越後三山縦走

− 一山ごとに大きな登下降、この三山、半端ないっす… −

   

山行概要

日 程
1995年10月7日(土)〜9日(月)
山 域
越後三山
メンバー
ゴリ(♂)、私
コースタイム
10/7
八海山ロープウェー山頂駅=0:20=四合半出合=0:30=女人堂=0:35=薬師岳=0:05=千本檜小屋(八海山岩稜周遊:小屋=0:55=大日岳=0:40=小屋)【3:05】
10/8
千本檜小屋=0:50=入道岳=0:20=五竜岳=1:05=荒山=1:45=出雲先=0:50=御月山=0:20=祓川=1:00=中の岳避難小屋【6:10】
10/9
中の岳避難小屋=1:55=天狗平=0:50=駒ヶ岳=0:10=駒の小屋=0:25=百草の池=0:25=小倉山=1:30=駒ノ湯【5:15】

記録文

 10/7 晴れ時々曇り
 いつものように前夜は、急行「きたぐに」で越後を目指す。この列車に乗るのは何十回目だろうかと考えているうちに、いつしか深い眠りに落ちた…
 気が付けば、長岡の直前である。慌てて身支度をし、上越線の鈍行に乗り換え、相棒の待つ浦佐へ。不要な荷物をコインロッカーに押し込み、タクシーで八海山ロープウェー山麓駅に向かう。ロープウェーは片道1000円、一気に高度を上げ、約1150mからのスタート。本日の行程は体力的には楽勝だが、最後に八海山の岩稜歩きが控えているため、2人ともテンションは高い。

八海山ロープウェー山頂駅付近にて

 ここ数ヶ月、大雪をはじめ各地を転戦していたせいか、体力は十分、秋真っ盛りの錦秋の稜線を快調に駆け登る。

祓川の草紅葉

 女人堂でひと休みの後、草紅葉の美しい祓川の水場を過ぎ、鎖場も現れる薬師岳への急登が始まる。薬師岳からは今日の宿泊地、千本檜小屋がすぐ目の前。しかし我々の目を釘付けにしたのは、小屋ではなくその背後にそびえ立つ八海山岩峰群であった。

やらせショットその1 不動岳にて

 小屋前で昼食をとり、ザックをデポして、いよいよ岩峰群へ。地蔵岳の基部を巻き、迂回ルートを分けると、ルートは地蔵と不動岳の鞍部に向かって、一気に突き上げる。稜線上に出ると、鎖が連続する細かいアップダウンが続く。

ちょっと一息

 後ろの摩利支岳が物凄い形相で構えています。

やらせショットその2 摩利支岳にて

 実は本当に鎖が必要だったのは最後の大日岳の前後だけで、それ以外は楽勝。「死にたくない」という気持ちがあれば、特に問題はないでしょう。が、その気になればいつでも死ねるほど、両側は切り立っているのも事実で高所恐怖症の方は結構怖いかも。

大日岳頂上

 あっけなく大日のピークに着いてしまったので、ここで昼寝をきめることにする。遮るもの何一つ無い岩峰での惰眠は最高でした。

中ノ岳方面を望む

 明日はあそこまで行かねばなりません。中ノ岳までの間はよく見えませんが、相当ギャップが激しそうです。

やらせショットその3 大日岳の下り

 いったん降りたんですが、写真を撮るため、もういっぺん登り直しました…

迂回ルートの途中、岩峰の基部を巻く

 小屋までの帰路は明日通過する予定の迂回ルートを使う。迂回ルートとは言っても絶壁の部分を横鎖を頼りに進む所や垂直の梯子が4段連続で続くところなどあり、なかなか侮れない。

迂回ルートの紅葉

 この辺りの紅葉が一番見ごたえがありました。

迂回ルートの途中で

 何気に写っていますが、背後はかなり切り立っていて、滑落注意です。
 小屋に戻ったのは15時。激辛キムチ鍋で英気を養い、明日のハードコースに備えて、早々に寝た。

 10/8 曇り後雨
 4時起床、のはずが1時間寝坊してしまう。いつものことだが緊張感が全く無い。なんとか6時に出発。空はどんよりと曇り、今にも泣き出しそうだ。昨日の迂回ルートを慎重に通過していく。やはり重荷を背負っての通過はキビシイものがある。なんとか合流点に到着し、ゆるやかに登り八海山最高点の入道岳へ。

入道岳にて

 バックの大日岳とは対照的に最高峰がただの鈍峰というのが、何か面白い。ピークからは今日辿る予定の縦走路が一望であるが、まさしく「目に毒」であった。足下から果てしなく恐竜の背のような稜線が続いた後、御月山・中の岳へ崖の様に尾根が急上昇している。2人して思わず身震いしてしまった。

