−熊野古道、最後のミッションとなった、大雲取・小雲取越の1日目−
山行概要
2019年12月29日(日) | |
熊野古道中辺路 | |
曇り後晴れ | |
単独 | |
那智山バス停=0:10=熊野那智大社・青岸渡寺=0:20=那智高原公園=0:25=登立茶屋跡=0:30=舟見茶屋跡=0:05=舟見峠=0:15=色川辻=0:40=地蔵茶屋跡=0:35=石倉峠登り口=0:15=越前峠=0:40=楠の久保旅籠跡=0:20=円座石=0:20=小口【4:35】 |
記録文(写真はクリックで拡大)
9連休となった今回の年末年始休暇。小笠原とか先島諸島とか、まとまった日数がないと行けないところに行こうかと思っていたが、出遅れてしまい、特に小笠原は宿泊施設がほぼ満員で、気が萎えてしまった…
と言うことで、名のあるルートとしては、あと2日行程を残すのみとなっていた、熊野古道中辺路の大雲取・小雲取越を目指すことに。
2015年の元旦、天満橋から歩き出し、それから丸5年。のべ52日を費やしてきた熊野古道歩きのついにグランドフィナーレということで、感慨深い。
この大雲取・小雲取越は、主に熊野三山を詣でた旅人が本宮大社に戻る際に歩かれた道で、名の通り、雲をつかむほどの高い山を越えていくという由来から雲取越と名づけられたらしい。熊野古道中辺路の中でも屈指の険路である。
大雲取・小雲取越のもう一つやっかいな点は、アクセスである。1日で一気に那智大社から本宮大社に抜けることも可能だとは思うが、コースタイム11時間を超えるし、陽の短いこの時期はできれば避けたい。
そこで、中間地点の小口集落で、いったん途中で切ることにするが、この小口へのバスは、片道で1日6便しかない… それでもバスの乗り継ぎを入念に調べてみると、7時5分に小口を出る始発のバスに乗れば、その後3度の乗り継げを経て、9時20分には熊野那智大社に到達できることが分かった。後は決行日を待つのみである…
12/28 曇り
御用納めの27日晩は、1年の憂さ晴らしで痛飲してしまい(笑)、翌28日は完全な二日酔い… まあ、今日は現地に入るだけなので、昼過ぎにゆるゆると枚方を出発。
順調に十津川村に入り、湯泉地温泉にある公衆浴場「滝の湯」さんの露天風呂で、しばしの間、のんびりする。硫黄臭がリラックス感を増幅させていく…
湯泉地温泉を後にさらに南下し、本宮町へ。この日は過去に何度も車中泊した湯の峰温泉で泊まることにし、本宮から峠越えで湯の峰温泉へ。
車内で一人寂しく宴会し、ほろ酔い加減で源泉掛け流し100%の「くすり湯」に沈没… 湯舟は私の独占で濃厚湯を満喫した…
ぽかぽかになって、シュラフに潜り込む。いつものように爆睡へ…
12/29 晴れ後曇り
余裕を持って5時半に起床し、小口集落へ。バス停近くの広い路側帯に車を止める。
身なりを整え、予定通り7時5分発のバスで本宮〜新宮を結ぶ路線の途中にある神丸に向かう。
天気予報は晴れのはずだったが、ガスで真っ白(涙)…
数分の乗り継ぎで新宮駅行きのバスに乗り換える。新宮から那智に向かう適当な電車の便がないので、ここでも紀伊勝浦駅行きのバスに乗り換える必要がある。30分ほどの空きがあったので、新宮駅前のコンビニで朝食を取る。海側に出て、快晴となった。
那智駅に到着。移動だけで疲れてきた。そして最後の乗り換えで、熊野那智大社直下の那智山バス停へ。7時5分に小口を出て、那智山着9時20分(笑)… めっちゃ疲れました…
標準コースタイム6時間ほどなので、焦り気味で出発。熊野那智大社に通じる石段を駆け上がる。
