祖母山〜傾山縦走

−九州一の縦走路を14年振りのリベンジ 恐怖避難小屋やMS隊との交信等いろいろありました−

   
   

山行概要

日 程
2005年5月13日(金)〜15日(日)
山 域
祖母傾山群
メンバー
単独
コースタイム
5/13
神原=0:45=一合目の滝=0:30=五合目小屋=1:05=国観峠=0:25=祖母山九合目小屋(祖母山往復20分)【3:05】
5/14
祖母山九合目小屋=0:15=祖母山=1:05=天狗岩=0:30=障子岳=0:50=古祖母山=0:50=尾平越トンネル分岐=0:15=ブナ広場=0:50=本谷山=0:50=笠松山=0:40=九折越小屋【6:05】
5/15
九折越小屋=1:10=傾山=1:00=三つ坊主(2峰)=0:25=三ツ尾=1:05=九折登山口=0:50=傾山登山口バス停【4:30】

プロローグ

 祖母山に登ったのは、もう14年も前のことになってしまった。計画では傾山までの縦走を考えていたが、3月の凍結した岩場にあえなく撤退したのだ。(これは口実で、あまりの寒さにこれ以上山の上で泊まりたくなくなったのが本当のところだろう)
 6年前の同じく3月には、安直に傾山だけ日帰りで登ろうとレンタカーでのこのことやって来たが、またしても積雪のため、単なる高千穂観光ツアーに成り下がってしまっていた。
 その傾山にやっと挑戦できる機会が巡ってきた。それも再び祖母山からの縦走で、 しかも新緑の5月に! 好天に恵まれることを願いながら、出発当日を迎えた。

記録文

 5/13 快晴
 時間も金もない私にとって、大分への山旅はプランニングが非常に困難である。適当な夜行バスの便がなく、熊本からのスタートになる。(JRの寝台特急「彗星」があるが、寝台料金があほらしくて乗る気がしない。)
 大阪(東梅田)を22時に出発。席は2階建てバスの最前列で、少々怖かったが、あっと言う間に爆睡… 気がつけば水前寺公園まで来ていて、慌てる。
 終点は熊本交通センターだが、そこまで乗ったのでは、大分行きバスへの乗り継ぎがうまく行かないので、手前の熊本県庁前で下車し、10分ほどの待ち合わせで、大分行きの特急バス「やまびこ号」に乗り換える。我ながら上出来だ。
 特急バスとは言え、最寄り駅の豊後竹田へは、2時間半ほどを要する。それでもJRに比べると、時間、料金、便数ともにバスの方が圧倒的に有利なのだ。
 前夜から延べ11時間以上のバスの旅を終え、お尻をさすりながら竹田に降り立ったのが、10時前。

背後の断崖が印象的な豊後竹田駅 9:55

 竹田も14年振り。当時、駅前には何にもなく、テントも張り放題だったのであるが、さすがに今は駅前広場が立派に整備されている。
 さらに貧乏単独行者の悲哀を味わう。祖母山の登山口である神原(こうばる)への路線バスは12時25分のみ。当然こうなることは想定内であるので、駅でレンタサイクルを借りる。
 前回も訪れた岡城址に一直線。おぼろげながら道も覚えていた。しかも借りた自転車がなんと電動アシスト付!だったので、10分もかからず到着。

岡城址 10:22

 新緑が眩く、3月に来た前回と比べ、「荒城」の印象はだいぶ薄れたような、そうでないような…
 本丸跡からは、九重や目指す祖母山が一望! この雄大さは関西ではなかなか味わえない。続いて広瀬神社へ。

広瀬神社 10:54

 ♪杉野はいずこ、杉野はいずや♪ 「軍神」広瀬中佐は私のヒーロー。前回訪れたときは思わず涙ぐんだ位です。

広瀬神社から見下ろす竹田の町並み

 こじんまりとしたほんとに良い町です。隠れキリシタンの洞窟礼拝堂を経由し、武家屋敷跡へ。

武家屋敷跡 11:01

 滝廉太郎の記念館を過ぎ、山手へ登る。

愛染堂 11:11

 恋愛成就の御堂らしいです。興味のある方は…
 残り時間もなくなってきたので、本町のスーパーで買い物。今回は保冷パック持参なので、ビール2本にバンバンジー、菜の花の和え物に保冷氷を購入。どんどん荷物を増やしていますが、冷えたビールは譲れません。(きっぱり!)

