−いよいよジャンダルムへ 爽快な縦走を満喫−
この日も3時起床。天気は大丈夫。誰もいない小屋の喫茶室で朝食に頼んでおいたおにぎりをほおばる。そしてアミノ酸も摂取し、入念に柔軟を繰り返す。ハーネスも装着。静かにテンションが高まっていく。そして4時ジャストに暗闇の中へ。
丸山の先から一気に傾斜が強まる。はやる気持ちを焦らすように、島田さんのペースは抑え気味だ。おかげで息が上がることなく気が付けば独標のてっぺんに。
いつしか周囲は明るくなり、目の前には西穂が眼前に。ここから本格的な岩稜帯となるが、まだまだ余裕はある。ヘルメットをかぶり、ショートロープの練習もしながら、さらに進む。
ピラミッドピークからは、西穂頂上をロックオン!(誰かのパクりです…)
それまでガスに包まれていた奥穂方面もベールを脱ぎはじめていた。
独標からは結構遠くに見えた西穂がどんどん近づいてくる。
そして、独標ははるか眼下になっちゃいました。
あっけない程の速さで西穂に到着。
今まで見えなかった槍が見えます。水晶もいいですね。
ガスが完全に晴れ、ついに今日のルートの全貌が明らかに。もう声も出まへん。こんなん、どこをどう歩くんですか? 一人で逆ギレする私である。
ここで全員をショートロープでつなぐ。正直、足にロープが絡まりかけたりと煩わしいところもあるが、何とも言っても安心感が違う。
いよいよ魔界へ突入!!!
これまでとは一転、岩角むきだし、浮石ありまくりの無愛想なルートに変わる。いきなり信州側に長い鎖で下降。何か動きがぎこちない。すぐ次のトラヴァースも同じスタンスに両足を乗っけてしまったりと、不穏なスタート。
鞍部から赤岩岳へ急な登り返しをこなす。
とんでもないところに来てしまいました。もう戻れない。
目の前には岩ガラガラの間ノ岳が。
狭いルンゼ状のところを登る。対斜面から見ると厳しく見えるが、実際取り付いてみると、それほどの傾斜ではない。それでも振り返ると高度感はけっこうあるが…
西穂をバックに、ホッと一息。
行く手はますます切り立ってきた。軽く行動食をとってから出発。落石に注意して下る。
間天のコルへの下りの途中から。しかし、とんでもない姿です。どこをどう下ってきたのやら…
有名な「天狗の逆層スラブ」が目前に。次はこれを登ります。しかし、喉が無性に渇くルートです。
間天のコルから見上げる逆層スラブ。逆層なので、鎖も壁に垂れず、ぶら下がっている。
ここも見た目は凄いが、傾斜は大したことなく、靴のフリクションもよく効くので、登りに関しては鎖は不用だった。
逆層スラブを快調に突破し、天狗ノ頭へ。コース中では珍しい小平地で一息つける。
奥穂が圧倒的なボリュームで迫る。
左から焼岳、間ノ岳、西穂。やっぱり間ノ岳のインパクトは強烈です。
左から鷲羽、水晶、赤牛岳が勢ぞろい。今まで目が向かなかった遠くの景色をのんびりと楽しむ。
天狗のコルへ急降下。この辺りから逆コースの人がちらほら。落石を起こさないように気をつかう。
天狗のコルへの最後は2段の鎖場。2つめの方はオーバーハング気味で体を岩から大きく離さないとスタンスが分かりにくい。個人的にはこの辺りからコツをつかめてきたので、特に問題なく通過。
ルート中唯一の立派な道標が現れ、ここで岳沢へのエスケイプルートが分かれる。避難小屋跡もあり、ここで行動食を補給。
ここからはひたすら登る。相変わらず急傾斜だが、特に問題となるようなところはない。故に今までは緊張のせいもあって気にならなかったが、ここで一気に疲れが出てくる。
登りが一息つくと、畳岩ノ頭に到着。両サイドはすっぱり切れ落ちていて、緊張感が戻るが、距離は短いので難なく通過。再び急登へ。
嫌になるくらい、岩ガラガラの登りが続く。
まだまだ続く。
気が付けば、遥か下方に上高地…
西穂もはるか下方に、
そして、前穂はほぼ同じ高さになった。ジャンは近い。
不意に目の前が開け、ジャン(左)と奥穂がついに姿を現した。
写真真中のやや下にジャン頂上と奥穂方面への分岐がある。左にルートをとり、ジャン頂上へ向かう。
分岐の直下にて。ペンキマークをよく見て進めば、見た目の恐ろしさはどこやら、特に問題なくジャン頂上へ。
思ったよりも広い頂上からは、奥穂が量感たっぷりに迫る。
普通は来た道を戻って、信州側を巻いて通過するのだろうが、今回はロープを使って直接、奥穂の方に下った。フリーで降りようとしたけど、やっぱり無理で、大人しくぶら下がりました。
降りたところは、平地になっていて一息つける。信州側の巻き道もなかなか凄いところを通っていて、人が通過するのを見ていると、こっちも緊張してきた。
さあ、次はロバの耳の通過。写真の人が立っているところから飛騨側に移る。
あそこに立っていたとは… あそこを下ってきたとは…
肩を乗越し、急峻な下降となる。かなりの高度感を味わえるが、私はこの頃になると、すっかり岩稜歩きと高度感に慣れてしまい、爽快感の方が強い。
ここで空身のじいさん発見。足取りは非常に危なっかしい。何でこんなところにいるのかと聞いてみたところ、「ジャンが近くに見えたので…」とのあまりに安易な返答。しかもあまりの緊張に喉が渇きまくっているらしい。仕方がないので私のポカリを分けてあげた。ホンマえ〜加減にしてほしいもんです。こんなんが滑落したら、救助させられるのはこっちだし…
とりあえず先行する。ひとしきり下ると絶壁のトラヴァースとなる。
スリリングなトラヴァースの後は、鎖場の下りがある。
いったんコルに出ると、最後の登りが始まる。ここも落石注意。先行のおっさんが、落石しまくってくれるので、しばし待機。
急登を一気にこなし、いよいよ奥穂までの最後の難関、馬ノ背へ。
今までいろんな山で「ナイフリッジ」と称されるところを通過してきたが、ここは正真正銘の「ナイフリッジ」。高度感も今まで一番だった。でも完全に覚醒した私には敵ではなかった。この時は完全にハイになっていて、全く恐怖感はなかった。
ついに奥穂に到着。メンバー同士がっちり握手。モノホンの高所恐怖症と思っていた自分がこれだけスムーズに行けるとは…
13年振りの奥穂山頂で、改めて周囲の山々を眺める。あの時は就職1年目だった。山々は変わらないが、自分も全く成長していないのではないかと、ちと反省。
槍を正面に眺めながら、下り始めます。さすがにハイシーズンのアルプスは人が多く、すれ違いも一苦労。
穂高岳山荘が見えてきた。直下のはしごが続く下りはちと注意が必要。
13時前に山荘到着。北穂まで行くこともできたが、明日には下山しないといけないので、協議の結果、白出沢を下ることに。
そうと決まればビール!!! 今縦走をあーだこーだと振り返りながらの至福のひととき。気が付けばテラスにひっくりかえって寝ていた… (日焼けで顔面は完全に破壊された)
諸国名山探訪
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