大雪連峰縦走

−3度目の挑戦でついにトムラウシ登頂、悲願の縦走達成−

   

山行概要

日 程
1995年8月6日(日)〜9日(水)
山 域
大雪連峰
メンバー
りかさん(♀)、きよみ(♀)、私
コースタイム
8/6
黒岳七合目=1:05=黒岳=0:15=黒岳石室(桂月岳往復25分)=1:15=北海岳=0:50=白雲分岐(白雲岳往復45分、小泉岳往復25分)=0:20=白雲岳避難小屋C.S. 【5:20】
8/7
白雲岳避難小屋C.S.=1:50=忠別沼=0:35=忠別岳=1:15=五色岳=0:55=化雲岳=0:55=天沼=1:00=北沼=0:25=トムラウシ山=0:20=南沼C.S.【7:15】
8/8
停滞
8/9
南沼C.S.=0:55=前トム平=3:10=トムラウシ温泉【4:05】

記録文

 8/5 曇り
 新千歳に着陸した我々は、札幌をすっ飛ばし、一気に旭川へ。ボンベ等の買出しを済ませ、層雲峡に入る。明日からの長丁場に備え、キャンプ場でぐっすりと眠った。

 8/6 晴れ後曇り
 始発のロープウェイに乗るため、5時半過ぎには並びに行ったが、すでに何人も改札口に並んでおり、6時には長蛇の列と化していた。
 何とか始発の便に乗り込むことができ、さらにリフトを乗り継ぎ、6時半過ぎには出発することができた。

良い天気です。

 ニセイカウシュッペ山をバックに登る。
 天気も良いし、順調に進む…と書きたいところですが、肩に食い込む重荷のため、あっと言う間に汗だくになり、軽装の観光客にバンバン抜かれていく。

黒岳山頂

 結局黒岳までコースタイム以上かかってしまい、先が思いやられるが、山頂からは表大雪ののびやかな展望が広がり、ようやく北海道の山にやって来たという実感が湧いてくる。

桂月岳から烏帽子岳(左)、黒岳石室(中)を望む

 少し下った石室でザックをデポして桂月岳のピストンの後、ビールの誘惑に勝てず、その場で3本、さらにザックに3本を格納してしまう。このため、さらに肩に食い込むザックを背に、ふらつく足どりで北海岳に向かうはめになる私であった。

北海沢渡渉点付近にて

 いったんゆるやかに下り、北海沢を渡る。この辺り高山植物の大群落が続き、その都度しげしげとそれを眺める我々の行程は全く捗らない。

北海岳から白雲岳へ向かう

 北海岳には11時着。前方には、広大な北海平の向こうに白雲岳が城塞のようにそびえ立っている。
 まるで散策のように白雲の山裾を楽しみながら通過し、これまた広々とした白雲の鞍部へ。

白雲岳ピークを背に

 最初はザックをデポするつもりはなかったが、人が多いので、羆に持って行かれる心配はないと思い、空荷で白雲と小泉の2峰をピストンする。

白雲岳にて

 白雲からの展望は素晴らしく、目指すトムラは見えなかったものの、高根ヶ原の広大な空間が明日の期待を自然と高めてくれた。

白雲岳ピーク直下にある平坦地

 ピークの直下には野球も十分出来そうな広場がありました。

白雲分岐で見かけたキタキツネ

 ザックのデポ地に戻ってみると、キタキツネが物色しようとしていた。危ない危ない。
 今日の目的地白雲のサイト場には3時に到着。すでに25張ほど張ってあり、ほぼ満員状態であった。

 8/7 曇り時々晴れ後雨
 4時起床、5時発。どんよりと曇ってはいるが、見通しは効いている。サイト場からゆるやかに下っていくと、高根ヶ原の一角に降り立つ。

高根ヶ原からはるかトムラを望む

 目指すトムラは地平線のはるか彼方に見える。それにしても、あくまで平坦なこの花の縦走路はどうだ。本州の山では考えられない広潤さに感激しながら、快適に進む。

白雲岳を振り返る

 遠くに見える景色がどんどん近づいてきます。

忠別岳頂上にて@

 忠別岳の特徴的な岩頭を目の前に。バックは大雪最高峰の旭岳。

忠別岳頂上にてA

 忠別岳8時着。トムラ頂上部の王冠部分はまだまだ遠い。

忠別岳を振り返る

 忠別岳避難小屋への分岐にて。こちらから見るとなかなか豪快な山です。

化雲平からのトムラ

 結構しんどい登り返しを経て五色岳を踏み、まさに天上の楽園のような化雲平を通過し、ピークに顕著な大岩のある化雲岳には11時半着。だいぶトムラが近づいてきたが、皆だいぶへばってきたようだ。

