笠ヶ岳・水晶岳・赤牛岳

−素晴らしき展望に恵まれ、北アルプス中央部を快適疾走 3度目の正直で水晶岳の攻略成功!−

   

山行概要

日 程
1996年9月14日(土)〜17日(月)
山 域
北アルプス
メンバー
ゴリ(♂)、私
コースタイム
9/14
神岡鉄道奥飛騨温泉口駅=BUS=新穂高温泉=0:50=笠新道登り口=2:35=杓子平=0:55=稜線=0:50=笠ヶ岳山荘(笠ヶ岳往復20分)【5:30】
9/15
笠ヶ岳山荘=1:05=抜戸岳=0:30=秩父平=0:35=大ノマ岳=0:35=弓折岳=0:55=双六小屋=0:55=双六岳=0:55=三俣蓮華岳=0:25=三俣小屋=0:55=鷲羽岳=0:25=ワリモ岳=0:15=岩苔乗越分岐=0:35=水晶小屋【8:05】
9/16
水晶小屋=0:30=水晶岳最高点=0:05=水晶岳三角点=0:40=温泉沢ノ頭=1:35=赤牛岳=2:35=奥黒部ヒュッテ=1:35=乗船場=平ノ渡=平ノ小屋【7:00】
9/17
平ノ小屋=2:40=ロッヂくろよん=0:25=黒部ダム【3:05】

記録文

 9/14 曇り後晴れ
 それぞれ夜行列車で前夜に出発し、東京の連れとは富山駅で合流。前夜からの雨が降り続く中、高山本線で猪谷駅に進み、ここで神岡鉄道に乗り換える。2006年末には廃業してしまった1両のみのローカル線に揺られ、山旅ムードが高まる。
 終点の奥飛騨温泉口駅で今度はバスに乗り換え、ようやく登山口の新穂高温泉へ。ほとんど車で行くようになった今では考えられないアプローチである。
 我々を乗せたバスが新穂高温泉に到着すると同時に雨が上がった。気分良く午前9時にスタートする。今日は笠ヶ岳山荘までコースタイム約8時間のアルバイト。しかも急登で名高い笠新道の一気登りが待っており、気合いが入る。
ウォーミングアップには最適なゆるやかな車道を小1時間で笠新道の登り口に着く。笠新道の下部は、最近、土砂崩れの被害から付け替えられたばかりで、まだよく踏まれておらず、木の根が邪魔してかなり歩きづらい。その上、噂どおりの急登ということもあり、夜行明けの体には相当こたえる。高度計を頼りに300m〜400m登っては休むを繰り返し、じわじわと進む。
 杓子平で一息つくも、稜線への最後の急登でもうフラフラ。稜線には午後2時にやっと登り着いた。ようやく本格的に天候が回復してきたのか、ガスが切れてきた。ここから杓子平を見下ろすと気持ちの良い草原が広がっているのが見え、もう少し早く回復してくれたらとガッカリするも、後はアップダウンのそれほどない快適な稜線歩きを楽しみながら、笠ヶ岳山荘に3時20分に到着。
 山荘でビールを飲みつつ、天候の回復を待つ。午後4時を回るころにはガスがかなり切れてきたので、勇躍山頂をピストンする。

笠ヶ岳山頂にて

 山頂は見事な雲海の上に浮いていた。真正面の穂高連峰はその全貌は拝めないものの、まとわりついた雲のせいでより迫力を増している。西側は果てしなく雲海が続く。僕らは夕食の時間ぎりぎりまでこの素晴らしい光景を眺めていた。

 9/15 快晴
 3時半起床、4時発。後の予定を考えると今日はできれば水晶小屋まで頑張りたい。ゆえにヘッドランプを付けてのスタートとなった。

黎明の笠ヶ岳

 笠新道の分岐までは昨日歩いているので、迷うことなく快調に進む。抜戸岳からは端正な笠の容姿が一望できる。天気は最高のようだ。テンションが上がる上がる。快調に飛ばす。

