−ガイドさんの力を借りて、高所恐怖症を克服、悲願の縦走達成−
山行概要
2004年7月30日(金)〜8月2日(月) | ||
北アルプス | ||
4人(Oさん、Aさん(共に♀)、私+ガイドの島田さん) | ||
新穂高温泉=ROPEWAY=西穂高口=1:00=西穂山荘【1:00】 | 西穂山荘で停滞 | 西穂山荘=0:50=西穂独標=1:05=西穂高岳=1:10=間ノ岳=1:05=天狗のコル=1:30=ジャンダルム=1:10=奥穂高岳=0:40=穂高岳山荘(涸沢岳往復25分)【7:55】 | 穂高岳山荘=2:05=渡渉ポイント=0:45=白出沢出合=0:35=穂高平=0:35=新穂高温泉【4:00】 |
プロローグ
西穂〜奥穂の縦走は以前からホントにホントにやりたかった。でも私は極端な高所恐怖症(笑)で剣岳に登った時などピークで喜んでいる連れを横目に一人帰路のことを考えてブルーになってた男である。だから20年以上も山をやりながら、未だに大キレットどころか、不帰ノ険すら行ったことがないという、ホンマにヘタレな男である。
そんな訳で、「君子、危うきに近寄らず」ということで、自分の分に合ったレベルの山を楽しんできたのだが、ところがである。最近少し自分の山行スタイルが空しく感じてきたのである。相も変わらず全国ドサ回り型の山旅(いわゆる名山めぐり)をずっと続けているが、特に最近は正直なところ義務感で登っちゃう(●●名山に選ばれているから)ことも多く、そんな思いで登っていては、当然充実感・達成感はあまりなく(特に最近は目ぼしい山は大抵登ってしまったせいか「何でこれが●●名山なの?」って思うようなスカ山も多い)、また山にも失礼だということで、行き詰まりを覚えてきたのである。(まあ、ここまで来た以上、今更ドサ回りはやめられないと思いますが…)
「せめて1年に1度くらいは、充実感を味わえる山行がしたいっ!」という思いは、もう抑え難くなり、この夏は今までとは違った山行をぜひやってやろうと思っていた。最初はビッグな縦走(石狩〜十勝岳、白峰南嶺など)を検討していたが、今の職場で長期休暇は厳しいので、それならば困難度の高いコースをと考えると、真っ先に頭に浮かんできたのが、西穂〜奥穂の縦走ルートであった。しかし、前述のとおり私はビビりである。いつものように単独で行く自信が全くない。ネットでたくさんの記録を読んでみても不安は解消されなかった。っていうか激しい岩稜の写真を山盛り見て更にビビってしまった。
「行きたい」と「怖い」のトレードオフな関係を解消する手段は一つだけあった。ガイドを頼むことである。しかしこれではあまりに安易すぎて「達成感」は得られないのではとも思ったが、自分の山登りの「閉塞感」を破る何かのきっかけになればと考え、いつもは結構いろいろと考えて行動する方だが、今回はとりあえず行ってみることにした。
次は適当なツアーがあるかどうか。ネットで検索してみたら、いろいろなガイドの方が西穂〜奥穂をプランニングしていたが、私の休めそうな時期にプランニングしていたのはナチュラルスタイル(島田さん)しかなかった。しかも、西穂から槍まで一気に縦走というプランなので、すぐに飛び込みメールを送ったところ、もう実施日まで1ヶ月の時点だったが、何とか定員3名の中に滑り込むことができた。
私の他の参加者はいずれも女性で、うち一人は何と60代の方という。島田さんからのメールによると何度か岩稜歩きを経験されているとのことで、一番若い私が足手まといになったらかっこ悪いなと思いながらも、体力だけは負けないよう、日々トレーニングだけはするようにしておいた。
記録文
7/30 晴れ時々曇り
あっと言う間に1ヶ月が過ぎ去った。8時半に大阪からやってきた島田号に地下鉄の竹田駅で拾ってもらう。人見知りする方なので、お会いするまで不安だったがガイドの島田さんをはじめ、他のお二人も気さくな方で、少し安心。いろいろと山の話をしながら一路新穂高へ。
台風10号が日本のすぐ南海上を進んでおり、影響を心配したが、東海北陸道のひるがの高原SAからは、白山もはっきりと見えるなど、正直拍子抜けの感じだった。ところが、島田さんが現地に問い合わせてみると、何と稜線はかなりの強風が吹き荒れているらしい、もしかしたらロープウェイも止まるかもしれないほどの状況らしく、一気にトーンダウン…