 駅前のカレー屋さんで腹ごしらえ。ここのお母さんになぜか営業トーク炸裂で、おかげで生中1杯とモロキューをゲット!! これから山登るのに大丈夫か…
 神原までのバス内はやはり爆睡…

神原バス停 13:02

 長閑過ぎます。祖母山へは、一つ手前の「上井出ノ上」というバス停で降りたほうが良いのだが、寝過ごしました…

まずは車道歩き 13:13

 一合目までは車道歩き。いつもならヤル気を削がれるところだが、周囲の新緑が瑞々しいのとカラッとした空気のおかげで、快調に進む。
 高千穂に抜ける宇目小国林道を分けると、細いダート道になり、ほどなく登山道入口となる。

ヒロシ専用高機動型ザク(ザック) 13:45

 今回、ヒロシ軍に正式採用されたグレゴリーのGパック(Sサイズ、43リットル)。前から欲しくて欲しくて仕方なかったんです。センターとサイドのメッシュポケットが素敵ざます。そのウェイトは1キロちょっとと、旧型ザックの1/3しかありません。故に、このザックを装備すれば、通常の3倍のスピードで行動できるのである(な訳ないね…)。

一合目の滝 13:47

 山道を歩むとすぐに滝が現れる。爽やかな滝と新緑のセットがもうたまりません。
 いったん、車道を横切る。トイレと駐車場があり、マイカーならここまで進入可能。ここから本格的な登山道へ。

新緑シャワー 14:08

 やはり九州の山です。関西の山とは自然度が違います。目がチカチカしておかしくなりそう。
 夜行明けなのに、体も好調、快調に登っていきます。

新緑に埋まる五合目小屋 14:18

 あっと言う間に五合目ですが、これから長い急登が始まるので、感覚的には三合目くらいと思っておかないと、後でバテます。
 本格化した急登を黙々と登る。途中、2組の高齢者パーティとすれ違うが、今日、他のパーティはこれだけだった。いくら平日とはいえ、百名山なのに静かです。

国観峠 15:28

 祖母山をロックオン! ここは遭難救助用のヘリポートとなっており、グラウンドのように広い。
 ここまで来たら、後は楽勝。しばらくゆるやかに登ると、山頂直登と小屋経由のルートが分かれるので、小屋へ向かう。ゆるやかなトラヴァースルートが続く。

祖母山九合目小屋 16:01

 新しい。先代の小屋はボロボロだったので、見違えるようです。
 小屋の中は、無人だったが、大音響でラジオが流れている。不審に思っていると、ブッシュの中から小屋番さんが登場。宿泊料2千円を支払う。
 この小屋番さんが作成しているHP「祖母傾最新情報」は祖母傾の登山者必見です。私はこのHPを印刷して携行しました。

シャクナゲ

 小屋前のシャクナゲが満開でした。
 山頂には明日も当然行くんですが、天気が最高なので、向かうことに。潅木の中を息せき切って登る。

快晴の祖母山頂上 16:23

 こんな素晴らしいところを独り占めしていいんでしょうか。

古祖母山(左)と障子岳

 14年前は指をくわえて眺めるしかなかった山々に、どうやら明日はたどり着けそうです。

 小屋に戻り、小屋番さんとしゃべりながら、ビール、ワインをハイピッチで空けていく。明日は早いし、夜行明けということもあって、早く寝ようと思ったのだが、小屋番さんの解説付きCD鑑賞会が始まってしまった。レッドツェッペリン、ピンクフロイド、マーラー?、そしてなぜかglobe、B'zに最後は朋ちゃん!? ♪輝く白い恋の始まりは〜♪って、山中で50代の小屋番さんと二人で朋ちゃんを聞く私っていったい…
 結局寝たのは22時半でした。でもおもしろかったです。

