−日浦から連峰をぐるり一周 好天にも恵まれ素晴らしき1日−
山行概要
2006年11月3日(祝) | |
赤石山系(法皇山脈) | |
晴れ | |
単独 | |
日浦登山口=0:50=筏津=0:35=新道旧道分岐=1:15=東赤石山=0:20=八巻山=0:40=石室越=0:20=物住頭=0:25=西赤石山=0:45=銅山越=0:30=ダイヤモンド水=0:20=日浦登山口【6:00】 |
記録文
西日本には珍しく、200、300名山の山々(東赤石山、笹ヶ峰、伊予富士、瓶ヶ森)が集中している石鎚、赤石山系にようやく向かう時がやってきた。
いつものようにネットでいろいろと情報収集に努めるが、伊予富士、瓶ヶ森などは、ほとんどの人が林道からの安易すぎるピストン(両山とも林道が頂上付近を通過しており、30分くらいで登頂可能)で済ましていた。人様の行動にケチを付ける気も筋合いも全くないのだが、私はそんな手抜きの登頂では到底我慢できない。やはりここは赤石から石鎚まで縦走するのが私に相応しいと思ったが、最近の私はと言えば、本格的な山はもう1年以上もやっておらず、体力的な不安が相当大きい。また、最低でも3泊はかかりそうなので、日程上からも非常に厳しい。(言い訳ばかり)
そこで、体が元気なうちに先にしんどい笹ヶ峰から瓶ヶ森を1泊2日でやり。その後に赤石を1日でやることにしたが、瓶ヶ森の白石小屋が11/3は営業しないということだったので、やむなく赤石の方を先にもってきた次第である。
赤石も東赤石だけで終わるのは性に合わない。当然、ぐるっと縦走しなくては。という訳で、旧別子山村側の日浦という登山口を起点にまるっと1周することにした。車道歩きを1時間程余儀なくされるものの、これだとコースタイムで約9時間程で東赤石から西赤石が縦走できるのだ。
慌しく職場を脱出し、京都を前夕の18時に出発。新居浜には22時過ぎの到着。24時までやってる「新居浜温泉パナス」でひと風呂浴びる。バリ島でのリゾートがコンセプトらしいが、客はじいさんばかりだった。お風呂は種類豊富でまずまずでした。
コンビニでビールを買い込んでから、道の駅「マイントピア別子」へ。人気は無く、静かな車内泊だった。
秋の陽はつるべ落とし。今日の長丁場を考えると、日没になるのは避けたい。そのため、車道歩きを最初に持ってきて、日の出前にやっつけることにした。故に4時に行動開始。大永山トンネルで旧別子山村側へ。駐車場が整備されている日浦の登山口に車を停め、車内で朝食をとってから、5時に歩き出す。
ヘドラン歩行を避けるために、ヘドラン歩行を選択してしまっている自分に何か矛盾を感じながら、暗闇の車道を歩き出す。山中一人ぼっち。いつもの私なら相当の恐怖感を覚えるところであるが、なぜかこの日は全く感じない。ずっと下り坂なので快調に進む。
いつしか辺りに線香の匂いがしてきたなと思ったら、筏津まで半分ほど進んだ辺りの南光院の前だった。旧別子山村役場前を通過すると5分ほどで筏津の登山口に到着。ちょうどヘッドランプがいらない程の明るさになってきた。ここまでは計算どおり。
徐々に周囲が明るくなる中、本日の快晴を確信しつつ、瀬場谷をつめる。
橋で谷を渡ると、すぐに分岐が現れる。道標での表示の扱いから赤石山荘に向かう瀬場谷左又を行くコースの方がメインルートのようだが、東赤石山から縦走することを考えると、右又コースを登るほうが、合理的なので、こちらをチョイス。
さらに細くなった谷筋に沿ってひたすら進むが、傾斜はそれほどでもなく、ブランクの空いた体でも何とかこなせる。
一度だけ、渡渉ポイントがあるが、水量はここ数日の好天のせいか驚くほど少なく、靴を濡らすことはなかった。
渡渉後、一転して薄暗い植林帯の登りとなる。徐々に傾斜も強まり、さすがに汗が流れ出る。我慢の時間帯。
再び自然林となると、木々の間から稜線がチラチラ目に入る。朝日を受けたそれはまさに「赤く」輝いていた。
権現越との分岐を左にとると、すぐにまた分岐が現れ、東赤石山へは赤石越へと向かう。露岩帯をしばらく進むと赤石越で、そこからは巨石の点在する樹林帯を岩の間を縫うように登れば、待望の東赤石山頂である。
東赤石山頂では期待通りの展望に恵まれる。
これからたどる赤石山系の主稜線が一望。けっこう険しそうだ。
笹ヶ峰とちち山は一体になって見えている。
海がほんとに近い。1700mを超えて、海を間近に見ることのできる山は僕の記憶では、利尻とか宮乃浦岳とか島の山しか覚えがない。
縦走開始。赤石越まで戻り、そのまま直進。八巻山へ。どこから登るんだという形相だが、案外大したことない。冷たい岩の感触を楽しむうちに八巻山のピークへ。
こうして振り返って見ると、やっぱり険しく見える。どこを登ってきたのか良く分からない。
登頂欲をそそる山容。東赤石山との縦走路はなかなかの険路らしい。
1698m。岩だらけの山の割には、あっけなく登頂。この先も岩稜が続く。
ここから先も岩だらけ。踏み跡が薄いので注意が必要。まあ尾根を外さなければ問題なし。
エアリアマップには記されていないが、八巻山を少し下ると、山荘への下り道が分岐する。この辺りは高山植物の宝庫らしい。
この辺り奇岩が乱立、コース取りは大変だが、楽しみはつきない。
八巻山の次はこれを越える必要がある。直線距離は大したことないのに、なかなか先に進まない。
