峠=0:25=白駒池=0:50=ニュウ=0:40=中山峠=0:35=東天狗岳(西天狗岳往復15分)=0:15=根石岳=0:30=夏沢峠=0:30=本沢温泉【4:00】
8/10
本沢温泉=0:45=夏沢峠=0:40=硫黄岳=0:40=横岳=1:05=赤岳=0:25=中岳=0:25=阿弥陀岳=1:10=御小屋山=0:45=美濃戸口【5:55】

記録文

 8/9 曇り一時雨
 湯治を兼ねたお気楽八ヶ岳縦走。いつものことだが、関西から中央東線に向かう場合、「ちくま」を使うと、塩尻駅での2時間のロスが痛い。駅近くのコンビニで何とか時間をつぶす。

霧流れる麦草峠

 茅野からガラガラのバスで麦草峠へ。薄曇りの峠は少々肌寒い程の涼しさ。ここで標高約2100m、前回の谷川サウナ連峰の最高峰、仙ノ倉山の標高を既に超えている。

 峠周辺の草原を通過し、北八ツ特有の深い森の中へ。ルートは2人が並んで通れる位。やはりメジャーな山域は、整備状況が全く違う。森を抜ける涼風も心地よく。谷川で汗とブッシュに涙した状況とは雲泥の差である。
 坪庭風の所を過ぎ、軽く登り降りをこなすと、前方、木々の隙間から眩い光が漏れてくる。白駒池は近い。

白駒池

 早朝かつ平日の池畔は誰もおらず、ひっそりとしていた。北八ツの池に来ると、周囲の森が深いためか、空がとても広く感じられる。ボート乗り場の桟橋でしばし休憩。

 今回コースは色々と迷ったが、以前から名前が気になっていたニュウ経由で登ることにしている。おもしろいのは、道標の表記が何通りもあること。「ニュウ」、「にう」、「ニュー」、「乳」!? (個人的にはやはり「乳」がよろしいですな…)
 森がさらに濃密になる。静かな針葉樹の森。吾妻連峰もこんな感じだったか。しだいに傾斜が増してくる。稲子岳の火口壁に突き上げると、すぐ左にこじんまりとした岩峰が見える。これがニュウです。大して登った感じはしなかったが、眼下の白駒池ははるか下だ。

ニュウから佐久方面(中央は御座山)を望む

 ニュウからは佐久方面が真正面。特に御座山がこれだけ立派に見えるとは思わなかった。やっぱり回り道をしてでも登って良かった。しばらく岩頭でのんびりする。

 中山峠に向かう。火口壁に沿って進むが、相変わらずの深い森のため、壁沿いの実感は無い。ガスが出てきた。木々の間にじわりじわりとガスが浸入してくる。大したアップダウンが無いため、まさに森を彷徨っているような状況。
 中山峠からは尾根伝いに進む。急に周囲の木々がまばらになり、風をモロに受けるようになる。寒いので慌てて雨具を着て登り続ける。今日初めて「登り」と言えるような傾斜となる。最後は岩混じりの尾根になるが、風が無茶苦茶強く、時折体が浮きかける程。
 天狗岩の基部を巻いて少し登ったところが東天狗の山頂。寒くて休めない。悲惨な天気だが、すぐに西天狗に向かうあたりがピークハンターの性である。大きくたわんだ鞍部は気持ちよさげな草原だが、素通りして急なザレを登り返せば、三角点の埋まる西天狗のピークである。ここも長居できる環境ではなく、仙ノ倉山に引き続き、ただ踏んだだけの200名山登頂となってしまった。
 東天狗に戻り、根石岳へ。やせた岩稜を少し下ると、あとはどこが尾根か分からないほどのなだらかな稜線となる。強風はここで最高潮に達した。とてもじゃないが真っ直ぐに歩けない。いくら涼しい方が良いと言ってもこれはやり過ぎ。傍から見たら不自然なほどフラフラしながら、何とか箕冠山の分岐に逃げ込む。ここからは再び北八ツらしい樹林帯となり、今までの強風が嘘のようにピタッと止んだ。