 5/14 曇り時々晴れ
 5時半起床。もう少し早く起きるつもりだったのですが、やっぱ無理でした。
 昨夜飲み過ぎたので、ゼリーだけとって出発。

祖母山頂と傾山 6:08

 傾山ははるか彼方。あそこまで届くかな。どんよりとした天気だが、雨が降り出すことはなさそうだ。
 さあ、縦走開始。いきなり急傾斜のガレ場を下る。

ハシゴが連続 6:20

 東側はずっと崖になっているので、割と激しいルートになっていますが、慎重に行けば問題ないです。

岩峰を巻いていく 6:24

 見た目も激しい。この岩峰は大きく東側を巻きました。

シャクナゲ園開園中 6:35

 看板に惹かれ、寄り道。

シャクナゲと祖母山 6:35

 満開ではなかったですが、それなりに…

ウラ谷第二岩鼻からの展望 6:45

 この縦走路、絶壁の続く東側に展望台が何箇所もあり、その都度寄り道してしまうので、なかなか行程がはかどらない。

ウラ谷第?岩鼻からの展望@ 6:54

 吸い込まれそうな絶景が連続します。

障子岩尾根方面を望む

 大障子岩が目立ってます。ほんとは、この尾根も縦走して完全縦走したかった〜

ウラ谷第?岩鼻からの展望A 6:55

 シャクナゲ、ツツジ、岩壁のミックスが最高です。ホンマに全然先に進めません。

天狗岩 6:59

 岩頭へはナイフリッジを辿って行けます。

スズコヤ岩塔 7:00

 稜線西側は、なだらかな草原に岩頭が点在。東側と対照的な景色は、屋久島の稜線を思わせます。一番目立つスズコヤ岩塔を思わず撮影。

天狗岩のナイフリッジ 7:17

 天狗岩へは縦走路から3分ほどの寄り道。ナイフリッジは距離は短いので大したことないです。ここを通過すれば岩頭へ。

天狗岩からの祖母山

 やっぱりかっこいいです。アケボノツツジのアクセントも素晴らしい。

天狗岩を振り返る 7:27

 反対側から見ると、だいぶ印象が変わります。お猿さんそっくり。

ミヤマ公園からの祖母山 7:30

 だいぶ離れてきました。しかし、この辺りからガスが急速に上昇…

障子岳 7:55

 山頂は縦走路から親父岳方面に少し入ったところ。
 ついにガスに捕捉され、展望0…

第二展望台からの祖母山、天狗岩 8:08

 古祖母山への縦走路中、「障子岳展望台群」が第一から第七まで次々と現れる。(詳細は、「祖母傾最新情報」を参考にしてください)
 ほとんどガスの中だったが、第二展望台の時だけ、ガスが一瞬晴れてくれました。
 第一展望台を過ぎると、ブナ林にバイケイソウの下生えが生える気持ちの良いプロムナードが続く。

古祖母山 8:45

 完全にガスの中に… まあ、展望はもう十分に満足したし、仕方ないです。
 とっとと先へ。

古祖母山近くの岩場 8:54

 下り始めていきなりほぼ垂直の岩溝をハシゴで下降。このハシゴはけっこう新しく、横に古い固定ロープが垂れ下がっていた。ロープしかなかったら、けっこう怖かったかも。

縦走路のブナ林 9:07

 ここから長いです。特にイベントスポットもなく、ひたすら緑緑の尾根道を東進。周囲の新緑は相変わらず素晴らし過ぎるのですが、これだけ続くとさすがに食傷気味… こういう時、単独行は厳しいです。考え事をしながら歩くようにするが、悟りが開けそうです。

祖母山はガスの中… 9:17

 ヒマなので、祖母山目指して作戦中のMS隊に何度か交信を試みるが、不通…
 しんご殿のケータイのボーダフォンは山中ではほとんど圏外らしい。
 このとき私はMS隊によって犬にされていた…(詳細はクリック!)