秩父平付近にて

 秩父平はカール状の地形が広がる。先は長いがのんびりしてしまう。

弓折岳付近にて

 焼岳、乗鞍岳、御岳の3火山が一列に並ぶ。
 気温、湿度のコンディションも最高で、飛ばしても汗をかかない。人生ベストと言える状態に足は軽い。双六の窪みがすぐ目の前に見えてきた。

双六からの鷲羽岳

 双六小屋には9時着。7年振りの再訪。その頃の思い出と様子が違うのは、夏とは違い、テントの数が少ないからか。
 あまりの気分の良さにビールに手を出してしまう。

槍をバックに

 ほぼ予定通りに進んでいるので、ここは一つ欲張って三俣蓮華まで双六のピークを踏む稜線ルートを進むことにする。
 双六〜三俣間はこれで4回目の通過となるが、ずっと巻き道ばかり使っていたので、このルートは初めてである。双六のグラウンドのような頂上台地はそこにたどり着くまでが一苦労だが、いったん登ってしまえば最高に快適な稜線漫歩が楽しめる。

双六の稜線漫歩

 楽勝、楽勝。

笠ヶ岳

 朝は目の前に見えた笠があんなに遠くに…
 しかし、このルートの展望は凄すぎる。フィルムがどんどん減っていく。

水晶岳

 両脇に赤牛、鷲羽を従えて水晶岳が堂々とした姿を見せる。黒光りして風格十分である。

薬師岳

 薬師岳もボリューム十分。あまりの気持ち良さにこの辺りで昼寝をとる。まだ先は長いが…

 休憩十分で三俣蓮華岳も難なく攻略。ここからの槍は北鎌尾根の迫力が凄い。

黒部五郎岳

 三俣蓮華岳からの黒部五郎。特徴的なカールが真正面。

鷲羽岳

 三俣蓮華からの鷲羽は羽を大きく広げ雄大な姿を見せている。
 いや〜 凄い稜線でした。大満足で三俣山荘へ。またしてもビール注入。ここで昼食をとりながら、今後のコース取りを協議するが、時間もあるし、まだあんまり疲れていないということで、当初の目論見どおり鷲羽越えで水晶小屋を目指すことに決める。

 三俣蓮華からはあれだけ急に見えた鷲羽の登りも、ビールの酔った勢いか難なく攻略、次のスバリ岳も余勢をかって一気に登頂。この辺りブロッケン現象が頻発し、我々を楽しませてくれた。
 岩苔乗越への分岐を分けると、後は水晶小屋までの登りを残すのみ。ここからワリモ乗越の辺りは地塘も現れる庭園風の所。今日最後の休憩をのんびりと楽しむ。

水晶小屋前からの槍

 水晶小屋4時着。小屋はピーク状の台地に建っており、展望は抜群。またもビールを飲みながら今日の歩みを反芻。

水晶小屋前からの鷲羽、ワリモ岳

 この夜 30人が定員の小屋にはどうみても50人近くが宿泊していた。超寝苦しいが、この小屋の立地を考えると文句は言えない。また、水は宿泊者でも分けてもらえないので注意。

 9/16 快晴
 4時起床、4時30分発。いよいよ水晶岳を登る日がやって来た。学生時代2回も登頂に失敗した山だ。ついつい足早になる。ピークまでたいした登りはないが、浮石の多い箇所が多くヘッドランプ歩行では神経を使う。

ついに念願の水晶岳に登頂

 ほぼ日の出と同時にまずは水晶岳の最高点(南峰)に到着。百名山もようやく96登目まできたと思うと感慨深い。目に写る山はそのほとんどが懐かしい思い出にあふれている。しばし時を忘れ、これまでの歩みを反芻する。

水晶岳からの赤牛岳と奥に立山連峰

 三角点は北峰にあり、北側が一気に開ける。
 ここからいよいよ読売新道が始まる。三角点ピークからの急降下を慎重に下り、黒部本流側につけられた縦走路を進む。アップダウンはあまりなく、快適に歩を進める。

水晶岳と槍

 北側から見る水晶も風格十分。登頂の喜びが更に増す瞬間。

赤牛岳が近付く

 一歩ごとに赤牛岳が近付く。いつしか辺りは砂礫のだだっ広い稜線となる。
 しかし、小屋を出発して以降、朝から誰も見当たらない。こんな凄い展望を我々だけで独占していいのでしょうか?