夏沢峠

 ゆるやかに下って夏沢峠。開けた地形で強風も復活。風力発電の羽が潰れそうな位の高回転で回っている。風を避けて山彦荘横で昼食をとる。

 もう後は温泉まで下るだけ。塩尻のコンビニで買った牛カルビ弁当とビールでさっきの悲惨な登頂はどこやら、すっかり良い調子である。
 ほろ酔い状態で本沢温泉へ下る。足許はふらついているが、完璧なルート整備で助かった。下るにつれて漂ってくる硫黄臭が期待を高める。野天風呂が見下ろせるポイントを過ぎると、俄然足早になり、山中とは思えない立派な造りの本沢温泉に到着した。
 すぐさま宿泊手続き(贅沢にも個室に泊まった)を終え、まずは内湯に浸かる。野天風呂とは微妙に泉質が異なるようだが、白濁した湯はいかにも効きそう。循環したり、水増ししているようなエセ温泉とは違う、「何も足さない、何も引かない」まさにホンマモンの温泉である。
 引き続き歩いて5分程の野天風呂(宿の主人は「露天」ではなく、「野天」と強調していた)に入ろうとしたが、雨が降ってきたので、昼寝で夜行の疲れを取った。
 16時頃に目が醒める。雨は止んでいたので、勇躍野天風呂へ。

最高! 本沢温泉の露天風呂

 沢沿いの畳1枚分ほどの湯船。脱衣所もあるが野ざらしである。ガスに煙る硫黄岳の爆裂火口を見上げながらの入浴は野趣満点! あ〜来て良かった!

 30分後に来た怖いもの知らずのオバハン連中から混浴を要求されたが、丁重にお断りし、小屋に戻った。金曜日のせいか、この日の宿泊客は少なく、夕食後も内湯を1時間以上独占し、久しぶりにのんびり過ごすことができた。

 8/10 晴れ
 美濃戸口13時過ぎのバスに余裕で間に合うよう、3時40分に起床。15分後に出発という単独行ならではの素早い行動。満天の星空に安堵しつつ、懐中電灯を片手に歩き出す。寝起きでボーッとしていた頭も30分位歩いてやっと目覚めたような感じ。夏沢峠は、一般的に八ヶ岳の南北の境界線とされているとおり、硫黄岳へ向かうとすぐに森林限界となり、アルペン的な光景が広がる。爆裂火口の縁を朝日を浴びながら登る。昨日ほどではないが、今日も風が強く、おまけにこっちはTシャツ&短パン姿なので、寒すぎる。

硫黄岳の登りから振り返る北八ツ

 広大すぎる硫黄岳は8年振りの登頂。展望は最高! 赤岳〜阿弥陀岳の迫力ある姿がすぐ目の前。これからあそこを歩むのだ。昨日登った天狗岳もようやく確認することができる。
 ここから南八ツのメインルートを行く。硫黄岳石室までゆるやかに下る。周囲は大量のコマクサが咲き乱れている。8年前より増えているようだ。

横岳からの奥秩父

 小屋から岩混じりの尾根を急登し、簡単な岩場を一つ越えると、横岳(奥ノ院)のピーク。富士、奥秩父、佐久の山々を眺めながら(西側は風が強く、寒くて座っていられない)、今日初めて食べ物を口にする。

横岳頂上

横岳からの赤岳、阿弥陀岳

赤岳が近づく

 もう赤岳は目の前である。見た目は厳しい岩稜が続くが、完璧にルート整備されているので、全く問題なく通過。メインコースだけあってすれ違う人が多いが、譲り合いながら通過し、赤岳石室へ。

三叉峰を通過

 ここから赤岳へは岩盤の超急登。足下がしっかりしているので、普通の山道よりよっぽど登りやすい。故に一気に山頂へ。頂上小屋でビールを仕入れてから三角点で乾杯!