3年半振りの熊野那智大社。さすがに大勢の人で賑わっている。
簡単に参拝を済ませ、隣の青岸渡寺へ。
青岸渡寺境内からの定番ショット。冬のせいか、水量が少ないように感じた。
青岸渡寺境内の端から大雲取越が始まる。石段のジグザグ登りで幕を開ける。一気に200mほど高度を上げると、一気に空が開け、那智高原公園に出る。
公園内を横切りながらゆるやかに登っていくと、公園の最上部で車道に出た。
この辺りで既に標高550mに達した。
車道を横切ると、すぐ反対側に古道入口があり、再び山道へ。ほぼ尾根沿いに進み、緩やかにさらに高度を上げていく。
途中、石垣が残る登立茶屋跡を過ぎ、さらに急な石畳が続く。かなりの山奥に入ってきたが、これだけの石畳が残っていることに、あらためて感嘆する。
以降も、緩急を繰り返しながら、登り続け、いつしか標高700mを超えてきた。
さらに登り続けると、東屋の立つ舟見茶屋跡。ここは南方が開け、紀伊勝浦市街から熊野灘が広がる。大雲取越で唯一と言ってよい展望ポイントであり、私ものんびりと眺望を楽しむ。
舟見茶屋跡から少し水平に進むと、笹原に道標だけがポツンと立つ舟見峠。標高883mと書かれてあった。熊野那智大社が標高300mほどだから、一気に500mも標高を上げたのか…
ここから「八丁坂」と呼ばれる急坂を下る。そもそも、この大雲取・小雲取越は、死者の霊魂がたどったという「死出の山路」とされており、特に八丁坂は「亡者との出会い」と呼ばれ、死に別れた親兄弟、知人が白装束で現れるといわれている。熊野を知り尽くした南方熊楠が「ダル」(妖怪)に憑かれたという逸話も残っている。
八丁坂を下り切ると、林道に合流。ここが色川辻。色川集落に続く、花折街道が分岐している。立派な切通しである「八丁の掘割」が残っている。ここまで峠道を整備するからには、花折街道は重要幹線だったのであろうか…
車道を横断し、再び山道へ。少し下って、また車道を横切り、谷沿いにしばらく進むと、再び車道に合流。ここから地蔵茶屋跡まで、しばらく単調な車道歩きが続く。
前方に東屋が見えてくると、地蔵茶屋跡に到着。小広場になっており、トイレや立派な休憩舎、自販機もあるので、大雲取越で一番の休憩スポットとなっている。
ここから再び山道となり、石倉峠を越えていくのだが、2年前の10月の台風21号による土砂崩れで通行止めとなっていたが、古い林道で峠の西側を大きく回る迂回路が新たに整備されていたので、そちらに進んでいく。
石倉峠の登り口まで約3km、60分かかるとのこと。40分ほどコースタイム増となるので、げんなりしたが、この古い林道は標高700m前後を水平にトラヴァースしていくので、体力的には楽勝だった。
35分で迂回完了。小川を渡り、いよいよ大雲取越の最高地点である、越前峠越えに取り掛かる。
整備された植林帯の中に、石畳の残る登りが続く。今日一番の急登に汗がにじむ。
標高870m、大雲取越はもとより、中辺路全体の最高点でもある越前峠にようやく到着。
現在は植林で眺望はきかないが、昔は遠く越前国まで見通すことができたという。
ここには土屋文明(斎藤茂吉から「アララギ」の編集発行人を引き継ぎ、アララギ派の指導的存在となった人物)の歌碑「輿の中海の如しと嘆きたり石を踏む丁のことは伝えず」が立っている。雨の為に輿の中は海のように水浸しだ、と、雲取越を嘆いている藤原定家であるが、その輿を担いでいる丁のことは少しも想いやってくれないと皮肉った歌だという。
