−さすがのバリエーションルート! 岩場は大したことなかったが、ルーファイに苦闘…−
山行概要
2015年10月10日(土) | |
南アルプス | |
薄曇り | |
OT君、Wヒロシ(I.ヒロシ、F.ヒロシ) | |
戸台=1:30=角兵衛沢出合=1:30=大岩下ノ岩小屋=1:25=角兵衛沢のコル=0:20=鋸岳第一高点=0:25=鹿ノ窓=0:50=第二高点=0:30=中ノ川乗越=2:15=熊ノ穴沢出合=1:45=戸台【10:30】 |
記録文
一般登山者で名山巡りを目標にしているなら、最難関の一つである、南アルプス鋸岳。岩稜を避け、釜無川林道から延々と辿るルートもあるが、それで登ったことにしてもなぁ…
と言う訳で、ネットで研究するが、鎖が取り付けられたみたいで、私と同レベルの人たちでも何とか登っているようだ。うーん… 遭難一歩手前のやり口だが、どうにもこうにも行きたくなってきて仕方がない。何とか相方のI.ヒロシ氏を甘言で誘い出し、体力豊富なOT君もゲットし、ヘルメットも各自購入して、当日に備える。
本当は甲斐駒まで縦走したかったが、どうしてもテント装備で行く自信が無く、角兵衛、熊ノ穴の両沢を登り降りするルートにしたが、戸台川からの往復で、コースタイムが山と高原地図で15時間10分。日帰りではややきついので、角兵衛沢出合にテントを張ることにし、1泊2日でやる予定だったが、10月の体育の日の3連休のうち、鋸岳攻略日に充てようと思っていた日曜日の天気が悪く、前日の土曜日は晴れの予報だったので、急きょ、強行日帰りへと変更したのであった。
京都を22時にスタート。順調に進み、戸台の駐車場には2時半頃に到着。そのまま車内泊、と言っても4時半起床の予定なので、私とI.ヒロシ氏はほとんど寝ないままコースタイム15時間10分の長丁場へ…
予定通り4時半に起床。めちゃくちゃ眠いが仕方がない。我々の他に車は2台。それぞれ少し前に出発していった。さすが鋸岳を目指す者たち、動きが早い。我々も負けじと朝食もそこそこに歩き出す。
暗闇の中、最初は右岸に付けられたダム工事用の車道を歩む。白岩堰堤と第二堰堤の間で車道は終わり、第二堰堤を階段で乗り越えると広大な河床を歩きとなる。この辺り戸台川は伏流になっているのか、川面は見当たらない。歩きやすいところを適当に拾って進む。
写真はさらに堰堤を越えた、地図で第1号床固(とこがため)と記載がある箇所。遥か前方に甲斐駒が見えテンションが上がる。
川面が復活し、左岸に付けられた踏み跡を進む。この踏み跡はたまに樹林帯を行くが、河原をそのまま歩いた方が良さそう。
この数日間、好天続きであったと思われるので、我々は角兵衛沢出合まで全く苦労することなく歩くことができたが、増水時の様相は全く変貌すると思われる。ラッキーであった。
水量少ないコンディションのため、コースタイムを1時間縮めて角兵衛沢出合に順調に到着。
道標にはなぜかハングルも表記。そんなに韓国人が多いのでしょうか?