赤岳からの権現岳

 ピークからは日本中の山が丸見え。目につく山はほとんど登ってしまった。赤岳は自分の足跡を確かめるには中部で一番適当な場所だろう。しばらく思い出に浸ってみる。

赤岳頂上にて

 まだ8時。体調が良いのか、地図の標準タイムが大甘なのか、かなりのマージンを確保、さらに余裕を持って歩くことができる。権現岳にも惹かれたが、今回は阿弥陀岳に向かおう。こけたら止まらないような、急な下りである。下からバンバン登ってくるので、石を落とさないよう気を使う。前回よく夜行明けでこんな登りをこなしたもんだと思いながら下ると、文三郎道の分岐に到着。ここからは再び未踏のルートとなる。中岳へは分岐から少し下ってからの登り返し。大した登りではない。
 少しガスってきた。ガスのベールの向こうに見える阿弥陀岳は絶好調の体調をもってしてもたじろいでしまうほど、タワーのように聳えている。意を決して進む。阿弥陀岳との鞍部に降り立つ。ますます阿弥陀は高くなる。一気の登りが始まる。腰を降ろすような所はないので、とにかくピークまで登らないといけない。両手両足を動員した激闘の末、今日初めて汗だくになってピークに到着。今までの登りが信じられないくらい平坦なピークである。残念ながら完全にガスに覆われてしまったので、展望はなかったが、登った実感のする本格派のピークだった。
 何か遠くで雷鳴がしたような… 長居は無用と下山開始。一般的には中岳との鞍部に戻り、赤岳鉱泉から美濃戸に下るのが定石だとは思ったが、阿弥陀岳からそのまま美濃戸方面に下ったほうがルート的には一番合理的な気がしたのと、尾根好き、縦走好きという指向のせいか、御小屋尾根を下ることにした。
 マイナールートだけあって、阿弥陀岳の直下はもの凄い状況。さっきの登りと同じ位の急傾斜な上に、さらにこっちはザレ気味で、下降と言うよりは、石と砂と一緒にズリ落ちるという状態。下から3組ほど上がってきていたが、すれ違うまでこちらからは危なくて動けないような状況。全員をやり過ごしてから、思う存分ズリ落ちた。

御小屋山目指して下る

 一気に下ると、樹林帯に入り、後は御小屋山まで打って変わったなだらかな尾根歩き。これはこれで快適だが、今日くらいに調子が良いと、なかなか高度が下がらないので、多少はウザい面もある。御小屋山にもニセピークに2、3回惑わされての到着。

 ピークのすぐ下で、ルートは2本に別れるが、最短の北尾根コースをとる。分岐にはルート不明瞭と標識が上がっていたが、そんなことはなく、踏跡ははっきりしていた。一気の下りで車道に飛び出す。ここから美濃戸口まで、15分ほどの車道歩きを要し、これが結構辛かった。
 美濃戸口には当初のゲームプランより2時間も早く到着。11時過ぎのバスにぎりぎり間に合ったが、風呂に入って、食事もしたかったので、ゆっくりと次の13時過ぎのバスで帰ることにした。それでも京都には18時に帰ってくることができた。

参考タイム

8/ 9麦草峠 07:0508:15 白駒池 08:2008:45 稲子湯分岐 08:4509:10 ニュウ 09:2009:50 中山分岐 09:5010:00 中山峠 10:0510:40 東天狗岳 10:5011:00 西天狗岳 11:0511:10 東天狗岳 11:1511:30 根石岳 11:3011:40 箕冠山分岐 11:4012:00 夏沢峠 12:4013:10 本沢温泉
8/10本沢温泉 03:5504:40 夏沢峠 04:4505:25 硫黄岳 05:3005:40 硫黄岳石室 05:4006:10 横岳 06:2507:10 赤岳石室 07:1507:35 赤岳 08:0508:20 文三郎道分岐 08:2008:30 中岳 08:3508:40 行者小屋分岐 08:4009:00 阿弥陀岳 09:0509:20 休憩 09:2509:55 水場分岐 09:5510:20 御小屋山 10:2510:55 車道出合 10:5511:10 美濃戸口

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