それでもとりあえず新穂高までは入ろうということで、高山からさらに山奥へ…
下山時の撮影です。バックは笠ヶ岳も顔を見せている。
何とかロープウェイは動いてました。待たされることもなく乗り込みます。片道1500円なり。荷物8キロ以上は荷物料をとられますが、今回余分なものは一切持ってきてないので、余裕でクリア。多分6キロくらいしかなかったと思う。
これも下山時の撮影… 最近各地でロープウェイが途中で止まっているので、恐々乗車。2本を乗り継ぎます。1本目は短いですが、2本目のゴンドラは2階建てで高度差も半端じゃないっす。高度感抜群かつ支柱を超える所では、大きく揺れるので、ゴンドラ内で悲鳴が上がっていた。
西穂山荘へは、林の中のトレイル。しばらくダラダラと進む。旧ボッカ道を合わせると登りの傾斜が一気に増す。山荘への距離を100mごとに示す標識を目安にがんばる。
最後は雨が降り出してきた。島田さんの絶妙なペースメイクに助けられて、何とか1本で山荘に到着。
金曜日&台風の影響か、この日は4人で一部屋をもらい、快適に過ごせました。
台風が近くにいるせいか、天気がころころと変わる。晴れ間が覗いたので、夕食前に小屋の近くを散歩する。小屋から少し登ると一気に視界が開け、西穂が「どうだ!」と聳えている。ここからだとピラミッドピーク(真中のとんがり)が一番目立つ。ここから見ても独標から上は険しい岩稜地帯というのが良くわかり、多少不安になってくる。
反対側には焼岳が… 台風のせいで、いつもと逆にかなりのスピードで東から西へ雲が流れていく。故に風が強いのが気がかりです。
きれいな夕焼け空に明日の決行を確信していたのだが…
小屋に戻って天気予報を見てびっくり。台風の動きが超スローで、ほとんど位置が変わっていない。明日もこんな天気なのか… とりあえず3時に起きて様子を見ようということで、早々に寝る。
7/31 曇り時々晴れ
起きると、外は真っ白かつすごい風… こりゃダメっすということで停滞決定。
仕方がないので、日ごろの睡眠不足解消にいそしむ。昼前から微妙に天気が回復してきたので、みな独標まで遊びに行ったが、私は西穂山荘の漫画文庫にハマってしまい、昼からビールを飲んで、ひたすらマンガを読んでいた。情けない1日であったが、ゆっくりと休養できたのでよしとしておこう。
今日も夕食前に丸山付近を散歩(この日の運動はこれだけである…)。
昨日はガスに隠れていた前穂と明神岳も見えていた。
笠は昨日からずっと見えている。
台風は多少は西に動いたみたいだし、明日は何とか行けるでしょう。そう思うとテンションが高まってきた。
土曜日ということもあって、小屋は昨日とは打って変わってかなりの混雑。それでも滅茶苦茶詰め込まれることはなく、この日も安眠できました。
8/1 晴れ
さあ、いよいよ縦走本番です!!! ハッスル!ハッスル!
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穂高岳山荘の夕食は1番目の17時。夕食後、涸沢岳に夕焼けを見に行く。
ロバの耳(左)、ジャンダルムをのんびりと眺める。またあそこに行くときが来るでしょうか…
今日も笠に夕陽が沈む。しかし色づき具合はイマイチ…
もう少し、赤くなってくれたら… 残念。
30分ほど3110mの山頂にいたらさすがに体が冷え切った。小走りで山荘に戻った。
超混雑を覚悟したが、何とか布団1枚を確保できたラッキー。最後の夜も爆睡。気がつけば翌日に…
8/2 快晴
雲ひとつない快晴。もう1日休暇があれば… 常念岳の後ろから日が昇るのを見てから出発。
岩ガラガラの白出沢をひたすら下る。けっこう大きな岩でも浮いてる場合があり、なかなか気を使う下りである。
30分程下って振り返ったところ。急坂だけあって一気に高度は下がる。これを登るのは大変でしょうな。
昨日の疲れもあって、もう太腿はピクピク状態。日が当たらず、涼しいことだけが救い。
途中オコジョを2匹発見したが、動きが速すぎてデジカメ画像はボケボケだった…
白出大滝を巻くため、いったん白出沢を離れ、すぐ隣の荷継沢沿いに下る。廊下状の切り立った細い沢を慎重に下る。
廊下を下りきると、目の前に大滝が登場。水量が少なく、少々迫力不足か。
大滝を過ぎてからも、しばらくガケの上を歩く。路肩注意!!!
