十勝岳(登頂失敗編)

十勝岳(登頂失敗編)


三段山から見る十勝岳〜上ホロカメットクのパノラマ


十勝岳温泉周辺の紅葉と上ホロの新雪 十勝岳温泉周辺の紅葉と上ホロの新雪


日 程1992年9月22日(火)
山 域十勝連峰
メンバー男2人
天 気快晴
コースタイムJR上富良野駅=taxi=十勝岳温泉=0:20=安政火口分岐=1:10=三段山=0:40=コル=1:00=OP尾根途中
=0:40=コル=0:50=三段山=1:00=十勝岳温泉【5:40】

 昨日は斜里岳の登頂に失敗した我々。今日こそは、と上富良野駅からタクシーを奮発してやる気満々で十勝岳温泉へ。下界では濃霧だったが、温泉に着くころにはその濃霧は雲海と化し、完璧な快晴となった。が、見上げる十勝の稜線は真っ白。アイゼンもスパッツもなく、しかも足下は軽登山靴という完全に遭難予備軍である。しかし、昨日の敗退があるためか、2人とも撤退する気はさらさらない。なおもひどいことに、コースもほとんど下調べをしていなかったため、一番距離的に十勝のピークが近いだろうという安直な理由から、急峻な三段山コースを選んでしまう。
 まずは遊歩道を安政火口分岐まで進む。この辺りは紅葉の盛りで、稜線とは別世界である。分岐から三段山へのコースに入る。小沼を過ぎると通称「崖尾根」と呼ばれるきつい登りが始まる。まだこの辺りでは雪は所々に残っている程度。一気に高度を上げる。稜線に出ると傾斜は緩まるが、雪を踏みしめての登行になる。
 三段山山頂に到着。ここまでは雪の影響はほとんどなかった。それよりもなんという光景か。すぐ目の前に十勝連峰の主稜が白銀というよりは青白く妖しく光る。行く手のOP尾根は雪と岩の崖にしか見えず、どこがルートなのかさっぱり見当がつかない。我々の装備、事前の計画不足から、どうみても普通ならここで撤退という状況だが、あまりの快晴と、昨日の撤退、また、はるばる北海道までやって来たことなど、種々の状況が絡み合い、この時点で引き返す考えは全く浮かんでこなかった。(昨日の斜里岳も一時こんな精神状態だった。)


三段山から下ったコルにて 三段山から下ったコルにて


 いきなりルートは不明瞭になる。雪の張り付いた岩稜を慎重に下る。一転しておだやかな小平地のコルに降り立つが、振り返る三段山は鋭い岩峰となって聳えている。そして行く手のOP尾根だが、三段山以上の傾斜で「壁」にしか見えない。ここまで近づいてもどこを登るのかさっぱり分からない。ここで私は「もう潮時かな」と今日初めて弱気になったが、悪いことに先行者のトレースを見つけてしまい、また安易に先に進んでしまう。
 このトレースも夏道どおりなのか良く分からないが、「壁」を一直線に登っている。下部は雪がある程度積もっているので、滑り落ちる不安はないが、上部は傾斜がさらに強まり、雪がほとんど付いていない岩壁となっており、フリーでは危険すぎる。先行者も「壁」の最上部で立ち往生しており、最後はずり落ちるように、我々の辺りまで戻ってきた。この時点で昨日と同じく「もうや〜めた!」(決断が余りにも遅すぎるが…)しかし、この下りは本当に大変だった。結局、我々もまともに降りることができずに、ずり落ちで何とか安全圏まで下った。コルの平地が天国に思えたのは私だけじゃなかっただろう。


「壁」の下りで難渋する 「壁」の下りで難渋する


 帰りの三段山からもう一度十勝の山並みを目に焼き付ける。何度見ても怖いくらいに美しい。絶対また来ると誓い、十勝岳温泉へ戻る。(念願の登頂は翌年の7月に達成した。)
 バスの時間まで温泉に浸かってのんびりと過ごし、この日は昨日約束したとおり札幌で再集合し、ジンギスカンの後はひたすらヤケ酒をあおったのであった。
 翌日(最終日)も爽やかに晴れ渡ったが、二日酔いとモチベーションがいま一つ上がらないこともあって、札幌周辺をうろうろとして無駄に過ごしてしまった。

 9月でも何気に雪が降る北海道の怖さを十分に認識した不完全燃焼の山旅だった。


   

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