後立山連峰も一望

 ほぼ全ての山に自分の足跡が… 北アの中心部にいる喜びに浸る。

水晶が遠くに

 歩んできたなだらかな稜線が一望。あっと言う間に水晶岳との距離が開く。
 そしていつしかゴミ一つない赤牛岳のピークが目の前に。

薬師岳が真正面

 赤牛岳山頂には9時前に到着。正直言って水晶岳より登頂の喜びが大きかったかもしれない。だってその場所が最高。まさに北アのど真ん中。そうおいそれと来れる所ではないし、さらに山容、展望ともに素晴らしい。
 西向かいには薬師岳が真正面。カメラにとても収まらず、その膨大さに圧倒される思い。

槍、水晶、笠

 微風快晴の山頂は僕らの独占、どっちを向いても山また山。
 笠ヶ岳ははるか彼方で、昨日の朝にはあの辺りにいたのがとても信じられない。

立山連峰

 全方位絶景の赤牛岳頂上の展望だが、私は北側が一番気に入った。立山連峰が何ら遮るものなく指呼の間に望める。
 僕はピーク北側の斜面に寝っころがって、のんびりとこの素晴らしい展望を満喫したのであった。
 約1時間後、単独行の男性が登ってきた。読売新道を登ってきた彼に敬意を表し、山頂の独占を譲ることにして、僕らは下山を開始した。

赤牛岳を振り返る

 奥黒部ヒュッテまで最初の1/3は、森林限界を超える常に立山を眺めながらの快適な下降で、あっと言う間に赤牛岳は頭上に聳えるようになる。

黒部湖が眼下に

 ここが最後の展望ポイント。今日中に黒部湖まで到達しないといけないので、その遠さに口あんぐりである。
 以降は樹林帯で足下の悪い急降下が連続し、難コースとの誉れ高い読売新道がついに牙を剥いてきたといった感じとなる。奥黒部ヒュッテに降り立つ頃には2人とも両ヒザが完全に破壊されていた。

 奥黒部ヒュッテ1時着。小屋前で昼食。ビールが目茶苦茶旨い。後は平ノ渡しまで黒部川沿いを歩くのみ。楽勝、楽勝とリスタートしたが、この道がとんでもないルートで、崖を高まくハシゴが連続するフィールドアスレチックコースであった。先程の急降下で大ダメージを負っている我々には、どうにもシンドすぎる。はっきり言って読売新道の急下降よりはるかにしんどかった。
 コースタイムがかなり甘かったおかげで何とか乗船場にたどり着いたが、もうクタクタだった。乗船場には結局3時半着。最終の5時20分の便が来るまで、爆睡する。
 黒部湖の水位はかなり下がっており、船に乗り移るまで垂直の錆びたハシゴを10mほど下降するという今山行一番怖い場面もあったが、何とか平ノ小屋にたどり着いた。ここまで来れば、もう終わったも同然。小屋の夕食に出たイワナの刺身に感激する。ビールが喉に染みていく…

 9/17 曇り
 5時起床の予定だったが、昨日の疲れか寝過ごしてしまい、6時発。ダムまでのルートも昨日と同様にハシゴのアップダウンが数箇所あるものの、昨日に比べれば大したことはない。連れと今までの山行を振り返りながら、観光客で溢れる黒部ダムに到着したのであった。

黒部ダムに到着

 後はおきまりのように大町温泉郷『薬師の湯』に立ち寄って、今回の充実した、いや、充実しすぎた山行を終えたのであった。

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