天狗沢が合流すると、道は河原に下り、木の橋で白出沢を渡る。増水時は渡渉不可とのことです。
この4日間、ずっと笠を眺めていたので、少し食傷気味ですが、やっぱり撮っちゃいます。
渡渉後は、シラビソやコメツガなどの見事な針葉樹林の中、膝に優しいゆる〜い下りが続く。
穂高岳山荘から実質3時間で林道に出る。今回パーティの足が揃っていて、ノーストレスでした。
それにしても60代のOさんの健脚ぶりには脱帽です。
林道をダベりながら歩いていると、あっという間に穂高平に到着。私はビール、他の3人はカキ氷で一息入れる。
小屋の背後には涸沢岳と穂高岳山荘の立つ白出のコルが。つい4時間前にあそこにいたとはとても思えない。
快調に新穂高温泉に到着。いや〜充実の山行でした。そして平湯温泉に直行。大量露天風呂が魅力の「ひらゆの森」で入浴&焼肉でフィーバーの後は松本へ。
安房峠は旧道を走り、狙いどおり穂高の雄姿をゲットして山旅は終わった。
松本駅で解散。島田さんはまた明日から重太郎新道とのこと。やっぱり仕事は大変です。本当にありがとうございました。
エピローグ
島田さんのおかげで、何とか無事に西穂〜奥穂を縦走することができました。残念ながら槍までは行けませんでしたが、奥穂に着いたときの充実感は、ここ何年かでは最高のものがありました。
収穫は、過剰になっていた高所の恐怖感がかなり軽減されたことと、一般的な岩稜歩きのコツがかなり掴めたことです。岩から体を離し、常に先のホールド・スタンスを先読みして行けば、岩場でのスピードが劇的に変わります。(山を20年もやってきて、こんな初歩的なことを今頃実感するのは、ホンマに情けない限りですが…)縦走の最初と最後とでは自分の動きが全く違ってきました。最後の馬ノ背の登りは爽快感すら味わえたくらいです。
コースの感想ですが、怖いところでは全てショートロープで確保されていたことはもちろん大きいですが、技術的に難しいと思ったところは全くありませんでした。ホールド、スタンスは豊富でほとんど3点支持で進めますし、例外的にどうしても3点支持が難しそうなところには必ずクサリがあります。(ほとんどクサリは使いませんでした)その辺りは西穂〜奥穂といってもしょせんは一般ルートなんだなと思います。
危険なのは滑落よりも落石や浮石がらみの方です。縦走日は天気が良かったせいか、傍目で見ていて「なぜあなたがこんなところにいるの?」と私でさえ思ってしまうような怪しい足取りの人が何人か歩いていました。そんな輩に限って石を落としまくってくれるので、そういう人を見かけたら、できるだけ近寄らないようにしましょう。
すっかり調子にのった私は、最後の林道歩きで島田さんに次のプランをいろいろとお願いしました。北鎌や剣の北方稜線、前穂の北尾根とか… いつか行く日が訪れるでしょうか。岩のトレーニングもしてみたいとも思うようになりました。今後の展開に我ながら期待してます。(了)
参考タイム
7/30 | 西穂高口 15:45 ⇒ 16:45 西穂山荘 |
7/31 | 停滞 |
8/ 1 | 西穂山荘 04:00 ⇒ 04:50 西穂独標 04:55 ⇒ 05:25 ピラビッドピーク 05:30 ⇒ 06:05 西穂高岳 06:15 ⇒ 07:25 間ノ岳 07:30 ⇒ 07:55 間天のコル 08:00 ⇒ 08:15 天狗ノ頭 08:20 ⇒ 08:45 天狗のコル 08:50 ⇒ 10:20 ジャンダルム 10:25 ⇒ 10:30 ジャン直下 10:40 ⇒ 11:45 奥穂高岳 12:05 ⇒ 12:45 穂高岳山荘 18:15 ⇒ 18:30 涸沢岳 19:00 ⇒ 19:15 穂高岳山荘 |
8/ 2 | 穂高岳山荘 05:00 ⇒ 06:00 休憩 06:10 ⇒ 07:15 渡渉ポイント 07:25 ⇒ 08:10 白出沢出合 08:10 ⇒ 08:45 穂高平 09:05 ⇒ 09:40 新穂高温泉 |
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