尾平越トンネルへの分岐 9:38

 高齢者ハイカーのグループが多数登ってきた。ここから九折越までミニ縦走するようです。人恋しいせいか(って言うか、「学生さんですか?」と聞かれたことにお世辞だと思いながらもけっこう嬉しかったせい)、ここでも営業トークで奉仕活動。
 さらに東へ。ゆるやかな登り降りを繰り返す。

ブナ広場 10:01

 気持ちの良いところですが、「縦走路中間点」という看板にガックリ。もうちょっとは進んでいる気がしたんですが…
 モチベーション低下を補うため、ここで昼食にすることに。

ラーメン調理中 10:18

 食事中に例の高齢者グループが通過して行った。
 それにしても、このブナ広場、水場もすぐ近くにあるし、テント場にも良いのでは。
 さあ、再び瞑想ルートへ。これまでと同様、ブナ、ミズナラの原生林にスズタケが生える縦走路を黙々と進む。正直曇り空で涼しくてよかった。気温が上がってたらこんなに快調に進んでこれなかったと思います。

西国三ツ葉ツツジ 11:39

 花の名は、祖母山九合目小屋の管理人、加藤さんに教えてもらいました。  本谷山近くはツツジの回廊だった。気を良くした私は一気にペースを上げ、高齢者パーティをオーバーテイク。(このパーティ、足が揃っていてなかなか抜くのに苦労しました。侮れない)

本谷山 11:53

 スズタケが密生してます。だいぶ空が明るくなってきたんですが、やはり展望なし。精神力が要求されるルートです。

細かすぎる標識 12:07

 誰のペースで計測したのでしょうか? ちなみに私は笠松山まで38分で到達しました。

大障子岳を望む 12:07

 少しの寄り道で久しぶりの眺望が楽しめるトクビ展望台から。いつの間にか大障子岳が対面にきていて、やはり相当進んできたことを改めて確認。

 笠松山ピークへは縦走路から少々寄り道が必要。けっこう急な登りを経てたどり着くが、ここも展望は皆無… 問題はこの先である。ピークからそのまま踏跡が続いているが、絶対に進まないこと。進んだ私は、急降下の果て、岩場で進退窮まるという失態を演じてしまいました。泣きながら崖のような斜面を笠松山のピークまで登り直し、縦走路へ復帰。(後で地元の山岳会の人に聞いたら、かなりの人が間違って遭難騒ぎも何回も起こっているとのこと。気をつけましょう)

ついに傾山が登場 13:16

 前笠松東岩展望台から。ここも縦走路からすぐに寄り道できます。やっとここまで来ました。
 笠松山さえ越えてしまえば、後は九折越まで下るだけ。悠然と下る。

九折越小屋 13:49

 気持ちの良いナラ林を抜けたところに小屋を発見。着きました〜 今日のお宿です。
 中もきれいに清掃されていました。

傾山 13:51

 小屋前の広場から。「激しい」山容です。14年間ずっと機会あればと思っていた山がすぐ目の前に。感慨がじわーと広がります。
 ここの水場は往復20分ほどかかるので、とりあえずは水汲みに出発。宮崎県側の黒仁田から登ってくるルートの途中に水場はあるが、ルートは完璧に整備されており、登山者も多い。駐車場から40分ほどで九折越まで上がることができるので、傾山へはこちらがメインルートのようだ。

 小屋に戻り、地元の山岳会のパーティが休憩してたので、しばし談笑。明日たどる予定の傾山三ツ坊主ルートを尋ねたところ、「補助ロープは持ってきた?」、「会の人間で100m滑落した者がいる」などのビビり発言連発。そこまで言ったくせに、「でもまあ、君だったら大丈夫だ。傾山は三ツ坊主をやらないと登った意味がないので、必ず行きなさい」と、根拠の全く無いあおり発言でダメ押し。急激に弱気になっていく私である。
 そして気になることがもう一つ。今晩の同宿者である。高度に加えてお化け恐怖症の私が山中の避難小屋に一人で宿泊など耐えられるはずが無い。小屋前で休憩していく人は多数いたが、みな荷物は小さい。夕方が近づくにつれ、一人減り、二人減りとついに17時には、私一人になってしまった。(T.T)
 こ〜いう事態を招かないように、コースも当初の予定から逆にしたのだ(金曜の晩は管理人のいる祖母山に泊まり、土曜の晩ならいくらなんでも誰か一人は泊まるだろうとの読みだった)。宿泊者ノートを読んでみると昨日の晩には宿泊者あり… 完全に目論見は裏目に…

散らかし放題 17:36

 夕暮れが近づく。こうなればとっとと酔っぱらって寝るしかない。大急ぎでメシを作り、ビール、ワインを一気飲み。酔った勢いでMS隊に交信を図ると、幸運にも熊本で作戦中のしんご隊員につながり、初めてお話をすることができた。それは良かった。が、まさこ様にも代わってもらい、お話できたまでは良かったが、「今晩はきっと(何か)出ますよ」との嬉しすぎるお言葉。頼むからビビらせないでください!!

