薩摩硫黄島

−勝手に島流しの気分を味わう。硫黄岳の毒ガス攻撃に悶絶−

   
  

山行概要

日 程
1989年3月23日(木)〜27日(月) 硫黄岳登山は26日(日)
山 域
薩摩硫黄島
天 気
メンバー
T.J.ひん(♂)、タラ(♀)、ゴリ(♂)、私
コースタイム
硫黄島開発センター=0:30=登山口=1:15=硫黄岳=0:45=登山口【2:30】

記録文

 この頃、山登りサークルである我々の間に、離島ブームが到来していた。1年前の春合宿アフターで屋久島から口永良部島に行った奴らがいて、絶賛して回っていたことが原因の一つと思われるが、他人に感化されやすい私としても行かないわけにはいかず、鹿児島の南に手頃な離島を発見、それが三島村の文字通り三島(竹島、硫黄島、黒島)だった。中でも硫黄島は活火山硫黄岳の存在と麓の海岸に湧く温泉の存在も大変魅力的だった。更には、鹿ケ谷の陰謀が漏れて俊寛が島流しにあった伝説の島であることが駄目押しになった。

 と言う訳で、九重山での春合宿終了後、熊本、鹿児島で1泊ずつして休養してから、『三島号』(1カ月に8便しかない)に乗り、ようやく薩摩硫黄島に出発するのである。
 小船なので、揺れを心配していたが、さほどのことはなく、順調に3時間ほどで竹島へ。

竹島で一時下船

 三島号は竹島、硫黄島、黒島の順番に停泊していく。
 竹島で10分ほど上陸。文字通り全島がリュウキュウチクに覆われていた。

ついに硫黄島が登場

 調子に乗ってデッキに居続けた私は、この後高波をモロに受け、ずぶ濡れに…

さらに硫黄島に近づく

 何とも凄い光景です。まさに鬼界ヶ島のイメージそのもの。
 そして三島号は硫黄島港に到着。港内の水が錆鉄色をしているのに驚いたが、温泉が湧いているということで納得。

さっそく温泉へ

 東温泉といいます。ここのロケーションは最高!! これ以上の温泉にはまだお目にかかったことがありません(2005.9現在)
 正面に大海原と屋久島を見ながらの入浴は最高でした。この後、何度も訪れることに。
 この日は民宿でゆっくりと過ごした。

硫黄岳を望む

 さて、一応、硫黄岳登山が硫黄島探索の最重要課題ではあったが、いかんせん天候不順…
 このため来島後3日間、我々4人は温泉入浴、島のいたるところに棲息している『くじゃく』に脅えながらの散策、そして開発センターでの卓球と怠惰に過ごしてしまった。そんなこんなでもう明日にはこの島を去らねばならぬという26日まで硫黄岳に登れなかったのである。

 依然として天気はぐずついていたが(悪いのは誰だ)、我々硫黄島探検隊4名は硫黄岳へ向けて26日早朝、行軍を開始した。
 港の集落を抜けると、林の中に安徳天皇御陵がある。ここには天皇と共に流れて来た平家の落武者たちの墓も有る。真偽はともかく、この島の歴史を感じさせる史跡である。御陵を後にして細い林道を東へ進む。道の両側はもう立派なジャングルだ。孔雀がいつ飛び出してきてもおかしくない雰囲気だ。俊寛堂への道を左に分けると、いよいよ硫黄岳ヘの登山林道入口に到着する。この林道は盛んに噴火活動をしている硫黄岳に産出するケイ石を採取するために造ったものである。今日は日曜日なので入山しているのは我々4人だけだ。林道入口から見上げる硫黄岳は各所から噴煙を上げ、また頂上部分がガスに覆われているため、まさに『地獄』のイメージと一致する。かなり傾斜のきつい林道を快調に飛ばし、海がどんどん下がっていく。振り返れば矢筈山の鋭峰群がその高さを競い合い、こんもりとした稲村岳はユーモラスに寝そべっている。こんな絶海の孤島にも山々はしっかりと自己主張しているのだ…と、ひとり感慨に耽っていたが、雨がとうとう降りだしてきて山は霞んでしまった。
 気を取り直して登行を再開する。林道が硫黄岳の南面を進むようになると、海がほとんど真下に見えるようになる。そう、足下は絶壁である。標高差にして500mぐらいであろうか壮絶な眺めである。またこの辺りより硫黄ガスの噴出が激しくなってきて、目がシクシクして痛い。さらに登り続けると、もうどれが霧でどれが硫黄ガスなのか訳が分からない程、真っ白の世界になる。喉まで痛くなってきて、いいかげんにしてくれと叫びたくなる頃、ようやく林道終点に着いた。当初の予定では硫黄岳の最高点、704mピークまで行くはずであったが、とてもじやないがそんな状態ではなく、断念した。
 帰路はずぷ濡れになりながらも林道をぷっとばし、東温泉に飛び込んだ。とにかく強烈な印象を受けた山行、いや探検であった。

島の南端、恋人岬にて

 27日に硫黄島を離れた。息つく間もなくこの後も、開聞岳霧島阿蘇と山旅は続いていくのである。

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諸国名山探訪

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