しかし、ここで事件と言うか、ネタが… もう少し上流に行けば簡単に渡渉できるポイントがあったにもかかわらず、ズボラをかまして出合近くのポイントで無理やり渡ろうとした私は、思いっきり岩の上で滑って、川へドボン! 両膝打撲と両足浸水という大惨事に…
何とか右岸へ渡り、靴下を絞る私… 今回日帰りのため、替えの靴下は持参せず。両足ポチャポチャの状態で残りコースタイム13時間の行程を歩く羽目に。テンションだだ下がりである。
角兵衛沢ルート入口のケルンには不気味にも鹿の頭の白骨が捧げられていた。今回テント泊の予定だったこの辺りは正しくテント適地で、この日はツェルトが一張りのみだった。
何とか気を取り直し、いよいよ鋸岳への侵攻開始である。赤テープに導かれ、森の中へ。
角兵衛沢ルートの前半は、南アルプスらしい、苔むした樹林帯の急登が続く。赤テープはあるが、まさに踏み跡と言った程度のルートで、先行者はかなり迷走しており、我々も偽コースに引っ張りこまれることもあったので、先頭に立つことに。荷物も軽いので順調に大岩下へ到達。
物凄い岩壁の下で休憩。この辺りで2000mちょっとか。いよいよここから角兵衛沢の象徴である岩ガラガラの登りとなる。今回のために、皆新調したヘルメットをここで装着する。
とにかく既成概念が取っ払われるとんでもないルートである。歩きやすいところを探そうにも、どこも岩ガラガラなのだ。
しかも物凄い急傾斜であり、全ての足場が動く。その場に立ち続けることができないので、上に登り続けるしかない(涙)。
我々はわずかに残る草付きの斜面に逃げ込み、ブッシュを頼りに登り続けた。
草付きがついになくなった。仕方なく左岸の岩壁沿いを岩を掴みながら登り続ける。
角兵衛沢の最上部。ここまで登ってくれば、傾斜が緩み、足元が崩れることはない。
登りに必死で今まで気付かなかったが、仙丈岳が大きい。
ようやくよじ登った角兵衛沢のコルで小休止。本当はもっとゆっくりしたいが、先の行程が不安なのと、寒くて永居できない。
軽く行動食を補給しただけで、第一高点へ。急な稜線を行く。しかし、先程とは大違いで足元がしっかりしているので、高度感はそれなりだが、特に問題なく登っていく。
振り返ると、遥か槍・穂高をバックに三角点ピークが大きい。
今になって思い返すと、周囲の景観を楽しめたのは、第二高点にたどり着くまで、この時だけだったような気が…
適度な高度感を楽しみながら、第一高点へ。私たちの技量では、これくらいが適当かも…
あっけなく、第一高点へ。特に技術的に難しい所はなかった。
中央アルプス、御岳、乗鞍と北アルプスをバックに定番の記念撮影。
八ヶ岳連峰が一望。今日は晴れの予報だったが、なぜか曇り…
しかし、高曇りだったので、遠望が利く。
至近距離の第二高点をバックに、大迫力の甲斐駒と、北岳、間ノ岳が続く。やっぱり甲斐駒へ縦走したかった。
いつかやります!
さあ、核心部へ! まずは小ギャップへヤセ尾根を行く。足元注意だが、特に問題なし。
いよいよ小ギャップの鎖場が現れる。逆層で足元が見えづらいが、楽勝。
へっぴり腰で鎖を降りる私の後ろには、追いついてきたオッサンがロープを取り出し、懸垂下降を始めようとしている。格好いい〜
小ギャップの底から、鎖場の登り返しがあるが、こちらは傾斜も緩く楽勝。
下から見上げて左手の草付きバンドに回り込めば、フリーで余裕で登れると思われるが、我々は安全第一で、鎖場を突破!
