岩手山

岩手山


【日 程】平成2年8月27日(月)
【メンバー】単独
【天 気】晴れ時々曇り
【コースタイム】JR雫石駅=BUS=網張温泉=LIFT=リフト終点=0:10=犬倉山=0:30=蛯倉山分岐=1:30=不動平=0:20=岩手山=0:20=不動平=1:25=御神坂駐車場【4:15】

【記録文】
 鳥海山を終えた翌日、連れと別れた私は角館、盛岡市内を観光して過ごす。盛岡から仰ぐ岩手山はその膨大な山体をどっしりと横たえ、いかにも迫力充分である。去年の夏にも私はこの山に登るべく盛岡までやってきたが、その迫力に圧倒され戦意喪失し、他のくみしやすい山へと岩手山を前にして敵前逃亡してしまったのであった。
 それから1年。去年の雪辱を果たすべく雫石駅に降り立ったのは8月27日の6時半。バスに乗り継ぎ網張温泉には8時半着。上空は爽やかに晴れわたっている。『本日天気快晴ナレドモ風ツヨシ』などとつぶやきながらリフトに乗るが、高度を上げるごとに雲が多くなりリフ卜終点に着くころには小雨も降り出す始末で、『今年もダメか?』とぶつぶつ呟きながらも、10分位歩いた犬倉山のピークで先行する女子2人パーティを発見。俄然やる気が湧き、ピッチがグングン上がりだす。 (アホか俺は)
 姥倉山の分岐まではトウヒ、シラビソなどの樹林帯を行く。木の根が邪魔して歩きづらい。分岐で森林限界となるが、展望全く無しで、またまたガックリ。女子パーティも見失い、ショックのあまり黒倉山を踏むつもりだったのだが、いつの間にか巻き道に入ってしまい、気がついた時には黒倉山は違か下方に見えたのであった。しかしながら雨もいつの間にか止んでしまい、ガスも切れかけてきた。気を取り直して、鬼ヶ城の岩稜に向かう。何度も何度も岩場を巻いて行く。そのうえ急登なので、直線距離的にはほとんど進んでいない。バテ始めたころ、突如岩手山の本峰がいきなり姿を現す。思わずドキッとする位その量感は想像を超えていた。全山砂で覆われ、茶色1色の凄絶な姿である。そして視線を下げれば緑の草原が荒涼とした風景の中、場違いのように慎ましげに存在している。それが不動平であった。
 はやる気持ちを押さえながら急な坂道を不動平へと下る。夏も終わりだと言うのに、周りは花、花、花である。青空が急速に広がってきた。夏の日差しが岩手山を照らし始める。草原が風で波打っている。この天上の楽園のような不動平でランチ、そして昼寝という最高の贅沢を味わう。
 1時間程眠ってから、いよいよ岩手本峰に向かう。砂地の滑り易い道は高千穂を思い出す。火口壁の一角に登りつくと、ピークまで石像が等間隔に点々と続いている。一等三角点のピークでは大展望に恵まれる。八幡平秋田駒早池峰姫神など勢揃いである。そしてこれら以上に感激したのは、お鉢巡りの途中で見れる、焼走り熔岩流の奇観である。この景観は実際見たものでなければ理解できないであろう。途中、火口中央の岩手山神社奥宮に参拝をして見所の多いお鉢巡りを終え、さっき登った道を不動平へと下る。
岩手山のピークにて岩手山のピークにて
 不動乎でもう一度岩手山をじっくり眺めてから下山にとりかかる。今回下山ルートにとった御神坂へは、鬼ヶ城の先端まで戻ったところの分岐を南側へ下る。最初はお花畑の中を下っていくが、そのうち岩混じりの急坂になる。私は鳥海山で膝を痛めてしまったので、大変苦しかった。しかも樹林帯に入るまで、ずっと目指す御神坂駐車場が見えているので、まさに地獄の苦しみである。下り始めてから30分位で道のすぐ右側は御神坂沢の崩壊地となっており、慎重に下る。とにかくこのルートは樹林帯に入るまでは全く気が抜けないので、ちょっとでも何かしら不安のある時は入らない方が良いと思う。1時間の我慢でようやく樹林帯に突入する。ここからは今までの急降下が嘘のような、しっとりとした気持ちの良い道になる。最後の一本はブナに見守られながら、ゆっくり、ゆっくりと進む。そして、セミの大合唱に聞き惚れながら歩いていると、唐突に駐車場に出たのであった。
 駐車場から仰ぐ岩手山はまたしてもどっしりと構えていたのであった。

 明日は八幡平に向かおう。


      

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