 どうなることかと思ったが、疲れと一気飲みのせいか、奇跡的に寝ることができたようだ。やったー
 惨劇の始まりは午前0時過ぎ。気持ちよく寝ていたのに異音で起こされる。ピシッ、ピシッというラップ音が小屋内に響き渡る。思わず「きたー」と声を上げてしまう。恐怖でシュラフから出ることができないまま、頭の中でトワイライトゾーンのテーマ曲が鳴り響く。
 少し冷静になってみると、どうもラップ音は私の散らかした荷物、それも明日の朝に食べるつもりだった残りのアルファ米のところからしているようだ。もしやと思い、ヘッドランプを照射してみると、小さな灰色の物体がこちらに突進してきて、私の腹の上を通過していった。それはネズミだった… 私は高所もお化けも嫌いだが、虫や動物も大嫌いだ!!(よくそんなことで山登りなんかやってますねといつも言われます) 「ギャー!!!」 小屋に響き渡る大絶叫。とんでもないオチだったが、こうなるともう眠れない。恐る恐る窓の外を見てみると、今度は暗闇に怪しく光る2つの光源を発見。またしてもテーマ曲が… よく見ると鹿の目でした。あんなに光るもんなんですね。それにしても人騒がせな。おかげで以降まんじりともせず、起床予定の3時半を迎えることに…

 5/15 晴れ
 3時半起床、って言うか、ずっと起きてました(笑)
 何でこんなに早く起きる必要があったかというと、この日は岩稜歩きでコースタイム6時間強。帰りのバスは1日に3本しかなく、傾山登山口10時42分発のバスに乗らないと、熊本発の夜行バスに乗るのが厳しくなるからである。(MS隊に合流できる可能性もあった)
 昨日ねずみがかじったであろうアルファ米を雑炊にして食べる。熱を通したので大丈夫とは思うが、非常に不本意。
 4時過ぎに出発。やっとこの「恐怖の」小屋ともおさらば。星空の下、ヘッドラン歩行開始。
 すると、さらにオチが。小屋から僅かに下った九折越のヘリポートに何とテントが2張… 近くに人がいるなら、こんなアホみたいにビビることもなかった… あー最悪。

後傾(右)と本傾の岩峰 4:44

 気を取り直して傾山へ向かう。ルートはしっかりしており、ヘドランなしでも動けるくらい。センゲンと呼ばれる草原からは、傾山を完全にロックオン! 憧れの峰へはもうすぐです。
 はるか大崩山につながる杉ヶ越への分岐を過ぎると、岩場の登りが始まるが、見た目ほどのことはなく、ガンガン高度を上げる。

後傾から本傾と九折川を見下ろす 5:15

 後傾のピークからは黎明の本傾の大岩壁が。後傾と本傾の間も見た目は深く切れ込んでいたが、大したアップダウンなく本傾ピークへ肉薄。

本傾でちょうど日の出が 5:23

 色んな意味で明るくなるのを待ってました(笑)
 それはともかく、やっと念願の傾山登頂!! よくぞ祖母山からやって来ました。安易な日帰りピストンでは、ここまでの達成感は味わえないでしょうね。

坊主尾根を見下ろす

 次なる恐怖は、この尾根歩き。見た目はやはり激しそうです。

後傾の絶壁

 しかしこの山の西面はどこを見ても絶壁ばかり。大崩山もこんな感じでしたけど、スケール感はこちらの方が上か。
 先は長いので、早々にピークを後に。しばらくはびっくりするくらい穏やかな下りが続く。尾根の巻き道となる水場コースを右に分けると、ついに岩峰ルートの開幕。