小ギャップを登り返して、振り返ると、第一高点の勇姿が素晴らしい。
切り立った稜線をそのまま進まず(稜線へ誘う残置ロープもあるが、進まないこと!)、甲州側へ乗越し、岩稜すぐ下をトラヴァースしていく。
すると、不意に目の前に大穴が…
北沢峠へ向かうバスからでも望め、車内でも案内される、有名すぎる鹿ノ窓がついに我々の目の前に…
鹿ノ窓をくぐると、反対側へは長い鎖を頼りに下降する。特に技術的に問題はないが、細かな岩が堆積しており、落石せずには降りられない。先行した者は岩陰に隠れないと、次の者が落とす落石のシャワーを浴びることになる…
鎖場の一番下でホッと一息。ここまでは順調だったが、一番大変だったのは、ここから大ギャップの通過であった。
とにかくルートが不明瞭。鎖場の少し下から左手のバンド沿いにトラヴァースしていく踏み跡(写真の左手)があり、普通に考えれば、こちらが正しいと思えるのだが、かなりの高度感で右手は数十メートルも切り立っており、ビビってしまったのと、行く手が見えず、果たしてこのルートは正しいのかと不安で、間違っていた場合に、これを戻るのが嫌だったので、なかなか突撃できないでいた。
そうこうしているうちに、後続のベテランのオッサンが現れ、私たちが躊躇していたトラバースルートへ突撃していった。
情けないが、我々も後に続く。滅茶苦茶怖いバンドのトラバースを何とか突破すると、大ギャップへ続くガレ沢に出るが、ここは大ギャップには登らず、ルートかどうか判然としない斜面をさらにトラバースし続け、ガラガラの小沢に何度か足を取られかけながらも、何とか草付きの支尾根までたどり着く。
果たして明瞭な踏み跡と道標があった! しかも踏み跡は遥か下から続いている… 今から思うと、鹿ノ窓の鎖場終点から、ガレ場をさらに下る必要があったようだ。
ここまで来れば、第二高点へは、急峻な草付きの支尾根を登るのみ。だいぶ消耗してきたので、体力的には相当きつかったが、滑落の恐怖心から解放され、気は楽だ。
ついに第二高点到着! 安堵感が半端ない(笑)
距離的にはすぐそこなんですが、1時間半以上もかかってしまった…)
さらに距離が縮まり、物凄い迫力の甲斐駒を目の当たりにしながら下山開始。
やっぱり甲斐駒と繋げたくなってきた…
中ノ川乗越へは、危険度は少ないものの、またもやガレ場の急降下が続く。足元が定まらず、落石しながらの下りである。
今更だが、この鋸岳、まともな登山道の区間はほとんどない。
北アルプスの整備されたルートに比べたら、ここもただのガレ場である。
ようやく中ノ川乗越へ着陸。画像で岩の壁に見えるのは辿って来た下降路。やっぱりこのルートはおかしい!
熊ノ穴沢への下降路に道標はなし。またもやガレ場へ突入する。
角兵衛沢と同様、明確なルートは無く。歩きやすいところを拾って下る。ただ、角兵衛沢と比べ。岩が大振りなので、足元の崩れ具合はまだマシで、穂高の白出沢に似た雰囲気である。
大岩から大岩へリズミカルに下るが、これはこれで、足への負担が半端ない。後日の筋肉痛はひどかった…
ずっと岩の上なので、足に堪える下りが続く。ひとしきり下ると、樹林が優勢になってきて、林の中のか細い踏み跡を下っていく。
右股分岐に気づかぬまま、下降を続ける。最後になって、南アルプスらしい苔むした森の中を下り、熊ノ穴沢出合へ。
出合は巨石で埋まっており、荒れ荒れ。赤テープ等はあるものの、逆コースはなかなか入口の判別が難しいのでは。
行きの渡渉で散々な目にあったので、今度は失敗する訳にいかない。慎重に渡渉点を吟味し、熊ノ穴沢出合のかなり下流で無事安全なポイントを発見し、右岸に渡る。
後は、来た道を淡々と辿るのみ。暗闇で行きでは気付かなかった紅葉や周囲の岩壁を愛でながら、戸台へ戻った。
5時に出発し、17時に帰着する、12時間の激闘がようやく終わった…
参考タイム
10/10 | 戸台 5:00 ⇒ 6:30 角兵衛沢出合 6:45 ⇒ 8:15 大岩下ノ岩小屋 8:25> ⇒ 9:50 角兵衛沢のコル 10:00 ⇒ 10:20 鋸岳第一高点 10:30 ⇒ 10:55 鹿ノ窓 11:15 ⇒ 12:05 鋸岳第二高点 12:25 ⇒ 12:55 中ノ川乗越 13:00 ⇒ 15:15 熊ノ穴沢出合 15:15 ⇒ 17:00 戸台 |
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