ここから標高65mの小口まで、標高差800mを一気に下る。前半部は、「胴切坂」と呼ばれる急降下が続く。小口側から登ると胴が切れるほど苦しいという意味らしい。
胴切坂を下り切ると、石垣や石段の残る楠の久保旅籠跡が現れる。
この辺りには道沿いに十数軒の旅籠があったとのこと。北の山越しにある小雲取越の桜茶屋を指差して、「あそこまで宿屋がないからここに泊まるように」と客引きをしたと伝えられる。昭和35年(1960年)頃まで人が住んでいたらしい。
昔は、この雲取越の道を熊野詣の道者や三十三か所巡礼が列をなして通ったが、東国の人が多かったので巡礼姿の人を「奥州兵衛」と言ったらしい…
楠の久保旅籠跡から、さらに石畳の滑りやすい急坂を下る。
さすがに膝が笑ってきた… ひとしきり下ると、円座石(わろうだいし)が現れる。
「わろうだ」とは昔の円形の座布団のことで、大石の上に円形の敷物に熊野の神々が座って談笑したり、お茶を飲んだといわれている。
大石には梵字三字(阿弥陀仏、薬師仏、観音仏の三仏の意味)が彫られ、この周りを神の御茶屋所といわれてきた。
円座石からは、緩やかに下り続け、最後は廃屋の中を通り抜け、小口に着陸。劇下りの連続で、膝がけっこうやられました…
これから雨が降る予定で、明日も天候は壊滅的。なので、明日の小雲取越は諦め、紀伊勝浦で沈殿することに…
雨なので、車中泊は辞め、宿を確保し、チェックイン後、街に繰り出す。
「お食事処 山賀」さんを発見し、一人宴開始。
マグロ刺身でスタート!
続いて、マグロ内蔵!
勢い余って、クジラ刺身も…
いったん、店を出る。
飲み足りず、勝浦市街を彷徨する。たまたま見つけた「まぐろ寿し 太平洋丸」さんに突入し、二回戦開始!
イルカの刺身でリスタート! これが日本の食文化だ! シーシェパード死ね!!!
クジラベーコンも発注! 堕ちていく…
鳥からまで注文… どんだけ食うねん(笑)
大満足の1日が終わった…
12/30 雨後曇り
天気予報通り雨… チェックアウトぎりぎりまで宿におり、この日も街中へ。
朝早くで、店が開いてない中、唯一食事可能だった「木下鮮魚店」さんに突入する。
生簀には、大量の魚や海老、貝が… なかなか良い感じだ。サザエのつぼ焼きでスタート!
この日もクジラベーコンを…
くつ海老の茹で〜
マグロの目玉でフィニッシュ!
グロいが、コラーゲンでプルッ、プルッ〜
朝から完全に酔っぱらい、フラフラとパチンコ屋へ。
北斗を打ち始めて、早々に「北斗揃い」が…
カイオウ昇天(笑)
収支5万円オーバー(笑)
意気揚々で、はまゆさんに沈没。ほのかに香る硫黄臭に癒される…
この日も「まぐろ寿し 太平洋丸」さんへ。
メバチマグロの刺しからスタート!
クジラの中落ち! 初めて食べました。めっちゃ美味しい!
マグロステーキでフィニッシュ! ひたすら飲んだくれた1日でした(笑)…
翌日の小雲取越へ。
参考タイム
12/29 | 那智山バス停 9:25 ⇒ 9:35 熊野那智大社・青岸渡寺 9:40 ⇒ 10:00 那智高原公園 10:00 ⇒ 10:25 登立茶屋跡 10:25 ⇒ 10:55 舟見茶屋跡 11:00 ⇒ 11:05 舟見峠 11:05 ⇒ 11:20 色川辻 11:20 ⇒ 12:00 地蔵茶屋跡 12:10 ⇒ 12:45 石倉峠登り口 12:45 ⇒ 13:00 越前峠 13:05 ⇒ 13:45 楠の久保旅籠跡 13:45 ⇒ 14:05 円座石 14:05 ⇒ 14:25 小口 |
山行データへ
諸国名山探訪
Copyright(C) Hiroshi Fujita All right reserved