最初の岩場を下る 5:51

 写真では分かりませんが、分岐からすぐに15mの岩場の下降となる。いきなりだったので、多少は心拍数上がるも、3点確保さえ守れば、何のことはなく、スムーズに着陸。
 なおも急な下りを立木頼りに下る。木が繁っているので見た目は大したこと無いですが、常に西側は200m以上切り立った岩壁の上を通過しているので気は抜けません。
 一気の登り返しで二つ坊主のいわゆる3峰に到達。いやはや凄い景色です。

二つ坊主の岩稜を行く 6:15

 ルートはずっとこんな感じのところを行きます。まあしかし、岩の技術と言うよりは、とにかくアップダウンが激しいので、体力が要求されるルートだと思います。

吸い込まれそうな景色が続く

 二つ坊主の1峰の下りには顕著なチムニー状の6m岩場の下りが登場。しかし、去年ジャンの洗礼を受けた私には物の数ではなく、前向きのまま下降。
 お次は三つ坊主の岩峰群。ここもアップダウンが激しい。3峰の脇を過ぎ、2峰へは一気の突き上げ。さすがに多少は疲れてきた。

二つ坊主を振り返る 6:38

 三つ坊主の2峰からの展望。ここは道標あり、絶頂へはザックを置いてピストンしました。背筋がゾクゾクする景色が広がっています。いったいどこをどのようにして辿って来たのか。その気になればいつでも死ねます。
 1峰は東側を巻き、一気に下っていくと道標が。水場コースとの合流点です。「えっ、嘘!」って思わず叫んでしまったくらい、岩場ルートはあっけなく終わってしまいました。昨日の地元の人の話は何だったのか。タイムは1時間以上も縮んでいた。
 ここからは新緑の中をゆったりと下るが、緊張感が切れたせいか、疲労感が一気に襲ってきた。

三ツ尾の分岐 7:05

 大白谷へ下るルートが分岐する。ここから九折川目指して一気の下りが始まる。等高線を串刺しにするコース取りなので、膝が壊れないように慎重に駆け下る。(矛盾した行動)
 いったん林道を横切り、なおも急降下を続ける。しかし、ここ1年余りのジム通いで膝の不安は完全に一掃された。学生の頃より足が強くなったような気がする。(自画自賛)
 沢の音が急に大きくなると、気持ちの良い渓流に着陸。

そこは観音滝の落ち口 7:55

 この先は、垂直落下75m。何でもないところですが、そう考えると急に怖くなってきて、ギクシャクした動きで沢を渡渉。

観音滝 8:01

 断崖沿いの巻き道から。あまり覗き込むと滑落しそうです。
 巻き道をゆるやかに北方向に下っていくと、ようやく九折川に着陸。

九折川を渡る 8:11

 ここからは排水溝沿いに下る。途中、九折越に登るコースを分ける。

九折の登山口 8:20

 いいですね車で来れて。私はこれからアスファルト道をバス停まで約4キロ歩かねばなりません…
 ケータイのメールを何通か作成したりしながら、何とか気を紛らわせて進むが、最後の最後、奥岳川を渡ったところから、バス停までは非情の登り。辛かった〜

傾の岩峰群を振り返る 8:59

 登りの途中から。あんなややこしそうなところを歩いていたとは。感無量です。

上畑の健男社 9:33

 やっと、傾山登山口バス停のある上畑の集落に到着。でも時間は9時過ぎ… 早すぎた。バスまで1時間半以上もあるので、近くの健男社に参拝。これが何百段もある石段で少々後悔。マジに足にきた〜
 バス停に戻り、本を読み始めるが、結局、間が持たずバス停で転寝…