化雲平からのトムラ

 化雲岳でランチをとり、目の前のトムラに向かってさらに歩を進める。

天沼にて

 ヒサゴ沼への分岐を分け、大きく登り返すと天沼の畔に着く。辺りは日本庭園のような佇まい。トムラの王冠が目前に迫る。標高点1995へはガレ場の中のかなりの急登。

トムラへの最後の登りは岩ガラガラ

 そこらじゅうから「ピィッ、ピィッ」という鳴き声がするなと思った瞬間、ナキウサギとばったりご対面。わずか5秒ほどの間だったが、これにより気力が再び充実し、この急登も難なくこなす。

急登を突破するともうトムラのピークはすぐそこに

 ガレ場を抜けると、急に傾斜はゆるやかになり、トムラのピークが手招きしている。

北沼にて

 北沼の畔で最後の休憩をとり、トムラへ最後の1本。岩ガラガラの斜面でかなりしんどい。この登りの間、大げさだが山登りを始めてからの12年間が色々と頭に浮かんでは消えた。12年間で3度挑戦し、いずれも敗退した山の頂がすぐそこにある。最後の大きな岩を越えたところに、ピークがおもむろにそこにあった。

念願のトムラ頂上にて

 さすがにヘナヘナと座り込んでしまう。やっぱり涙がでてしまった。連れの女2人に見つかると恥ずかしいので、キャップを深めにかぶったが、すでにばれていたようだ。ここまでボッカしたとっておきの缶ビールを開ける。「グビグビ…」これまでの人生で最高のビールが喉に染み渡る。

オプタテシケ山、十勝岳を望む

 すっかり落ちついてから、やっと周囲の景色に目が行き出す。何よりもまず白雲の遠さよ! 良くここまで歩いてきたものだ。そして反対側にはオプタテシケ山の迫力ある山容が素晴らしい、その奥には最終目的地の十勝岳もわずかに顔を覗かせている。大満足のうちにピークを後にし、滑りやすい斜面を慎重に下り、南沼のキャンプ指定地には15時半に到着。長い長い1日だった。
 夕方から雨が降りだした。明日は大丈夫だろうか…

 8/8 雨
 雨は降り止まない。天気図をとるが北海道から東北にかけてべったりと停滞前線がはりついている。1日中トランプで過ごす。

 8/9 雨
 今日も雨が降り続いている。9時の天気図をとってもほとんど状況は変わっていない。このまま待っても十勝は無理と判断し、急遽トムラウシ温泉への下山を決定する。
 土砂降りの中9時半に撤収を完了し、下山開始。辺りは真っ白でいかにも羆が出そうで怖い。笛を吹き鳴らして、がむしゃらに下降する。前トム平から急斜面をこなすとコマドリ沢に降り立ち、以後この沢に沿って下って行くが、増水しており、かなりシビアな状態である。膝上までつかることもしばしば。昨日停滞中にトムラウシ川で地元の新得山岳会が遭難したことをラジオで聞いたのを思い出し、羆の恐怖と相まって、ヒヤヒヤものの下山であった。
 何とかルートが沢筋を離れ、カムイ天上まで登り返せば、後はおきまりの下り一方となり、トムラ温泉へ駆け下りる。
 結局1回も休憩を取らないまま、全身ずぶぬれとなって14時ジャストに温泉にたどり着いた。(1枚も写真を撮れなかった)
不幸にもバスがすぐ出るということで、温泉には入れず、そのまま新得駅に出て、駅前の旅館に泊まった。

 8/10 曇り
 新得から富良野線経由で旭川に戻り、デポしてあった荷物を回収。きよみさんとは今日でお別れ、残った2人は市街で思い思いの時間を過ごした後、夜は毛蟹でフィーバー!! 生きててよかった。

 8/11 曇り
 明日は羊諦山に登ろうと漠然と考えてはいたが、単に電車で比羅夫まで南下するのも面白みがないので、レンタカーを借りて、観光しながら南下することに。
 何を思ったかいきなり北上し、名寄からさらに北の美深町の松山湿原に立ち寄る。

松山湿原にて

 標高はそんなにないのに、大規模な高層湿原が広がるあたりはさすが北海道です。

朱鞠内湖にて

 美深に戻り、R275を南下、途中、朱鞠内湖の湖畔を通過。関西の人間がおいそれと来れるところではありません。
 R239で日本海に出て、以後海岸沿いに南下。

白銀の滝にて

 増毛海岸は断崖が続く。雄冬岬近くの豪快な白銀の滝でしばし休憩。長距離ドライブで腰が痛くなってきた。
 石狩町を越え、小樽に着く頃にはとっぷりと日が暮れた。結局余市の次の仁木でギブアップ。駅前の駐車場で車内泊。疲れました。明日の羊諦山は大丈夫かな…

 トムラは結局4度目の正直で登れました。しかし、オプタテシケ山はついに登れませんでした。
 トムラ〜十勝の縦走は必ずやります。たとえ何年かかっても…

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