赤石山荘経由の巻き道ならこっちの半分もかからないだろう。
岩&ブッシュとかなり格闘した割には、あんまり進んでいないのに少々ガックリ。
岩と木々の割合がしだいに逆転し、いったん樹林帯に入ると、石室越は近い。
いままでの殺伐とした風景から一転、柔らかな雰囲気が漂う。
樹林帯は一瞬だけで、また低木&露岩帯となる。故に展望は全開。笹ヶ峰辺りから手前には端正な西赤石山の姿も。
前赤石も先ほどの八巻山に勝るとも劣らない岩だらけの山。あまりの岩岩ぶりにルートはピークを巻いて行く。
このすぐ先の物住頭であった人に聞いたら、踏み跡を拾えばピークに行けたらしい。なかなか立派な山だっただけに、登っといたらよかったと後で少し後悔。
もう紅葉は終わったと思っていたが、まずまず楽しめた。
二ツ岳と前赤石山(右)。別子銅山の煙害の影響か、この辺り高い木々がほとんどないので、展望は思いのまま。
ちち山・笹ヶ峰の塊(左端)の右奥には石鎚山の姿もうっすらと… 物住頭〜西赤石山(右手前)間は、これまでの岩混じりの尾根から一転、柔らかな稜線歩きとなる。ロングコースだったが、もう先も見えたので、ペースを大幅に落として展望ハイクを満喫。
平坦尾根のためか、どんなにゆっくり歩こうが、西赤石山はどんどん近づいてくる。振り返ると物住頭もけっこう後方に…
西赤石山も展望は最高! ちち山・笹ヶ峰がさらに近づく。笹ヶ峰へは明日突撃する予定だが、こんなに気持ちの良い所と思わなかった。そのまま縦走したくなってきた。
とりあえずは、ここで昼食。前夜コンビニで調達したおにぎりをパクつく。ポカポカ陽気にこの大展望、ああビールが欲しい…
西日本であまりカラマツは見たことないので、不思議な感じがしていたが、帰ってから調べてみると、煙害で禿山になってしまったのを復元するために、多く植えられたらしい。納得。
やはり高木はまばら。植生が完全に戻るのに何年かかるのか…
標高1294m。1702年に銅山の粗銅を新居浜に運ぶため開削された峠道の頂上。峠で行き倒れた無縁仏を弔うために地蔵さんが立っている。
主稜の展望もここで見納め。車の待つ日浦へと下る。
ここからは歴史散策モードにチェンジ。峠から旧別子銅山の遺構が次々と出現するからである。充実した山行の最後にこうした歴史ハイクで締めくくることができるのは、ホンマに最高の気分。嬉々として下る。
別子銅山で最初に開かれた坑口でもあるらしい。明治までの約200年間、ここが主力坑であり続けた。
この後も、鉱山街の跡や精錬所跡等が次々と現れ、全く飽きない。
うますぎる水がほとばしるダイヤモンド水。好天ですっかり火照った顔や首筋をクールダウン。
小足谷劇場は明治22年に建てられ、毎年5月に歌舞伎役者を京都から多数呼んで、大いに盛り上がったらしい。収容人数は数千人というから、物凄い規模である。今は苔むした石垣と松林が残るのみである。
住友別子小学校は明治6年設立で、大正5年廃校となった。往時には300人ほどの生徒がいたらしい。
銅山を視察に訪れた要人を接待するために明治34年に開設された。
充実のハイクもそろそろフィナーレ。久しぶりの山だったせいで心のセンサーの感度が上がっているのか、何もかもが素晴らしく感じた山行だった。「やっぱり山登りはいい!」と心から感じた会心の山行だった。
約8時間振りに戻ってきた。出発時は2台だけだった駐車場も今では車で満杯、路上にもあふれていた。
下山後の温泉は、もちろんマイントピア別子。明日は今日以上の長距離歩行を控えているので、ここで1時間以上のんびりし、久しぶりのロングトレールでこわばった筋肉をほぐす。
明日の笹ヶ峰に備え、今日の宿は西条駅前。のんびりと車を進める。今日の素晴らしすぎる山行を反芻しながら幸せなドライブ。
新居浜を素通りするのも何なので、新居浜の名刹で曹洞宗最高の別格、瑞應寺に寄り道。夕暮れの本堂に佇む。併設されている保育所の降園時間と重なり、元気な子どもたちが次々と飛び出してくる。何でか分からないが、なぜか旅情を強く感じるひと時。
西条へは30分もかからなった。駅前のビジネスホテルにチェックインして、さっそく町並みを探索。
石鎚山からの伏流水が自噴水として西条市内のあちこちで沸きあがっているもの。日本の名水百選にも選ばれている。西条市内はこのおかげで水道料金がタダらしい。羨ましすぎる。
明日のタクシーを5時に予約してから、17時前には夕食をとった。今日は良く動き、充実した1日だった。故に早々に寝た。バタンキューだった。
参考タイム
11/3 | 日浦登山口 5:00 ⇒ 5:50 筏津 6:05 ⇒ 6:40 新道旧道分岐 6:50 ⇒ 7:30 休憩 7:35 ⇒ 8:10 東赤石山 8:25 ⇒ 8:45 八巻山 8:45 ⇒ 9:25 石室越 9:35 ⇒ 9:55 物住頭 10:05 ⇒ 10:30 西赤石山 10:50 ⇒ 11:35 銅山越 11:45 ⇒ 12:15 ダイヤモンド水 12:20 ⇒ 12:40 日浦登山口 12:55 ⇒ 13:25 マイントピア別子 14:40 ⇒ 14:55 瑞應寺 15:10 ⇒ 15:30 西条 |
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