 バスのクラクションで起こされ、慌てて緒方駅行きのバスに乗車。危ないところだった。運転手さんはめっちゃ綺麗な女性で、一気に目が覚める私(笑)
 私のほかに乗客は誰もいないバスの最前列に陣取り、トーク全開!!。でも結局お姉さんの愚痴り大会になってしまった。お姉さんいわく、「最近はマイカー登山が増えて、狭い車道を下手クソな運転で入ってくるものだから、邪魔で仕方が無い。もっと練習してから山に来い!」 私も練習します…
 トークのかいあって、竹田までバスの乗り継ぎが可能ということを教えてもらい、米山という集落でバス停で乗り継ぎ、12時には竹田駅に帰ってくることができた。
 ところが、ちょうどバスを降りたところでまさこ様から連絡があり、MS隊は九重の山を満喫し、どうも時間の余裕がなさそうとのこと。とりあえず待ち合わせの時間を延ばしてみたりもするが、やはりこっちは公共交通機関頼みであるのでスムーズな移動がしがたく、泣く泣く今回の合流は諦めることに。
 竹田駅前の竹田温泉花水月で入浴&ビールの至福のひとときを過ごし、13時10分発の熊本行きバス(ちょうど温泉前が停留所となっている)に乗車。前夜、ほとんど寝れなかったもんだから、速攻ワープ航行へ。目が覚めたのは、またしても水前寺公園の近くだった。
 熊本交通センターには、ほぼ定刻の15時半に到着。コインロッカーにザックを押し込み、熊本城へ。熊本には5、6回来ているのに、どうしてもタイミングが合わず、これまで訪れることが出来なかったのだが、ついに感動の入城である。

熊本城宇土櫓 15:56

 並みの天守より余裕で大きいです。小西行長築城の宇土城の天守を移築したとの伝説からこう呼ばれているらしいが、どうも違うようです。
 空掘の底から一気にせり上がる清正流の石垣が素晴らしすぎます。

熊本城大天守・小天守 16:07

 典型的な連結式の天守。宇土櫓5階からの撮影。復元であったとしても、いいものはいいです。いよいよ天守閣へ上がる。

大天守からの宇土櫓 16:28

 天守内部は西南戦争などの資料が展示されていた。時間があれば田原坂にも行きたかった〜
 本丸から飯田丸経由で東竹の丸へ。もっと写真を撮りたかったのだが、ちょうど本丸御殿の復元工事中で鉄骨が立ち並んでいたのは、少々残念。平成19年完成予定とのことなので、また来たいです。

平櫓群 16:43

 東竹の丸から見上げる田子櫓、十四間櫓等の平櫓群。石垣の「反り」が芸術的で思わず唸ってしまいます。
 こうした平らな櫓が数多く残っているのも熊本城の特徴です。
 大満足で須戸口門を出て、市街中心部へ向かう。お次は「馬」です。

レバー刺し(左)と赤身 17:06

 「菅乃屋」の上通店に入り、馬のフルコースと焼酎に悶絶!! 特にレバー刺しにイカされました。牛のよりよっぽど旨いです。
 さらに、近くの「山水亭」の熊本ラーメンでシメた後、すっかり酔っ払った私は、何故か銭湯に突入。

その名も「地獄温泉」 19:14

 名前だけで入ったようなもんです。ここで1時間以上も沈没… もうすぐにでも寝たかったのですが、何とか交通センターまでとぼとぼ歩き、21時発のバスにどうにか乗ることが出来ました。
 そして、いつものように乗った瞬間に爆睡… 目が覚めるともうそこは大阪で、JRに乗り換えて京都の自宅には7時過ぎの到着。ささっとスーツに着替えて何食わぬ顔で出勤とあいなりました。
 こんな長い記録誰も最後まで読まないと思いますが、お付き合いいただきありがとうございました。ホンマに最高の山旅でした。(了)

参考タイム

5/13神原バス停 13:0013:45 一合目の滝 13:5014:20 五合目小屋 14:2515:30 国観峠 15:3516:00 祖母山九合目小屋 16:0516:15 祖母山 16:4516:55 祖母山九合目小屋
5/14祖母山九合目小屋 05:5006:05 祖母山 06:1007:15 天狗岩 07:2007:50 障子岳 07:5508:45 古祖母山 08:5009:40 尾平越トンネル分岐 09:4510:00 ブナ広場 10:4011:50 本谷山 11:5512:45 笠松山 13:1013:50 九折越小屋
5/15九折越小屋 04:1505:25 傾山 05:3505:50 水場コース分岐 05:5006:35 三つ坊主(2峰) 06:4006:50 水場コース合流 06:5007:05 三ツ尾 07:1507:50 林道 07:508:20 九折登山口 8:2009:10 傾山登山口バス停

山行データへ

諸国名山探訪

Copyright(C) Hiroshi Fujita All right reserved

inserted by FC2 system