五竜岳にて

 いったん少し下って五竜岳。まだここまではゆるやかである。いよいよここから拷問コースの開幕である。転がり落ちるような急降下に加え、笹ブッシュで足下が全く見えない。おまけに木の根と泥だらけということもあり、前を歩く相棒は、1分に1回のペースでコケまくっている。

中ノ岳方向を望む

 五竜岳からかなり下ってきたあたり。上部はガスがかかって、何やらおどろおどろしい雰囲気。
 さらに下っていくと今度は垂直(に見えた)の鎖場が現れる。足場がほとんど見当たらないので、ほとんど鎖にぶら下がりっぱなしで、腕力が急激に消耗していく。

八海山を振り返る

 何とか荒山に降り立つが、前を向いても後ろを振り返っても稜線ははるか上方に見える。

中ノ岳へもまだまだ険しい

 なんともすごいところに入り込んでしまったようだ。しかもついに雨がポツポツと降り出し、ますます悲惨な状況になってきた。

 ここからさらに尾根が痩せてくる。ちょっとでも転べば新聞に掲載されるのは確実といったような箇所が連続する。遭難碑も数多くあり、非常に陰惨な気持ちになるルートである。何とか最低鞍部のオカメノゾキ(しかしすごい地名だな)に降り立つ。ここも5mくらいながら両側はスッパリと切れ落ち、へっぴり腰でなんとか通過。ここから登り返しとなる。腕力勝負の鎖場が続く。滑り落ちそうな急登を枝をつかみながら頑張り、出雲先へ。

出雲先から八海山方面を望む

 すごいヤセ尾根を歩いてきました。アップダウンも多く、消耗するはずです。
 まだ1528m、あと500m以上も登らなければならない。私が死んだのはここから御月山への間であった。背丈を越えるブッシュと超急登の拷問の前に私はなすすべもなくへたりこんでしまった。臨時の大休止をとってもらい、なんとか歩き出す。

 やっと登った御月山から転がるように祓川にくだり、またもや大休止。流水をがぶ飲みする。もっと休みたかったが、全身びしょぬれで、寒くてたまらない。やむなく中の岳への最後の急登に向かう。相棒が死んだのはこの区間であった。彼は「腹減った、腹減った」と譫言のようにつぶやき、座り込んでしまった。さっきの休憩でビスケットを1箱食べたばかりなのに… この後は彼を何とかなだめすかして、中の岳避難小屋に登り着いた。時に14時半。とにかくしんどい1日であった。

 10/9 晴れ時々曇り
 4時起床、のはずがまたもや1時間寝坊してしまう。しかし、まだ天候がすっきりと回復していなかったので、小屋で様子を見ることにする。1時間後急速にガスが切れてきたので、勇躍出発。小屋からすぐの中の岳をピストン。

中ノ岳にて、左奥には避難小屋の姿も…

 さすがに越後三山の最高峰、雄大な展望が広がる。

正面の越後駒に向けて出発!!

 いよいよ最終目的地、越後駒への縦走である。途中檜廊下という木の根が敷き詰められた難所もあるが、昨日の拷問ルートに比べれば、物の数ではない。

八海山

 稜線は展望良好。八海の岩峰群も手に取るように分かる。

紅葉の稜線@

 途中の天狗平をはじめ紅葉が美しく、昨日のことを思えば、何とも穏やかなルートである。

紅葉の稜線A

 気持ち良すぎます。

稜線東側の谷

 10月になっても残雪で埋まっているとは… さすが豪雪地帯の越後の山。

中ノ岳を振り返る

 もうだいぶ来ましたね。それにしても御月山(右端)の登りはきつかったっす。

そしてオカメノゾキ

 昨日はあそこを歩いていました。アルプス以外であれほどのヤセ尾根があったんですね。まだまだ知らないことがたくさんあります。

越後駒が目の前に

 天狗平からひとしきり急登をこなすと、もう越後駒は目の前だ。昨日の激闘を思い出しながら、最後のひと登りをこなす。

やっと越後駒に着きました

 三山駆け達成!! ピークの直前で残念ながらガスに包まれてしまったが、そんなことはもうどうでも良かった。無言で握手を交わし、煙草をくゆらす。縦走の歓びがしみじみと湧いてくる。
 後はいつものように下山パワーが爆発と、言いたいところだが、2人とも筋肉痛で踏ん張りが効かず、思いの外苦しい下山となった。それでも百草の池付近の紅葉や小倉尾根のブナ林を楽しみながら、駒ノ湯までのんびりと下ったのでありました。

 駒ノ湯で飲んだビールの味は一生忘れません。失神するかと思うほどでした。越後三山縦走、とてもやりがいのあるコースです。みなさんも一度お試しあれ。

翌日訪れた出雲崎にて(バックは弥彦山)

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